触手少女➁
ぜんぶがわたしにとってはじめてだった。見ていたものぜんぶが変わってしまって、聞こえていたものぜんぶが違ってしまって、それとは違うなにか、なにかが入ってきて、わきあがって、ぐるぐるわたしの中でまわって
どくどく、ぞわぞわしているけれど、わたしは考えた このヒトを守らなければ と。
このヒトはいつもこうさせていた。だからコイツも食べない方が、このヒトは うれしい 。
硬くて食べられない。力もつよいコイツをどうすれば追い払えるか――
そうこのヒトが言っていた。
敵を追い払うために、自分は危険だと見せつけるために、わざと目立つ色をする。模様をする。
わたしはそれをしっている。見られる。はとても嫌だ。このヒトに見られているは慣れたけれど。
見られている。じぶんより大きな生き物に。そう思わせればいい。
わたしの体は、どうすればいいかを知っている。
アイツは逃げていった。わたしが勝った。
振り返る。あのヒトはわたしを見ている。
あのヒトはけがをしている。わたしはどうすればいい
わたしはどうしてほしい?
ヒトはどうやってこれを使っているのか。ヒトに似たわたしの口からは、ヒトがやっているように音が出ない。
「よくやった。パーカー」
パーカー このヒトがわたしにとくべつ向ける音。よくやった はできたときの音。
この音が出たら 待つ。このヒトが持っている、わたしの隠れ場所で。 パーカーまで
――?
隠れられない。待つ できない。わたしの体が、隠れ方 を分からなくなってる。
じゃあ、ほかには、つぎ 次にはどうすればいい。このヒトはこのまま はだめ。でも何かするため このヒトはここに来た。
ここはあつい。体が すこし 痛い。
「一旦帰るか。パーカー」
よくわからない音。このヒトは来た道に向かって動こうとする。わたしはどうすればいい。
「ついておいで」
またわからない音。動き出したこのヒトは、わたしの腕を持っている。そっちへ行けばいいのか。
ヒトの腕は動きにくい。このヒトはこんな腕でよく動ける。
まねをしてみる。わたしにはそれができる。 すこし 動きやすくなる。
このヒトはわたしの腕を持ったまま
わたしは
嬉しい
――――?
分からない がいっぱい。
分からない けどへいき。
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