第2話 一緒に書きたい。
シューティングスターに導かれて、長谷川さんと友達になって三日が過ぎた。長谷川さんと昼食を食べながら、友達とは何ぞやと長考するが答えは出ない。
ま、友達の定義はさておき。
ここは女子高生作家の『橘 美彩』どうかを確認せねば。
「長谷川さんは女子高生作家だったりする?」
余りにも唐突であるがこれが一番早いと感じたからだ。
「えへへへへ、ペンネームは教えられないけど小説投稿アプリを使って執筆しているよ」
やはり、『橘 美彩』に違いない。しかし、彼女は思いの外に子供の様であった。
昼食を食べ終わると。
「お願い、今日、パン屋の来客クーポンが1人一枚なの一緒に来てくれるかな?」
どうやら、私の分のクーポンが欲しいらしい。私の都合など関係無く長谷川さんは頼み込んでくる。天使の様な笑顔の長谷川さんに頼まれると断わり難い。諦めて一緒に行くか。
「よし、決まり。あ、それから、私は今からノートパソコンでカタカタしないといけないの」
「一緒に行こうよ」
「いいよ」
私は女子高生作家の執筆シーンが見たくなり、一緒に廊下の自習スペースに向かうことにした。
そして、自習スペースに着くと、長谷川さんは鞄からノートパソコンを取り出すとタイピングを始める。
……。
絵になるなー。
スポーツチアや学年トップは無理だが一緒に小説を書く事は出来る。
私はぼんやりと小説のストーリーが浮かぶ。階段の踊り場にある姿鏡から鏡の世界に入るストーリーだ。
翌日から、私はノートパソコンに向き合っていた。そう、小説を書くのだ。
落ち着かないな、私は窓のカーテンを閉めると。夕闇にお別れをして机に座り直す。
タイトル、タイトル。ダメだ、決まらない。
この決めると言う作業は私の性格に向かないのだ。ここは主人公の名前から決めるか。
『江戸川〇ナン』
違う!!!
個人の書く小説とは言え。使えない名前はダメだ。
『猫目 ココ』にするか。属性は猫好き女子高生と。
で……。
数分固まっていると。自分の限界を感じる。よし、長谷川さんにアドバイスを求めよう。私はメッセージアプリで小説の書き方を教えてもらう事にした。
『アイデアが浮かんだら、ドバと書いて、困ったらドクトクっと考えて、書き終わったスッパとアップする』
あああ。長谷川さんは天才型であったか。むしろ、『橘 美彩』の小説を研究した方がいいな。
私は小説投稿アプリを起動する。
しかし、綺麗な文章だな。
これが先ほどのアドバイスから生まれたモノなのかと関心する。
よし、今日は徹夜だ。とにかくタイトルを決めなければ。
朝、目覚めると机に向かっていて寝ていた。あああ、徹夜するつもりが寝落ちしたらしい。
私は時計を確認すると……。
遅刻だ!!!
大急ぎで家を出ると自転車をマックスで飛ばした。高校にはチャイムが鳴るなかで着いた。まさにギリギリである。
私は教室に滑り込むと何とか間に合った。
ふぅ~このエピソードは私の人生に似ている。
日常の授業でここまで本気に成れる。友達も居ない生活はダメ人間だと思っていたが長谷川さんと友達になれて、ようやく自分の長所に気がついた。この輝く気持ちを小説にぶつければいいのかと思う。
その日は放課後のスポーツチアの練習を見学する事になった。今回は入口付近で隠れてではなく。
女性監督の隣の席だ。相変わらず長谷川さんは凄いな。
これが選ばれた人間の世界か……。
ため息が出るが長谷川さんのチア姿は元気が貰えるモノであった。
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