第13話 レモンとオムライス

レモン

「!!わぁーっ!!」

レモンは 満面の笑顔でスプーンを突き刺し 口に頬張った

ユウキ

「…見た目は 普通のオムライスだな」

ユウキは 一口食べてみる 口の中で広がるケチャップの甘酸っぱい香りが広がる

ユウキ

「うん うまいな ちゃんと 味覚はある でも やっぱり 飲み込んだ後の感覚が 少し違う感じ…なるほど 確かにお腹に溜まっていく感覚はないな…って サヤカ どうしたんだ?」

サヤカ

「……結局 なんにも手伝えなかったわ…」

ヒトミ

「いいのよ 使い勝手は全然違うし 気にしないで」

サヤカ

「…はい…ありがとうございます…」

そうは言ったものの サヤカは随分ショックだったようだ

そうこうしているうちに レモンはオムライスを食べ終わり 口のまわりを ケチャップまみれにしながら席を立つ

レモン

「……ふん…まあまあだったわ…」

そう言うと レモンは スタスタと玄関に歩いていくが 途中で引き返してくる

レモン

「そうだった…これ お兄ちゃんから」

1つの袋と 黒い球を ユウキに渡す

ユウキ

「なにこれ?」

ユウキはそっと 袋を縛っている紐を解いて中を覗くと 青白く発光するコインが数枚入っている

ヒトミ

「さっすが アモンちゃん太っ腹だねぇ…」

ヒデオ

「その青白いコインが 一番大きな通貨コインだ それだけあれば 欲しい家財道具など揃えても 充分余る」

サヤカ

「アモンさんに 感謝しなきゃ …で…この黒い球は何なのかな?」

ユウキは 黒い球を ヒトミに渡す

ヒトミ

「それは 簡単に言うと 通信機器みたいなものね ただ これって…間違いないわ…S級のシークレットがかかってる…」

レモン

「うん お兄ちゃんが そこの ゴミにしか使えない仕様にしてる」

そう言って ユウキを指差す

ヒトミは その言葉を聞き ユウキに黒い球を返す

ユウキ

「ゴ…ゴミって…で…これって どうやって使…!!!」

アモン

『お?レモンから受け取ったみたいだな おっと 喋んなくていいぜ 頭ん中で 直接会話出来るから 試してみな』

ユウキ

『…うお!べ…便利だな…でも…なんだか…変な感じだ…』

アモン

『わりぃな…色々あってな それで悪いが その黒い球を持ったまま ゆっくりとその場で回転してくれ』

ユウキは わけがわからなかったが 黒い球を持ったまま ゆっくりとその場で回転する

アモン

『………問題ないな…よし…それで 黄色の膜は消えたか?』

ユウキ

『それだ なんだか 色が薄くなるどころか だんだん色が濃くなってきているようなんだが?』

アモン

『まだなのか…そうか わかった 黄色の膜がなくなるまで その家で好きに過ごしててくれ ただ 外に出る時は その黒い球は必ず持って行けよ わかったな それから レモンに寄り道せず 帰って来いと 言っといてくれ じゃあな』

ユウキ

『あ!お…おい! ちょっと待ってくれ 一体どれぐらいかかるんだよ くそ…一方的に遮断しやがった…』

サヤカ

「ど…どうしたの?急に回りだしたかと思ったら 口半開きで…」

不審者を見るような顔で ユウキを見る

ユウキ

「アモンが 話しかけてきてたんだよ ところで サヤカは 黄色のモヤみたいなやつ消えた?」

サヤカ

「ううん 全然…なんだか色濃くなってる気がする…」

ユウキ

「だよな…俺もだ…気にしても仕方ないか…」

ヒトミ

「まあまあ 今日来たばっかりでしょ まあ 私たちは 幽体みたいなもんだから 疲れるってことはないらしいけど 人間だった名残りなのか 疲れるって概念を知ってるからなのかわかんないけど なんだか疲れる時は疲れるんだよねぇ」

ヒデオ

「確かにそうだな ダメージを喰らうと 痛くもないのに イタッて 言ってしまう」

ユウキ

「へー…そういうもんか…あ!そうだ アモンが 寄り道せず 速く 帰ってこいって言ってたぞ」

レモンの方に 顔を向け 問いかける

レモン

「わかってるわよ 言われなくても!」

ヒトミ

「それじゃあ 私たちは そろそろ帰りましょうか?サヤカちゃん 明日 一緒に買い物にいかない?この辺の事 色々教えてあげる あ!そうだ レモンちゃんどうする? プリン作って冷蔵庫にあるんだけど また 今度にする?」

レモン

「プリンって 前に食べた柔らかくて 甘いやつ? 食べる!!」

ユウキ

「お…おい 寄り道せず帰ってこいって言ってたって言ったろ…全然わかってないじゃないか…」

サヤカ

「レモンちゃん 完全に ヒトミお義母様に懐いているのね」

ユウキ

「ああ…そうだな…アモンは 寄り道することをわかってたんだろ…まぁ 問題ないだろ」

サヤカ

「では お義母様 明日 色々教えてください」

ヒトミは サヤカに微笑み ユウキとサヤカは 玄関前まで見送り3人は帰っていった

ユウキ

「……ふぅ…たしかに なんだか疲れたよ…」

サヤカ

「…そうね…2階には…ベッドもあるそうだから そこで横になってれば 少しは 気が紛れるんじゃないかな?」

ユウキ

「…睡眠って出来るらしいけど どうなのかな?」

ユウキはそう言うと 2階に上がる

ユウキ

「おお!立派なベッドだな ……うわ フカフカ!」

ユウキは 今後の事を考えると 全くどうしていいか分からなかったが アモンがこの世界で 尽くしてくれたことを考えると 少しでも力になりたいと思い ゆっくりと目を閉じた…

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