第4話 天気雨

家に帰る間、グルグルグルグル嫌な思い出を思い出す。


(どうしちゃったの?私。)


そう思っていると、家に着いた。

ガチャと家のガギを開けた。

そのまま何も言わずに家の中へと入る。

普通、


「ただいま。」


と言って家の中に入るだろう。

でも、私の家は


「ただいま。」


と言っても、


「おかえり。」


と返事をしてくれる人はいない。

だから、いつの間にか言わなくなっていた。


(私の家って変だよね…。)


そんな事を考えながら、自分の部屋に入った。

カバンを机に置き、ベットに寝っ転がった。

今日の事を思い出す。

すると、ポンッと優さんの顔が浮かんだ。


(優さん。)


ずっと背中を撫で続けてくれた。

心地よい手で。


(…何か渡そうかな。)


何もなしは良くないと思い、渡すものを考えた。


(…思い浮かばない。)


気づけば、何かをあげるということをしたことがなかった。

家族から何か貰ったことはある。

でも、お返しにと渡したことはない。


(どうしよう…。)


数秒間、うーん…と唸っていた。


(…散歩しよう。)


とりあえず、私は散歩をすることにした。

家に出て、いつも通る道を歩く。

私にとって散歩は好きな時間だった。

いつも見ている景色が違って見えたり、頭を空っぽにするとアイディアが浮かんでくる。


(はぁーいい時間。)


しばらく歩いているとポツと何かが当たった。


(え?何?)


そう思ったとたん、サーと霧雨が降った。


(!!!!)


バッと空を見た。

───晴れていた。


(天気雨。)


ずぶ濡れになる前に帰ろうと思った。

雨なんて大っ嫌いだから。

でも、本当は……この雨に降られたいと思った。

気持ち良くて、嫌な思い出を綺麗に流してくれている感じがした。


(雨なんて嫌いなはずなのに…。)


不思議とこの雨だけは、好きになった。


フッと笑ってしまった。


(今日は本当に変な日。)


そう思い、笑った。


(あ……今、私……自然に笑えた…?)











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る