第8話 怒りで……

 放課後に教師に呼び出され、魔法が出来ないことを注意されるかと思っていたら……両親への頑張っているアピールとお世辞やら、先生も両親の派閥だと遠回しに言ってきた。それを子供の私を挟んで言わないでよ……まったく。


 お陰で放課後の、自主練に遅れちゃったよ……こんなのが続くんだったら、両親に本当にそのまま伝えちゃうよ!放課後に呼びだれて、貴重な自主練の邪魔をされてお世辞とか言われてるってパパに文句を言っちゃうよ。


 そんな事を考えながら、待ち合わせの場所に向かっていると……。はぁ、お嬢様の怒って文句を言っている声が聞こえてきた。あのお嬢様は、また権力を使ってイジメてるの……?


 誰に怒ってるんだろ?1階にある倉庫の中から聞こえてきたので少し扉を空けて覗いてみると、ルリちゃんと、最近、一緒に放課後の魔法の練習に……じゃないか、リコちゃんに着いてきている2人と、お嬢様のお付きの5人が2人を囲んでいた。


 話の内容は……分からないけど、ルリちゃんが口答えをして気に入らなかったらしく、ルリちゃんとシャルちゃんの顔を引っ叩くのが見えた。はぁっ!?……何してるの?私の大切な子達を……


 怒りが込み上げてきて、倉庫内に入った。


「……何してるの?ねぇ……?」

「……そ、それは……貴族社会の常識を教えているのですわ!」


 シャルちゃんが逃げようとすると、お嬢様のお付きの友達が捕まえて引っ叩こうと手を振り上げた瞬間に、無意識に手を翳し……魔法を放った。


 ドッカーーーン!!


 倉庫の壁が吹き飛んだ。


「おいでー」


 2人に向けて両手をを広げると、シャルちゃんも目を潤ませて抱き着いてきた。しばらく2人を抱きしめて安心させると、お嬢様とお付きは恐怖か驚いたのか腰を抜かしてその場で座り込んでいた。


「次……こんな事をしたら当てるわよ?」

「え?魔法が使えなくなったんじゃ……」


 そんな事は知らない……何この力……自分でも驚いてるし……使えないんじゃなかったの?魔力があったみたいね!あはは……ビックリだよ。


 また魔法が出せるのかな?魔力切れとか?感覚を忘れないために手を天井に向けて同じ様に魔力の球のイメージをすると手のひらの上に魔力の球が現れた。


「そんな……目に見えるほどの魔力の塊!?それに、なんですの……その体の回りから……魔力が溢れ出しているのが見えますけれど……可視化できるほどの魔力ですの……?」


 お嬢様が座り込んだまま距離を取り離れていく。


「ちょっと待ちなさいよ……約束をしてくれないかしら?お嬢様?」

「は、はい……約束致しますわ……ですから……魔力を抑えて頂けませんか……ミサ……様……」

「ん……ミサちゃんで良いよ。で、名前はなんて言うのよ?まだ聞いていないんですけど……?」

「り、リサーナですわ……リサとお呼び下さい」


 まー仲良くはなれないと思うけど……これで絡んで来なくなるよね?あっ!ヤバい……学校の壁を壊しちゃったよ!大問題になるんじゃ……あぁ……どうしよ……


「ねぇ……ルリちゃん……壁を壊しちゃったよ」

「え?あ、はい……そ、そうですね……」

「……私に任せて下さい」


 リサが立ち上がり、自信満々で話しかけてきた。すごい……切り替えだね……この人。騒ぎを聞きつけた教師がなだれ込んできた。


「何があったんだ!?」


 怒っていると言うより驚いた表情をして聞いてきた。


「ミサ様の魔法の練習を隠れてしていて……体調が元に戻られたみたいですわ」

「そ、そうか……魔力結界を張っている壁を破壊できる程の魔力か……」


 驚きと恐れた表情をして教師たちが私を見てくるので、気不味くて目を逸らした。そんなの……知らないし……


 ん……その言い訳……自分がイジメをしていたのを誤魔化してるだけじゃん!何が私に任せて下さいだよ。ただの保身じゃんよーリサのバカ!


「魔力が元に戻って良かったが……練習をするなら……次からは外の校庭でして下さいね……」


 あら?教師たちが少し敬語になってるのは気のせい?


「はーい。お騒がせしました。……それで弁償ですかね?」

「えっと……?弁償ですか?いえ……魔法で修復が出来ますので問題ありませんよ?」


 え?そうなんだ……?知らないし。ルリちゃんも教えてよねーもぉ!


 それからは皆の態度が一転して、声を掛けられてお世辞やら、ご機嫌取りをしてきた。これじゃ会社の重役さんじゃない?気分は良いけど……どうせ陰で悪口を言ってるの知ってるよーだっ。私も、上司やお偉いさんの悪口を陰で言ってたしー


「それじゃ……校庭に移動をして、魔法の練習の続きをしますね」

「あ、はい……威力は抑えて下さいね……」

「えっと……威力の調整が出来ないので……その練習もしないとですね……」

「それなら……屋内の練習場でお願いします。おい、鍵を持って来い」

「はい」


 偉そうな先生が若手の先生に指示を出して、鍵を取りに言ってくれた。


「えっと……その鍵は職員室に行けば貸してもらえる?」

「はい。勿論です」

「放課後に毎日、使う予定なのでお願いします!」

「は、はい」

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