第29話 刀剣職人 アルマ

バール

「あの角を曲がって 真っ直ぐ行けば 右手に見えてくる しかし 本当にいいのか?さっきも言ったように なかなかの変わり者でな 気を悪くしなければ良いが…」

ヒデオ

「もちろんだ やはり刀剣を作る職人は そうでなくてはならない!いやぁー ますます興味が出るというもの なあ! 我が息子よ!ハッハハハ!」

ユウキ

「…父さん 母さんがいないからって あんまりハメを外すなよ…ことによっちゃ 母さんに チクるからな…」

ヒデオ

「!!!べ…べつに…か…母さんが…こ…怖いわけじゃ…じゃないし…し…しかしだな 男子たるもの 告げ口は 良くないぞ…な…」

ユウキ

「…声 震えてんじゃねえか…相変わらず 母さんには 弱いな…」

バール

「…うむ あの小さき身体に 似合わず あの威圧感は 素晴らしいものがある…しかし 誰にでも あの威圧感を出しているわけではない…して 何故 ヒデオ殿だけに あの強烈な威圧感を 出されるのだ?」

ユウキ

「まぁ…夫婦だからね そういうものなんだよ バールさん」

バール

「よくわからないが そういうものなのか…うむ なかなか難しいな…」

ヒデオ

「…もうその話は 良いではないか! お? してバール殿 もしかしてあそこか?」

バール

「ん?そうそう あそこだ」

かなり大きなレンガ作りの家で 屋根には煙突があり よく町にある ありふれた町工場のようにも 見えた

???

「もう 来ねえよ!!」

???

「誰が来てくれって頼んだ?あ!?おめぇには そこらの棒切れでも ブンブン回しとう方が お似合いや!!」

かなりの罵声が 離れていても 聞こえてくる

バール

「………はぁ…また やってるな…すまん ちょっとここで待っててくれるか?」

ヒデオ

「いや 一緒に行こう なに 邪魔はしないさ さあ 行くぞ」

ユウキ

「バールさんの知り合いなんだろ?俺たち新参者が いきなり行っても 相手の逆鱗に触れるだけだって…」

ヒデオ

「いや それでいいのだ それで合わなければそれまでだ こそこそ相手の機嫌に合わせてはならないのだ こういう時こそ 真正面から いかなくてはならない」

ユウキ

「…なんだか それっぽい事言ってるけど 良く分からないぞ…」

ユウキの言葉を言い終わる前にヒデオは バールと共に お店の前まで もう向かっていた

ユウキ

「あ!ちょっと 待って!ったく…」

ユウキは慌てて 後を追いかける

バール

「おーい わしだ バールだ」

???

「ったく しつこいなあ! いい加減にせぇや!」

勇ましい声とともに バールは 砂のようなものを投げつけられた

バール

「くっ!まさか…いきなり 鋼砂を投げつけられるとはな」

バールは 顔に付いた砂を払いながら 睨みつけた

???

「あれ?さっきの奴とちゃうなぁ…んーっ…あれ?なんや バールのおっさんやん どうしたん?砂かぶって?」

バール

「お前が 投げつけたんだろうが!!」

???

「まぁまぁ そんな硬い事いわんでええやん で 何しに来たん?」

バール

「…まったく…まあ いい…いや 良くないが…わしの友人に この店を紹介したくてな ここに連れて来た次第だ」

???

「…ふーん…バールの連れやからって 別に特別扱いなんかせぇへんで 見る目のないやつには どうせ うちの刀剣を まともに扱えるわけないんやから」

バール

「減らず口を…申し訳ない… ヒデオ殿 ユウキ殿 紹介しよう ここで刀剣作りをしている アルマだ」

見た目は 短い黒髪で 活発な人間の女性にしか見えなかった

ユウキ

「こ…こんにちは アルマさん はじめまして…」

アルマは ユウキを足元から頭までジロジロ見る その後 横に回り込みジーッと見た後 ユウキの目の前に立ち

アルマ

「なんや? なんか なよなよしてんなぁ…もっと シャキッとせんと あかんで!」

ユウキ

「は…はぁ…申し訳ないです…」

ユウキは 直感で理解する この女性は苦手だと…

ヒデオ

「アルマと申したな では早速 刀剣を見せてもらっても良いかな?」

アルマ

「ええで 見るだけタダやしな それと うちの店の刀剣は そこらで売ってるもんとちゃうんや あんたに売るって決まってないで」

ヒデオ

「全くそのとおりだ 素晴らしい刀剣は持つ者を選ぶ 分不相応の者が持つことは 許されない 実に不愉快だ」

アルマ

「へぇ…おっさん ようわかってるやん で なんか気になった剣あったんか?」

ヒデオは 入口から動かず 目だけで 店に置いてある剣を 一通り眺める

ヒデオ

「…………ないな 残念だ 俺が求める刀剣は……ここには ない…バール すまなかったな わざわざ 案内してもらったのに…」

ヒデオは バールに頭を下げる

ヒデオ

「行くぞ ユウキ」

ユウキ

「え?あ…うん すみません お邪魔しました…」

アルマ

「ちょい待ち!おっさん どういう意味や…あ!?」

ヒデオは アルマに背を向けたまま 問いに答える

ヒデオ

「……言葉通り とってくれて構わん……いや はっきり言おう ここの刀剣は 見てくれは立派だ ただそれだけ はっきりいって ガラクタだ」

ユウキ

「!!!と…父さん!! な…なんて 事を!ち…違うんだ…と…とうさ…」

ユウキは 父親の爆弾発言により あたふたし どうしたらいいか 分からなくなった

バール

「…………ハッハハハ!どうだ!アルマよ わしが連れて来た友人は?ん?」

アルマ

「…ふん まぁ…さすが バールのおっさんが つれて来ただけはあるみたいやな…あんたら うちに付いてきぃ」

ユウキ

「え?は?どういう…」

ヒデオ

「…なるほど 試されていたか…」

バール

「すまんなヒデオ殿 黙っていて そう ここの店頭に並んでいる刀剣は 見た目だけの刀剣 しかし パッと見ただけで すぐに 気付くとは いやはや恐れった」

ユウキ

「……そうなんだ 俺には どれもこれも 凄そうな剣にしか見えないや…」

アルマ

「ちんたらしとったら 置いてくで はよ ついてきぃ」

3人は アルマに奥へと 案内されるのだった…

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