第13話 旅行

○デパートの婦人下着売り場

  搬入口側で待つ公一。

  洋子が店内から小走りに出て来る。

洋子「だめ、付けられてる…」

  洋子は、小声で公一に言う。

公一「こっちへっ」

  公一は、洋子の手を引き階段へと駆け出す。


○デパートの階段

  二人とも一心に走るが、顔を見合わせると微笑む。

洋子「なんか、洋子と公ちゃんは、犯罪者みたい、警察から逃げる…」

公一「俺、殺人者だから…」

  公一の顔が曇る。

  洋子は、慌てて言う。

洋子「違うの、あの人は、死んでないの」

  公一は、驚いて、

公一「それ本当なのか?」

洋子「うん、軽い怪我で済んだの」

  公一は、明るい顔になり、

公一「よかったーっ」

  洋子もにこりとするが、息が切れてしまう。

洋子「洋子、もう走れないよう」

  公一は、振り返り、

公一「もう、付けて来ないみたいだ」


○新宿通り

  二人は、手を繋いだまま、新宿駅東口へ向かう。

  公一は、洋子に、

公一「洋子、旅行しよう、卒業旅行!」

洋子「嬉しい! 公ちゃんと旅行ね! やったぁ~」

  洋子は、子供のように喜び飛び跳ねる。

公一「ロマンスカーで箱根湯本まで行き、それから、登山鉄道で強羅だ!」

洋子「洋子、箱根初めてだよ! 嬉しい」

  洋子は、公一に抱きつく。

  公一は、心配そうに、

公一「尾行は、無くなったけど、洋子、大丈夫なのか?」

洋子「大丈夫、今日は、女子高の同窓会なの。 会場は、箱根のホテルなの!」

  そう言うと、洋子は、首を傾けて微笑む。

  公一も笑顔で頷く。


○二人の旅行

  小田急ロマンスカーでの二人。

  箱根登山鉄道での二人。

  ケーブルカーでの二人。

  大涌谷での二人。

公一「洋子、黒い玉子。 温泉のゆで玉子だよ」

  そう言って、公一は、食べる。

  洋子は、恐る恐る口にする。

洋子「美味しい!」

  芦ノ湖の海賊船での二人。

  やがて、湖に日が暮れると、ホテルのディナーへ。

  キャンドル越しに見つめ合う二人。

  二人は、一つのベッドで仲良く眠る。


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