第5話 贈り物と笑顔

(今、私笑ったよね?)


もう一度笑顔をつくってみる。

に、にこ…?


(……。)


…出来ない。


(……あの時…なんで…)


でも、もう確かめることはできない。

少し残念感があったが、そんなのはどっかにいってしまった。

大切なことを思い出したから。


(あ!優さんに渡す贈り物!)


散歩をしてもアイディアが浮かばなかったので、帰ろうと思った。

くるっと右回りをして通った道を歩く。

歩いているとキラっと光るものを見つけた。

なんだろうとしゃがんで顔を近づけてみた。

…そこにあったのは、雨の水滴がついた、小さな花だった。


(綺麗…)


ハッと思いついた。


(優さんに渡す贈り物にいいかも…)


バッと立ち上がり、走って家に帰った。

ハァハァと息を切らしながら自分の部屋に入ると花言葉を調べた。


(…見つけた。)


渡したい花は決めた。

でもどうやって渡そう。

花束で渡すのは恥ずかしい…。


(何かないかな?)


必死に優さんを思い出す。

すると、優さんが身につけていたものを思い出した。

───ヘアピン。


(これにしようかな…。)


首をふった。


(ううん。これがいい!)


早速作ろうと思った。

ヘアピンを作るための道具は小さいころ使っていたものがある。

でも花がない。

どこかにないかな?


(…。あ、花屋さん。)


そこに行けばあるかもと思い、家を出て近所の花屋さんにいった。


「すみませーん。」

「はーい!」


と元気なおばあちゃんがいた。


「あの…この花ってないですか?」


スマホの画像を見せて言った。


「あぁ、この花ね。今、旬じゃないからないかも。」

「え…」

「ちょいとお待ち。」


おばあちゃんは花を探しに奥の方へといってしまった。


(なかったら…、他の花にしよう。)


残念だが、諦めるしかない。


「お嬢ちゃん。」

「はい!」

「誰に渡すのかい?」

「あ…えっと…女の子です。」

「女の子に何を伝えたいのかい?」

「…ありがとうって…伝えたいです。…あと───と私が───て伝えたいです。」


するとおばあちゃんは、フフフと笑った。


「はい。これ。」

「…え」

「最後の1個だったよ。」

「あ、ありがとうございます!」


ペコとお辞儀をした。


「いいんだよ。そんなに伝えたいことがあって、花を選んでくれただけで、おばあちゃん嬉しいんだよ。」

「良かったです。本当にありがとうございます。」


するとおばあちゃんは


「あら、可愛い笑顔だね〜。」

「え!」


(今、笑ってたんだ。)


びっくりした。

周りを見る。

私以外いなかった。


(私、ちゃんと笑ってたんだ!)













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