第二話 秘密基地へ
考え方をしていた僕は母に行ってきますと告げずに、そのまま家を出てきてしまった。母は8時にはもう家を出て会社に向かってしまうから、朝は僕のことをそんなに構っていられないだろう。
今日も、空が晴れていて日差しが強いから傘は僕の出かける時の必須アイテムだ。これは、日光アレルギーのおかげである。(嫌味)
でも、傘をさしていると、知らない人から僕は訝しげな眼で見られる。
「晴れているのに、どうして傘をさしているの?」と
でも、理由は確実にそれだけではない。僕の異様な容姿についてだろう。僕は少なくとも、同じ銀髪の人を見たことがない。
もう、僕はこの視線に慣れてしまった。喜ばしくないことだけどね。
それよりも…
ふと、思い浮かんだのは母のことである。僕の体調不良で散々迷惑をかけてきたけど、余計に心配させてしまったかも。
体調悪いから休むと言ったのに勝手に出てしまって、どこに行っていたという疑問は当然のものだと思う。
夕方の帰宅時に「どこに行っていたの?」と問い詰められるかもしれない。
それでも、僕にはいきたい場所があるから。もちろん、体調が悪いというのは嘘ではない。
どこか言い訳ぽいこと考えながら、ここにはいない母を思い浮かべていた。
僕がこれから向かおうしている場所は僕の秘密基地だ。いつも、考え事をする時によく来る場所なんだ。まぁ、秘密基地とは言っても、家から徒歩15分ほどで着く、とても寂れた神社だけどね。僕はここに来ると体の痛みも息苦しさも全てが和らぐ気がするんだ…。それは僕の気のせいかもしれないけど。
とにかく、この場所は僕のお気に入りの場所なんだよ。
ここは僕が1歳の頃にお祭りのお祓いを行うために来たことがあるらしいけど、僕は覚えていないんだよね。これは、僕の両親から、聞いた話なんだ。
僕は7月19日にちょうど3歳の誕生日を迎えていた。その翌日に日本の太平洋側沿岸で大きな地震が起こった。僕が住んでいる神奈川県綾瀬市も、津波は来なかったけど、地震で結構揺れたらしい。
その揺れで神社の入り口の鳥居や狛犬は倒壊してしまったんだ。神社自体も、老朽化が目立っていから、予算の関係でもう使われないまま残ってしまっている。
しかし、考え事をしていたせいか、僕はよく前を見ていなかった。
「痛っっっっっっっっっった!」
僕は典型的な転け方をした。神社に到着したから、鳥居があったはずの場所を通り、階段を登ろうとしていたところだった。
右手で手すりを掴みながら登っていたのに、派手に階段に足を引っ掛けた僕は、左膝を打撲した。
膝から血が流れている。膝を擦りむいてしまったようだ。
でも、良かった。
少し焦って家を出てきたけど、ティッシュや絆創膏をポケットに入れて持っていたから。
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