第11話 再会

○公一の下宿

  公一の家族は、消滅した。

  清水での事も消滅した。

  ある意味、吹っ切れた公一である。

  公一は、完全に一人だけになった。

  部屋の中で一人、煙草をふかしている公一。

  「ピン、ポーン」

  公一は、宅配だろうかと思いながら玄関ドアを開けた。

公一「どなた?」

  玄関外に立つ洋子、

洋子「あ、あのー、洋子です…」

  公一は、ゆっくりとドアを開ける。

公一「洋子…」

  

○対座している公一と洋子  

公一「洋子は、今、どうしているんだ?」

  公一が、沈黙を破り話始める。

洋子「もう、ウェイトレスは、していないの」

  と、洋子は、俯きかげんで返答する。

公一「俺、洋子に救ってもらった。それも、とてつもない救済…」

洋子「大丈夫だよ、びっくりした? 洋子のこと…」

公一「ああ、びっくりしたよ。でも、離れてみると洋子の存在が俺には大きくて…」

洋子「洋子もだよ。洋子も公ちゃんのことが、頭から離れないよ…」

  二人は、どちらからとも無く抱き合う。

  そして、ゆっくりとお互いを、求め合うかのようにキスをした。

  二人は、抱き合ったまま、ベッドに倒れ込んだ。

  しばらくして、洋子は、起き上がり身なりを正すと公一を見つめた。

洋子「公ちゃん、もう、少し待ってくれる? 洋子、家を出て

   公ちゃんの胸に飛び込むつもりなの」

公一「大丈夫なの?」

洋子「うん、ウェイトレスのバイトもやっとやらせてもらっていたの。

   でも、もう、自由はダメだって…」

公一「監視されているのか?」

洋子「うん」

  洋子は、力無く頷く。

  公一は、黙って考え込む。

  しばらくして、洋子は、2台のスマホをテーブルの上に置く。

洋子「洋子のスマホは、監視されているの。

   それで、これは、洋子が内緒で契約したスマホ…

   これで、公ちゃんと洋子は、連絡とれるよ」

  公一に渡されたスマホには、”よう”と”こう”でラインが

  行えるようになっている。

  公一は、電話が苦手であったが、大学の教科でパソコンを学ぶようになり

  文字による会話ができるようになっていた。

  公一は、スマホを手に取り、

公一「洋子、ありがとう」

  と、にこやかに言った。

洋子「公ちゃんの笑顔久しぶりに見た。洋子、嬉しい…」

  しばらく、二人は見つめ合う。

洋子「じゃあ、洋子、帰るね」

  洋子は、立ち上がる。

公一「洋子、気を付けろよ。監視されているし…」

  公一も立ち上がり洋子を見送る。

洋子「大丈夫だよ。尾行は、まいてきたから」

  洋子は、振り返り公一のそばまで来て、抱きつき、耳元で、

洋子「いつでも、公ちゃんと一緒にいるからね」

  と、言ってほほえむ。

公一「わかった…」

  洋子の出ていったドアをいつまでも見つめる公一。

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