アサルト

……………………


 ──アサルト



 連邦捜査局のパシフィックポイントオフィスにはエントランスの方向に面した場所に駐車場があり、そこに無数の車が止まっていた。


 マックスたちは4台のSUVに分乗して、その駐車場へと入る。


「準備はいいか、野郎ども」


 レクシーがそう言ってマックスとフュージリアーズのメンバーを見渡す。


「いつでも行けるぜ、レクシーの姉御」


 フュージリアーズのメンバーはバラクラバを被り、マガジンポーチを大量に装備し、さらには防弾プレートを2枚入れたタクティカルベストを付け、手にはそれぞれ銃火器を握っている。


 何よりその頭には暗視装置NVGだ。もう外は暗くなりつつある。


「手筈通りだ。潜入している三月ウサギがオフィスの電気を落とす。そこに踏み込んで暴れ回る。時間は2230ニイニイサンマルまで。それからすぐに車両まで撤退して、とんずらだ」


 レクシーが作戦について確認。全員が頷く。


「じゃあ、派手に始めよう」


「ぶちかませ!」


 レクシーが号令をかけ、マックスたちが降車。


 そして、マックスは軽機関銃を腰だめに構えてパシフィックポイントオフィスに向かう。ガラス張りのパシフィックポイントオフィスの中からいくつもの視線がマックスに向けられ、ざわめき始めた。


 さらにパシフィックポイントオフィスの照明が一斉に落ちて、真っ暗になる。


「そこのお前! 武器を捨てろ!」


 そこで警備員が銃を構えて現れ、マックスに警告。


皆殺しだショー・ノーマーシー


 マックスが軽機関銃の引き金を絞り、けたたましい銃声が響き渡る。


 警備員は銃弾によって薙ぎ払われ、いくつもの銃弾がガラスを破ってパシフィックポイントオフィスのエントランス付近にあったものを蜂の巣に変えた。


「マックスがやったぞ。あたしたちもパーティに参加だ」


「応!」


 そして、グレネードランチャーを構えたレクシーと自動小銃を握るフュージリアーズがSUVから降りてマックスの後ろからパシフィックポイントオフィスに向かった。


「こちらエントランス! 襲撃を受けている! クソ、内線が通じない!」


「来たぞ! テロリストどもだ!」


 エントランスには警備員と捜査官が立て籠もり、迫るマックスたちに抵抗していた。


「マックス。牽制射撃だ。あたしが爆弾を叩き込む」


「了解だ」


 マックスは遮蔽物から拳銃を発砲する捜査官たちに向けて軽機関銃で牽制射撃を行い、彼らが攻撃を行えないように遮蔽物に押し込んだ。


「ほらよ!」


 そこにレクシーがグレネード弾を叩き込む。爆発が生じ、捜査官たちが血を流して倒れていく。そのような捜査官たちにマシューたちがフュージリアーズが確認殺害として頭に2発ずつ銃弾を撃ち込んだ。


「殺せ、殺せ。ひたすらに殺せ。連中に恐怖を刻んでやれ」


 軽機関銃による猛烈な射撃と強力なグレネードランチャーを前に拳銃しか装備していない捜査官たちが殺されていった。


「ここにも何かいそうだぞ」


「オーケー。3カウント!」


 マックスが叫び、3秒のカウントの末にマシューたちが部屋に突入。


 全ての部屋に押し入り、そこにいる全ての人間を皆殺しにしていくマックスたち。連邦捜査局パシフィックポイントオフィスには夥しい血が流れている。


「かなり殺したな」


「ああ。だが、まだカーター・マルティネスとマティルダ・イーストレイクを殺してない。もう少し頑張るとしようぜ」


「ああ。そうするとしよう」


 マックスは軽機関銃の弾倉を交換してリロードし、再び前進を再開。


 そのころ、カーターたちも状況を把握しつつあった。


「重武装の連中が押し入ってきている! 我々では対抗できそうにない!」


「クソ。なんてことだ」


 撤退してきた捜査官が叫び、カーターが唸る。


「裏口から逃げられない?」


「分からない。待ち伏せされている可能性もある」


「じゃあ、私たちも武器を取りに行きましょう」


「弾薬庫はこっちだ」


 カーターたちは捜査官の案内で弾薬庫へ。


 その間も銃声と爆発音が絶えず響き続け、悲鳴と怒号がそれに添えられる。


「滅茶苦茶やりやがる。ふざけやがって……!」


 カーターは同じ司法の人間が、悪党によって殺されているのに憤っていた。特に銃乱射は彼の嫌いな犯罪のひとつだ。


「気を付けろ。見つかったらハチの巣にされるぞ」


 捜査官はそう警告してカーターたちを引き続き案内する。


「ここだ。まだ敵は来ていないようだな」


 そして、無事にカーターたちは弾薬庫に到達。


「自動小銃に散弾銃。拳銃よりマシな装備はそれくらいしかないが、持っていけ」


「オーケー。こいつをいただこう」


 カーターは12ゲージのポンプ式散弾銃を手にした。


「私はこれを」


 マティルダは口径5.56ミリの自動小銃。


「予備の弾薬はたっぷり持っていけ。こういうときのためにた買ってあったんだ」


 捜査官はそういって自動小銃を握り、弾薬庫の外に出る。


「気を付けて。また銃声がする。それも近い……!」


 マティルダが警告し、カーターたちはデスクの陰に隠れる。


「これからどうする?」


「侵入者を排除すると言うのは無理だろう。だから、まだ生きている人間を救助してレストランに立て籠もる。そうだ?」


「悪くないね」


 マティルダの説明にカーターが頷いた。


「なら、行こうか」


 カーターたちは姿勢を低くし、敵に続かれないように移動する。まだ銃声が響き続けており、何者かが暴れているのは明白だった。


 カーターたちはカーターを先頭に進み、オフィス内の生存者を探す。


「だ、誰だ!」


「撃つな! 味方だ! 州警察のカーター・マルティネス!」


 ある部屋に入るとそこに生存者が集まっていたらしく、カーターたちは銃口を向けられながらも、両手を上げて味方だと知らせる。


「味方か。外の様子は分かるか?」


「さっぱりだ。生存者はどれくらいいる?」


「6、7名。残念だが死んだ人間もいる」


「クソ」


 既に死亡した人間がいることを知らされてカーターが呻く。


「負傷者はどうなっていますか?」


「幸い、軽傷で手当ても済んでいる。医薬品のストックもあったしな」


「それはよかった。これから他の生存者を探して脱出します。着いて来てください」


「ああ。了解だ」


 救助した人間を引き連れてマティルダたちが再び真っ暗なオフィス内を進む。オフィス内には重武装の殺人鬼たちがうろついており、カーターたちは音を立てて彼らに気づかれないように進んだ。


「向こう側に誰かいそうだな。見てこよう」


 カーターがカフェテリアの方を見てそう言う。


「気を付けて」


「そうする」


 カーターはまたゆっくりと進み、部屋の扉をノックした。


「カーター・マルティネスだ。誰かいるか?」


「カーター? ICEのテオだ」


「ガーランド特別捜査官か。入るぞ」


 カーターはそう断ってからカフェテリアの調理室に入った。


「よく来てくれた、カーター。救いの女神だ。外の様子は分かるか?」


「詳細は分からん。だが、重武装のテロリストが襲撃してきたのは間違いない。既にかなりの犠牲者が出ている」


「クソ。最悪だな」


 テオはカーターから状況を聞いて唸る。


「生きている人間を集めて脱出しようとしています。今のうちに脱出を」


「分かった。だが、ここには動けない負傷者もいる。それはどうする?」


「全員で抱えて運び出しましょう。置き去りにはしません」


「それでこそだな」


 テオはそう言い、カーターたちも負傷者を運ぶために、負傷者が安置されているカフェテリアの調理室奥に進む。


……………………

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