私なりの笑顔

歌犬

第1話 私の思いは…



「──────、親友。」


君の言葉は、私の力になる。

君の笑顔は、私の心を楽しくしてくれる。

君がいなかったら、今の私はいなかった……。



いつもと何ら変わらぬ日々、自分がしたくてしてる訳でもなく、ただ大人の言う事に従い、偽の笑顔を作る。

そうしていれば、何も起こらない。

周りからは、まるで人の感情が分かり始めたロボットのように見えているだろう。

私は、「これがしたい」と思ったことはない。

だって、私がしたいと思ったことは望まれないから。

望もうとすると、嫌な顔をされる。

笑顔で言っても、無視される。

そんな環境にいたからか、いつしか「本当の笑顔」というものが分からなくなっていた。



この世には、溢れるほどの「笑顔」がある。

「笑顔」ってなんの意味があるのだろうか。

人は笑う。

心の底から、楽しそうに笑う。

(───羨ましい、な。)

羨ましいな?

なんでだろう。

そんな感情、久しぶりだ。

霧で隠されたよう感じで、閉ざされるような感じがした。

でも、少し分かるような気もした。

何をしたって認めて貰えない。

何を頑張っても欲しい言葉が貰えない。


(私は…いつ悪いことをしたのだろう…。)

そう考えながら目を瞑ろうとした。


その時、誰かが喋りかけた。


「ねぇ!」

「?」

「君、笑、歌ちゃん……だよね?」

「そうですけど?」

「あっ、私は優だよ!」

「そうですか。」


不貞腐れたように答えた。

でも、心の中では鼓動が早くなるのを感じた。

心臓の音がうるさかった。

人に話しかけられるのは、滅多にない。

家族や先生以外で。


「良かったー!」

「?」


何が良かったのだろう?

何故笑っているのだろう?

理解が出来ない。


「なんか1人で深刻そうな顔をしてたから、大丈夫かな?って心配になって。」

「!」


びっくりした。

私は心配されたことがない。

いつだって、期待だけだ。

私の考えや思いを全部無視して、歩みたくない道を歩まされる。


「大丈夫?」

「……………大丈夫…です。」

「そっかー!でも、大丈夫そうには見えないよ?」

「え?」

「今も、心から笑ってる感じがしない。偽の笑顔って感じ?」

「…。」


何も言うことは出来なかった。

私は、本当の笑顔が出来ない。

出来ない理由はわかってる。

私を認めてくれる人がいないから。

なんでだろう?

なんで、出会えないんだろう?


「えっ!ちょ、大丈夫?!」

「へ?」

「泣いてるよ!」


(あれ?…なんで私…泣いてるんだろう…。)

(なんで……、心がこんなにも温まるんだろう。)





















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