第2話  ルールを見よう


自己紹介が一通り終わった後は、各自で個室やら能力やらの確認を行うこととなった。

皆、続々とロッカーに端末をかざして個室へと向かう。

瞬間移動のようなものだろうか。

かざした2〜3秒後にその場からスッと消え去る。

俺も行くか。

椅子から立ち上がり、端末を片手にロッカーへと向かう。






「おぉ…う…。これは、すごいな…。」

かざして視界が切り替わると同時に、思わずそんな言葉が出た。

なんせ、想像以上に個室の出来が良かった。

まず、広さは間違いなく20畳近くある。

一般的な家のリビングより少し広いくらいだろうか。

転送された場所には靴箱が置かれていて、その近くの壁には2つのボタンがつけられている。

片方は電気の消灯。だがもう一つは、

なんとを変えられた。

赤にも青にも、白にも黒にも。

あんまり派手な色は好みではないので、無難に薄茶色とかで良いだろう。

そして、中央にはテーブルがあり、それを囲むようにソファが置かれている。

奥にはベッドがあり、その反対側にはキッチンもある。

また、1つだけ扉があり、そこはユニットバスに繋がっていた。

一通り確認し終えた後、俺はソファに座りながら端末を確認する。

まずは目先の問題から対処しなくてはならない。

最初のゲームの開始は明日から。

情報が何も入っていない状態で出来ることはごくわずか。

それでもこれについて考えない訳にはいかないだろう。

能力。

1人1つ、ピエロから与えられたもの。

俺の能力は…。


ピピピピッッ


一瞬、端末から機械音が鳴った。

それと同時に通知が来ている。


《ゲーム説明は明日朝8時に各端末に送信》


ゲームの運営に関しての連絡か。


《尚、本日の21時〜明日の6時まで、個室からの移動は不可能となる》


そう言われ、今の時間を確認してみるともうすでに19時を回っていた。

集められた時間は16時くらいだったのだろうか。

とりあえず、風呂に入り今日はもう寝ることにした。







翌朝。

着替えも終わらせ、言われた通りに8時頃に個室で待機していた。

ちなみに、この服は端末から注文した。

他にも食料や日用品、あとは冷蔵庫や電子レンジなどの電化製品も頼んだ。


ピピピピッッ


昨夜聞いたものと全く同じ音声が鳴った。

ゲームの説明があるのだろう。

ある程度の緊張感を持ちながら端末の画面をスライドしていく。



〜〜〜〜〜〜〜ゲーム説明〜〜〜〜〜〜〜〜


2040年4月2日〜4月6日

9時〜18時


《ジョーカー破り》


各プレイヤーはカードを10枚所持する。

カードの役職は、


《国民》《騎士》《占い師》《ジョーカー》


の4つ。

《ジョーカー》のみ1枚、それ以外のカードは各役職につき3枚ずつ所持している。

またそれぞれの役職には相性があり、

《国民》は《占い師》に強く、

《占い師》は《騎士》に強く、

《騎士》は《国民》に強い。

《ジョーカー》は他の役職全てに強い。


【基本ルール】

プレイヤーは


① カードを1枚選択し、盤上に出す。


② お互い揃ったら、同時に裏返し、相性に基づいて勝敗を決める。出したカードが同じだった場合、そのカードをお互いに手札戻した上で①に戻る。


③ 出したカードは表にした状態で隅に重ねて避ける。


①〜③を合計7回繰り返し、勝ち数の多いほうが勝者となる。


【特殊ルール】


基本ルールの②において、裏返す前に相手のカードが《ジョーカー》であると宣言することができる。

ただし、宣言できるのは一度だけである。

その宣言が正しかった場合、宣言した側の勝利とする。

もしお互いが宣言し、そのどちらも正しかった場合、互いの《ジョーカー》を表にした状態で隅に避けた上で①に戻る。


また、相手の《ジョーカー》を見破った場合を除き、《ジョーカー》を一度も出さずにゲームに勝利するとそのプレイヤーは反則として敗北扱いとなる。


このゲームは一対一での対戦となり、プレイヤーは金曜日までに2回の対戦を行う。

その結果により各プレイヤーのポイントが変動する。

またプレイヤーには、対戦開始の10分前に端末に場所と時間の通知が送られる。

対戦開始に揃わなかったプレイヤーは敗北扱いとする。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



なるほどな…。

イメージとしてはじゃんけんに近いか。

いや、ジョーカーを見破ることの重要性を考えると対策の仕方はかなり変わるか。

どんなに負けていても相手のジョーカーを見破れば勝ちなのだから。

あと気になるのは時間のことだな。

ルールには対戦開始の10分前に連絡がくると書いてあるが、つまりこれはその連絡が来るまで待ち続けなければならないということ。

あらかじめこの日のこの時間に、という指定がされていれば気は楽だっただろう。

この方法では、10分前になるまでの間は知らず知らずのうちに精神を削っているようなものだ。

しかもそれが5日間。

これを考えた奴は性格が悪すぎる。

きっとあのピエロなのだろうが。


と、言っても。

恐らくこの手のゲームで俺が負けることはまずないだろう。


その絶対的確信があるから、俺は昨日注文した食材で適当に料理を作ろうかと考えていた。







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