第17話 僕の戦いを見たモブの反応
すごいものを見た……………
最初はいくらガノン相手だと言ってもグランとイオーレがいれば負けるはずがないと思っていた。
実際に途中までは確実に押していたし、まだ余裕はあったみたいだが、フリード様の応援のせいで大きすぎる隙が生まれ、一瞬で気絶されてしまった。
あの威力の攻撃をまともに受けてしまったら、相当の実力がないと死んでしまってもおかしくなかった。
実際俺が受けていたら死んでしまっていたと思う。
だから逃げようとしていたガノンを追いかけるのは正直嫌だった。
俺たち『成長の守り人』は『少年の心』の観察者を逃すわけにはいかない。
奴らは青田買いをしようとしているのだ。
将来、奇麗な女性になりそうな人、胸の大きな女性になりそうな人、性格がいい人、家事など身の回りのことを高水準で出来る人を探して、唾を付けるためだ。
そして丁度成長期が終わりそうになったころに人知れず攫いに来る。
攫われた子はいい待遇を受けているらしいのだが、それがどうした。
ちゃんとした待遇だったとしても俺たちが小さなころから少しずつ信頼を集めて大切に育ててきた子を攫う到底許されることはない。
だからたとえ嫌だとしても俺はガノンを追いかけて倒さなければならなかった。
しかしまだ俺はエルメ『固位』に至っていない。
ガノンは帝国学園初級でも強いことで有名な男だ。
当然エルメ『固位』に至っている。
大分削れているとしても俺が勝てる様な相手ではない。
だからフリード様が戦いに行ったときは位の高い家でちやほやされて自信をつけたボンボンが相手の実力を考えずただ挑んでいっただけかと思った。
さっきだって危険な時はビカリア様がすぐに駆け付けてくれているのだから。
加勢に行こうとは思ったがお互い戦い方の分からないもの同士ろくな結果にならないことは目に見えており、行こうとは思はなかった。
すぐに戦いは始まり最初は威勢の良かったフリード様はたったの一撃で大人しくなった。
いつでも助けることのできる準備を整え、今回は押されている状況だ。
あまり気を逸らさせないようにするために傍で不安そうに戦況を見守っている女の子たちには声を出さないように言い聞かせておいた。
そしてすぐにガノンの猛攻は始まった。
リーチの長い矛に、あの肉体から繰り出される一撃はまだ成長しきってもいないフリード様には酷なものだっただろう。
それでも技を利かせ、耐えしのぐ。
傍目から見てもただの力推しではあったのだが、力とは破壊力だ。
限られた範囲で満足に動けない庭では受け流すことしかできなかっただろう。
フリード様はそのすべての攻撃を奇麗に受け流した。
しかし少しずつガノンの攻撃はただの力推しではなくなってきた。
それからどういうことかガノンは攻撃をやめ、フリード様の攻撃を受けようとしているみたいだったが、フリード様はこの誘いに乗り、大技を繰り出した。
だがそれは実戦のために作られた技だとはとても思えないほど攻撃する場所が見え見えで俺でも簡単に避けられそうだった。
そこからは驚きの連続だった。
フリード様はエルメ『固位』を発現させていたのだ。
俺よりも年下なのにありえないと思った。
それにその能力は強力無比であれだけ押されていたガノンを相手に互角に戦った。
そしてなりよりかっこいい!
もしかするとフリード様は『成長の守り人』の中でも本当にトップを張るに足る実力ではないかと思った。
そこから一進一退でどちらも俺だとさっさと負けを認めてしまいそうな重傷を負っていた。
特にフリード様傷を受けていたらもうこの世にはいなかっただろう。
それほどまでに重症な体でなお戦う意思を見せていた。
俺は年下とは守る存在、男の子でもそれは変わらないものだと思っていたが、その常識が崩れてしまった。
でもせめて支えてやるくらいのことはしてあげたいと思う。
ガノンはザバンにのみ見せたことのある超攻撃型に体を変化させ、攻撃するようだ。
おそらくフリード様が勝つだろう。
この時はもうどうしてか勝負は見えていた気がする。
そして戦いは終わった。
もちろんフリード様の勝利だ。
だが最後の技の衝撃で土は捲り上がり、施設は壁が一枚のうちの半分がなくなった。
その余波で女の子たちは泣き出し、勝ったフリード様も力尽きたのか倒れてしまった。
女の子たちの対応をするか、フリード様の怪我の応急処置をするか迷っていると突然防風に襲われる。
どうしたものかと思うと、ビカリア様がフリード様を抱えて泣いていた。
「フリード様!フリード様!見ましたよ。先ほどの雄姿!私は感動いたしました。これほどになるまで……戦いの原因はよくわかりませんが立派でした」
そしてすぐ懐から回復薬を取り出し、傷口にかけ、少し余ったものはすぐ近くに倒れているガノンにかける。
その回復スピードは目覚ましいもので、僕やガノンのような下級貴族にはあまり拝めないようなもので、水蒸気を上げながら見る間に傷口を塞いでいく。
そのままフリード様を抱えてどこか、おそらく寮に行ってしまった。
俺はもう一人、呆然と成り行きを見てたよく行動を共にする仲間と目を合わせてこれからこの子たちをどうしようか悩んでいた。
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