第43話 グミとユウキの価値観

サヤカ

「ど…どういうこと?ここで こんな傷がつくって…」

グミ

「このドラゴンは ここ地獄のもとからいるやつらだ お前らみたいなコアの生命体じゃないってこと ちなみに 俺もそうだぜ まあ…残念ながら本体は封印されちまってるがな…」

ユウキ

「で 助かるのか!グミ」

グミ

「………命は助けられるが…うーん…右の翼がもう駄目だな…かろうじて 飛べるだろうが 馬車を引っ張れるとは思えないなぁ…うん よって 助ける価値無し だな 行こうぜ ユウキ」

グミは ドラゴンを背に立ち去ろうとする

ユウキ

「グミ 助けてやってくれ…頼む」

サヤカ

「お願い!グミちゃん!!」

グミは ユウキとサヤカを背にうなだれる

グミ

「……あのなぁ…さっきも言ったように 俺の魔力は温存しておきたいんだ さっきの天使共に 使った魔力も想定外だったんだ もう無駄に使えないんだよ それから このドラゴンの治療は 相当な魔力を使う もし また何かあったらどうするんだ?わかったか?」

ユウキ

「それでも!頼む…グミ」

グミ

「………なんでだ?もはや直したところで 俺たちには 何の価値もないんだぞ?」

グミには この2人が何故懇願してまで 助けてほしいという事が全く理解できなかった 助けた所でドラゴンが飛べる保証もない こちら側には利益がないからだ

サヤカ

「………グミちゃん…」

グミ

「…そんな目で見るなよ…わかったよ…はぁ…全く意味がわからん…」

グミは ブツブツ文句を言いながら ドラゴンに回復魔法を使う

ユウキ

「ありがとう!グミ!」

グミには この言葉も気に食わなかった 自分とユウキは主従関係だ いや もっと格差のある関係だ ユウキはグミの全てを握っている 気持ち1つでグミの魔法を強制的に発動させることも 消し去ることも可能だ そんな関係なのに グミに対して感謝するユウキに 苛立ちを隠せなかった

グミ

「………ちっ…なんなんだよ…よし…これで治ったろ もう動けるな」

サヤカ

「…グミちゃん?怒ってる?」

グミ

「怒ってるよ!…もう 俺の魔力はほとんどないぜ!ったく…」

ユウキ

「そんなふくれっ面すんなよ ってもとからか まあ ありがとな グミ」

グミ

「もういいよ!…ほら ドラゴンが復活したぞ」

ブラックドラゴンは 大きな身体を揺り動かしゆっくりと立つ

グミ

「お前?飛べるか?」

ブラックドラゴンは 大きく頷き ボロボロになっている右の翼も器用に動かし 数センチ浮いた後 地面に降りた

ユウキ

「おお!よかった…とりあえず なんとかなるな」

そうこうしているうちに エイガとエイシャが慌てて近寄る

エイガ

「も…申し訳ございません…こ…こんなことになってしまい…」

サヤカ

「いいですよ 皆さんなんとか無事でしたし ただ ドラゴンが大きな怪我をしてしまったようです…」

エイシャ

「!!あ…わざわざ ドラゴンの治療もしていただけたのですか!ど…どれほど 強力な回復魔法を 使えるん… あ…いえ 本当にありがとうございます」

グミ

「おーい ユウキ!サヤカ!こいつの背中に乗りな 馬車は引けねぇけど 飛ぶことは出来るらしいから それで向かおうぜ それとも 帰るか?」

ユウキ

「え!?グミ?ドラゴンと話せるの?……お前 ホントに凄いな…」

サヤカ

「ドラゴンの背中かぁ…うーん まさか ドラゴンの背中に乗ることになるなんて 思わなかったわ」

サヤカが ゆっくりとドラゴンに近づくと ブラックドラゴンは左の翼を器用に地面に付け 背中に登って来れるようにする

ユウキ

「あの エイガさん ここからまだ遠いんですか?」

エイガ

「いえ あと数刻もすれば 王都が見えてきます」

ユウキ

「そうですか では 行きましょうか グミ 行こう」

グミ

「はいはい 分かりましたよ」

サヤカはすでに ドラゴンの背に乗ってくつろいでいた

サヤカ

「ユウキ早く来て!意外と柔らかいんだよ ドラゴンの背中!」

ユウキ

「なんだか サヤカ たくましくなったな…わかった 今行く」

ユウキも左の翼から登り 背中に着く

ユウキ

「お!ホントだ もっとゴツゴツしているイメージだったけど フカフカなんだな…」

ブラックドラゴンは 2人が乗ったのを確認すると 頭を上に上げ 背中に魔法陣を作る

ユウキとサヤカを半円の薄い膜が張り ブラックドラゴンは大きく羽ばたいた

サヤカ

「落とされないように しっかり掴まってなきゃ…って あれ?全然風とか感じない?」

ユウキ

「さっき ドラゴンが薄い膜を作ってくれてたから それが 風とかそういうもんを防いでくれてるんだろうな…しかし とんでもないスピードだな…これで 片方の翼が怪我しているとは 思えないぞ」

サヤカ

「確かに 凄く速いよね…でも そのスピードにピッタリ追いついてるエイガさんとエイシャさんも凄いね…あーぁ…私も空が飛べたらなぁ…」

そんな想いを胸に一行は ハデス王の待つ王都へ向かう

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