第4話
おいらは、そうまである。
初めてお外に出たのだ。
ここは、お庭と言う場所らしい。
お世話係は、洗濯物を干すと言っている。
おいらは外に出して貰えたのだが「文鳥」は、お留守番なのである。
良かったのだ、あんなのと一緒に冒険はしたくないのである。
しかし、おいらの肉球が気持ち悪いと言っているのだ。
ザラザラしてて、時々痛い。
小石と言う物を、踏んでしまったらしい。
ここは全然楽しくないのだ。
それに、この伸びたり縮んだりするリードと言う奴も嫌なのだ。
お世話係の足に纏わりついて、お家にいれて欲しいと訴えたのに、足を踏まれたのである。
痛かったのである。
「キャンッ」と言う、情けない声を出してしまって、恥ずかしいのだ。
小さくなって赤くなった顔を隠していたら、お世話係はおいらを抱き上げて、一生懸命謝っているのだ。
何故謝るのか分からないが、撫でて貰えて気持ち良かったから、もう恥ずかしくないのである。
お庭にもリードにも慣れて、走り回っていたら、お世話係は嬉しそうに見ていたのだ。
おいらが走ると嬉しいらしい。
調子に乗ってお世話係から離れてしまった時、何やら視線を感じて上を見上げたら、真っ黒い奴がおいらを見ていたのである。
あの恐ろしい目は知っているのだ!「文鳥」が威嚇する時と、同じなのだ。
恐ろしくて身体が動かなくなったのである。
奴は飛んで来た、おいら目掛けて飛んで来たのだ。
おいらの本能が、あいつに連れて行かれると訴えているが、恐ろしくて動けないのである。
おいらの人生、短かった…
二本の足で、持って行かれそうになった時、お世話係が「日本犬」を呼んだのだ。
あの巨大な「日本犬」が姿を現すと、黒い奴は逃げて行ったのだ。
お世話係は、おいらを抱っこして「怖かったね」と言って、撫でてくれたが…
まだ震えが止まらないのである。
そんなおいらを見て「日本犬」は笑ったのだ、あの恐ろしい黒い奴は「トンビ」と、言うらしい。
いつも獲物を探して、空から見ていると、言っていたのだ。
おいらは餌になる所だったのに「日本犬」は姿を見せただけで、あの恐ろしい「トンビ」を、追い返したのだ。
凄い奴なのだ。
「日本犬」が仔犬の時は、奴が寄って来たら、一緒に遊んでいたと言う。
しかし、直ぐに遊んでくれなくなり、つまらない奴だとぼやいていた。
その時おいらは知ってしまったのだ。
この巨大な「日本犬」は、遊びのつもりだったかもしれないが、あの「トンビ」は恐ろしい思いをしていた事を…
そしておいらは、分かってしまったのだ。
世の中大きい奴が、得をすると言う事も。
お世話係は「日本犬」の頭をいっぱい撫でてから、特大ジャーキーをあげていた。
だがおいらには、小さいボーロを三個しかくれなかったのだ。
大型犬になりたい。
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