「詩集 永劫」(令和1年~)

舞原 帝

4.(無題)

誰のことも好きにはならないだろうと思って生きてきたのに

あなたのことだけは好きになった

それはどうしてかどんなに考えても分からなかったけれど

あなたのことだけを考えていればいいような気がして

それはどうしてかなどどうでもいいことなのではないかと僕は考え

誰かを好きになるということはそういうことだったのかと

ようやく分かった頃には闇夜の中にいて

そこはまるで色彩としての黒を基調にした場所で――


誰も僕のことなど好きにはならないだろうと思って生きてきたから

あなたにだけは好かれたいと思うようになるまでにそう時間は掛からなかった

その「時間」を容易く踏み越して

刹那のうちに世界を創り上げてしまった創造主の肩の上にも死の手は置かれていて

それを目の当たりにしてしまった僕が泣き崩れるのも時間の問題で

その時の涙が人である証になろうとはだれの一人も考えておらず

又鵜呑みに出来るはずもなかったことの一つとして

僕という一個の死というものが確かにあって――


僕が好きなのはあなた一人で

あなた以外の人のことなど見るには値せず

とは言えまだ見ぬあなたの姿かたちを

最期の最後まで見続けていられるだろうかと俄かに案じた僕は

黒を基調としたその場所から新たな死へと一歩を踏み出した――・・・

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