第2話 欲しかった言葉1
「ごめんね…。その、泣かせたいわけではなく。」
息をスゥーと吸って、ゆっくり吐いた。
「だ、大丈夫……です。」
「そっ、そっか。」
「……。」
「……………。」
(な、なんて言えばいいんだろう?)
私は滅多に喋ることはない。
喋ると言っても「はい。」か「いいえ。」の2択だ。
そんな私に普通に接してくれる人は今までの人生で、出会ったことはない。
ついさっきまでは…。
(どうしよう…。)
汗がダラダラと流れるのがわかる。
すると、優が
「本当に嫌だったらごめん。謝る。でも、何か力になれる事があるなら…、聞かせてほしいな。」
ゆっくり息を吐いてから喋った。
「………。私は、小さい頃から親の言いなりだった。塾にバレイ、ピアノ教室、ありとあらゆるものをやらされた。」
「うん。」
「でも……、散々!!親の言う通りにしてきたのに……。」
「うん。」
「やりたい事、好きな事、全部!!!!……………………。」
そこで言葉が詰まった。
言えなかった。
喉が締め付けられるようだった。
「……認めて貰えなかった?」
コクンとうなづいた。
胸がキュウと締め付けられる。
悲しい。
悔しい。
自分が情けない。
色んな思いが込み上げてくる。
「……今まで、よく耐えたね。」
その言葉を聞いた時、涙がこぼれた。
温かさがあった。
包まれているようだった。
(もしかしたら、欲しかった言葉の中に入っていたの……。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます