第31話 解いてしまった封印

ユウキ

「な…なんだか 薄暗いな…って 父さん そんな入り口にいないで もう少し奥に行ってくれよ」

ヒデオ

「……やはり お前は別格なのだな 部屋の扉が開いただけなのに 強烈な重圧で まともに進めんのだ…」

バール

「うむ 久しぶりに入ったが やはり この部屋の瘴気は変わらんのう して ユウキ殿は 大丈夫…いや 野暮な質問だな なんの影響もなさそうだ」

ユウキ

「!!い…いえ そうでもないですよ 何だか 空気が重いかなぁ?って思いましたよ…たぶん…」


ユウキには 残念ながら全くわからなかった しかし なんとなく 空気的に 影響を受けているフリをすることにした


ヒデオは ようやく歩を進め ユウキはヒデオの隣に行き 部屋にある台座に乗せている 3本の禍々しい剣が見えた

ヒデオ

「むぅ…凄まじい闘気の満ちた剣だな…残念ながら 俺には 分不相応だな……」

ユウキ

「…ほんとだ…ずいぶん大きな大剣だな……これは 重そうで俺にも無理だ…ん?」


ユウキは 台座の3本の剣がある場所より 少し離れた所にある 長さ約60センチ程の 木で出来ている木剣を目にする…


ヒデオ

「ゴムド殿 触っても良いだろうか?」

ゴムド

「もちろんじゃ 手に取ってみるがよい」

ヒデオ

「うむ ありがたい………おぅ……こ…これは…やはり…この重圧さ…これほどとは!す…素晴らしい……」

ヒデオは 3本の剣の内 左の剣を手に取り その剣の魅力に 感極まっていた


ユウキ

「……へぇ…触ってもいいのかな?…じゃあ ちょっと失礼して…」

ユウキは そっと木剣に手を伸ばし 手に取って見る

ユウキ

「やっぱり 木で出来てるだけあって軽いな 俺には 金属で出来た剣は 重くて無理だな…」

ゴムド

「!!!ユ…ユウキ殿! その剣は 触ってはなりませぬ!!」

ユウキ

「え!?ああ!ご…ごめんなさい!」

ユウキは 慌てて木剣を戻す

???

「クッククク…もう 遅い…」

ユウキ

「ん?な…なんだ?」

ユウキが 周りをキョロキョロしたが 声の主がどこにいるかわからない…

しばらくすると 目の前に30センチほどの 黒い渦が現れる

ユウキ

「ん?なんだこれ?」

ユウキが じっと見ていると そこから 赤いソフトボールぐらいのサイズの 赤い球が出てきた

???

「フハハハ!!やっと…やっと 蘇ったぞ!! 死を司る鬼と呼ばれた この俺が こんな 木剣如きに封印されるとはな…クッククク…まあ いい 俺を復活してもらったお礼に…お前の魂を 喰らってやろう!!って……え? お前……デカくね?」

ユウキ

「………なんだよ 死を司るって……ってか お前が…小さいんだよ…」

???

「え!?嘘……またまた…お…俺には…そんな冗談通じねぇよ…」

赤い球はキョロキョロし 鏡のように研がれた剣の近くに フラフラ飛んで行き そーっと 覗き込んでみる…

???

「………な…なんじゃ…この…姿はぁぁ!!!」


絵にかいたような 魂の姿をした赤い球は 両手っぽいものをつき 膝はないが 膝をついた状態で 頭がうなだれていた…


???

「お…おい!!お…お前!何をした!!」

ユウキ

「は?…何にもしてないよ…ってか お前何?」

赤い球

「くっ…どういうことだ…確かに…封印は解かれた…うん…間違いない…なのに…何故だ…本来の力が 全く出ない…」

ユウキ

「あ…あの ゴムドさん?…こ…これってなんですか?」

ゴムド

「むぅ…その木剣には 遥か昔 暴れていた鬼を封印しており 誰にも触れる事が出来なくなっておったのじゃが…わしの方が聞きたいくらいじゃ…あなた様は…どうやって 触れる事が出来たのじゃ?」

それを聞いたヒデオは 木剣にそっと手を伸ばす…が ゴムドが言ったように バチッと 大きな破裂音が鳴り ヒデオは慌てて手を戻す

ヒデオ

「うむ ゴムド殿の言うとおり 触れる事も叶わぬか…」

ユウキ

「そんな…俺が触れた時 そんなことなかったけど…」

ゴムド

「…申し訳ないが…もう一度 その木剣を取ってもらってよろしいですかな?」

ユウキ

「え!?あ…はい…」

ユウキは ゆっくりと手を伸ばす やはり 何の抵抗もなく 木剣に触れ そのまま持ち上げた

ユウキ

「…うん…やっぱり 何か抵抗があったとは思えない…うーん…なんでなんでしょ?」

赤い球

「…お前 何か 知ってるな… おい! 知ってること話しやがれ!!」

赤い球の魂は 勢いよく 奥にいるゴムドに向かっていくが ある程度 行ったところで 急に止まる

赤い球

「……あれ?………うおおお!……な…なんで これ以上前に進めないんだ…」

ゴムド

「なるほど…なんとなくわかったわい… お主は 確かに封印は解かれた…しかし 新たに ユウキ殿に 封印されてしまったようじゃな…」

ユウキ

「ええ…俺…なんにもしてないけど…」

赤い球

「解け!俺の封印を解けぇぇ!!」

ユウキ

「はぁ?俺には さっぱり分からないんだよ…」

ゴムド

「お主 あまり偉そうな事を言うものではないぞ お主が 消滅するもしないも ユウキ殿しだいとなっておるんじゃぞ? そうじゃユウキ殿 試しに こやつを 少しお灸を据えてやってくれまいか? なに ユウキ殿がこやつを懲らしめると 考えるだけで良い そうするだけで こやつは もがき苦しむぞ」

ユウキ

「え?そうなの?考えるだけで?」

赤い球

「…んなわけないだろ?…お…おい 冗談だよな…」

明らかに 動揺する赤い球

ユウキ

「んーと…考えるだけか…えっと…こうかな?」

赤い球

「……ひっ?…ぐぎゃああああ!!!」

赤い球は この世の終わりのような叫び声をあげ みるみる小さくなった…

ユウキ

「お?ほんとだ ……だけど やりすぎたみたいだな…」

ユウキが 赤い球を懲らしめる って考えをやめる

赤い球

「ハァハァ…な…なんだ…ど…どうなって…」

ユウキ

「ハハッ…なんだか 随分絞んじゃったな 大丈夫か?」

赤い球

「だ…大丈夫にみえるのか…だ…大丈夫なわけねぇだろ…一体…何しやがった…」

ゴムド

「……ふぅ…お主 まだわからんのか…そんな状態で よくあるじに生意気なセリフが 吐けるのぅ…ユウキ殿 こやつはまだ わかっとらんようだ」

ユウキ

「ゴムドさん そうみたいですね 随分と悪さをしてきたみたいですし もう一丁 懲らしめておきますね」

赤い球

「ああぁ…ごめんなさい…もう生意気な事言いません…だから…」

ユウキ

「…本当にわかっているのか? まあ とりあえず どうしたものか…」

ユウキは この得体のしれない赤い球を どうすればいいのか 途方に暮れるのだった…

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