第六話 目覚め



 零夜はゆっくり目を開けて、木々の隙間から見える空を見上げた。太陽はすでに高く昇っていて、時間はもうお昼頃に差し掛かっていた。



 零夜は寝転がっていた体を起こして、座り直して、零夜先ほど見た夢を思い返していた。幼い自分自身のことだ。







「僕はあの頃は人よりも人一倍風邪をひきやすかった。でも、…それ以外は特に今ほど体は弱くなかったと思う。魔法は不自由なく使うことができていた。そして、あの幼い僕は魔法を失敗しても、何度もできるまで挑戦していたんだ。」


 そう言いながら、零夜は自分の手のひらを見つめた。

 そして、零夜は深呼吸をして、徐に腕をまっすぐ伸ばした。親指から手をゆっくりと開いた。そして、その手のひらから魔力を少しずつ放出した。零夜の指先から出た魔力は、青く澄んでいて、その魔力は球体を形作るようにまとまり始めた。


 スー


 零夜はその魔力の塊を、水を掬い取るように両方の手のひらで優しく包み込んだ。そして、魔法名を紡ごうとした時。





 ゴホッゴホッ


 零夜は強く咳き込んだ。


 ゴホッゴホッゴホゴホッ


 咳が止まらなくなった零夜は服の袖で押さえた。押さえた袖には咳き込んだ時の血が付着していた。しかし、すぐに表情を引き締めて、再び魔法を使おうとした。しかし、咳き込んでしまって成功することはなかった。





 しばらくじっとしていた零夜。

 一見するとぼーっとしているように見えるけど、その時零夜は必死に考え込んでいた。


 この神社には何度も来ているけど、今日はこの神社に来たことで、僕の感覚でだけど、いつもと違って試してみたら使えるかもしれないと期待していた。でも、実際は魔法を発動する前に肺が苦しくなり咳き込んでしまっただけだった。確かに、のように魔力暴走は今回起きなかった。それは、よかったことだけど…


 零夜は落胆を隠せなかった。




「今の僕は体が弱いことは相変わらずだけど、いつのまにか年齢を経るに連れて、生活魔法以外の魔法がまともに使うことができなくなってしまっていた。どうしてだろう?」


 零夜は手が赤くなるほど強く握りしめた。そこだけ血の流れが止まり、指先が白くなっていた。



 が、自分の手をもう一度見て、握った時の爪の跡ができていることに気づき、我に返って握っていた手を緩めた。













 立ち上がりながら、ふと思い出した。


 そういえば、忘れそうになったけど、誰が僕の脳内に直接語りかけてきていた。声は落ち着いた男性のもので、その声は若かったと思う。その人は僕の弱さに触れていた。一体、彼は僕の何を知っているのだろう。







 それと、僕の知り合いに魔術師はいない。

 あの人は一体誰だったんだろか?











 零夜の腕は鳥肌が立っていた。




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