5.殺生と自死

殺生と自死が共に手を取り合うことはなかった

それが証拠に 殺生は殺し 自死は死に・・・ とそもそも目的が違った 

だからこそ 双方目を合わすこともなければ 足並みを揃えることもしなかった

けれども 世界に君臨する死と 街に蔓延る死が 同一のものであると発表されたあの場にいたのは 間違いなく殺生と自死であった

手を取り合うとまでは行かずとも 双肩に担った役目の比重は同じであった筈だ

殺生として殺すこと 自死として死ぬこと―― それこそが両者に課せられた使命だった


いつの頃からか 時代は趨勢として 人が人を殺すことを目溢しするようになった

目溢しされた殺生は さらに千里万里と駆けるため その手を汚し回った

行き着く先など知れていたが 己が使命を果たさんと 怨念を纏ってでも殺し回った


理由など皆無であった ――事象は虚勢であったとしても 自らを手に掛けることを禁じてしまったのである

自死は為す術もなく差し俯いた ――果たせぬ使命を持て余すことが 自死にはよほど応えたようである

身を粉にして死んできたのに・・・ と自死が悔しがっても無理はなかった


そんな両者が出会ったのは 殺生が大半を殺し回り 自死がついには溶けようとしていた時であった 

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