カウントダウン
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──カウントダウン
マックスとレクシー、そしてフュージリアーズは準備を整えた。
「連邦捜査局のオフィスにあるのは最大でカービン仕様の自動小銃ぐらいだ。それを上回る火力を持っていって叩き潰すぞ」
「じゃあ、こいつだな」
マックスが言い、レクシーが武器の収まったコンテナからある銃火器を取り出す。
「口径7.62ミリの軽機関銃。特殊作戦部隊御用達の品だ。この口径の機関銃にしては軽くて取り回しやすく、それでいて火力は抜群。自動小銃が最大火力で、装備しているのは拳銃程度のサツ相手なら圧倒できるだろう」
「最高だな。俺はこいつで行こう」
マックスはレクシーが示した軽機関銃を装備することに。
「あたしはこいつで行こう。爆発は正義だぜ」
一方のレクシーは口径40ミリの回転式チャンバーのグレネードランチャーを手に取る。口径40ミリのグレネード弾やガス弾が6発装填できるものだ。
「また癖の強い武器ばかり選んだな。俺たちはいつも通りで行く」
フュージリアーズのマシューたちは口径5.56ミリのカービン仕様の自動小銃や12ゲージの散弾銃などを選んでいく。
「爆薬は山ほど持っていけ。目につくものを片っ端から吹っ飛ばせるようにな」
「楽しくなってきたな」
レクシーがにやにや笑いでタクティカルベストに爆薬を詰め込み、マックスも笑いながら同様に手榴弾やスタングレネードを収めていった。
マガジンポーチに弾薬を詰め込み、救急キットを忘れず準備し、マックスたちは襲撃の準備を進めていく。
「作戦目標について改めて確認する」
レクシーがそう言ってフュージリアーズの端末に写真を送った。
「州警察のカーター・マルティネスと連邦捜査局のマティルダ・イーストレイク。こいつらがあたしたちを嗅ぎまわっている。できれば始末しろ。もし、連中がいなければ、連中がビビり散らして小便漏らすぐらい他の連中を殺せ」
「応!」
レクシーの言葉にフュージリアーズのメンバーが声を上げ、拳を突き上げる。
「じゃあ、いよいよ戦争だ」
レクシーたちがそのような準備を終えていたとき、連邦捜査局のパシフィックポイントオフィスではカーターたちが捜査を巡って会議を続けていた。
「ミハイルから芋づる式に検挙していったことで、ルサルカの密入国斡旋ビジネスはほぼ潰れたはずだが……」
「未だに分からないのは、彼らがいかにして密入国を行っているか」
「そう、それだ」
カーターたちは“国民連合”において不法移民を受け入れ、売り飛ばしている人間については摘発を進めていた。
だが、実際に外国から密入国者を連れてきて、密かに“国民連合”に密入国させている人間は摘発できておらず、その手段すらも謎のままだった。
「今は水漏れの水を吹いているような状況であり、今も水漏れが続ている。根本的な解決をしなければ、密入国はこれからも続くだろう」
「ええ。どうにかして糸を手繰って密入国の実行犯を探らないと」
カーターが言い、マティルダが頷く。
「ICEの方ではまだ摘発できそうにないのか、ガーランド特別捜査官?」
ここで捜査官のひとりがICEのテオに尋ねる。
「我々も万能ではない。こちらの動員可能な捜査官は可能な限り動員して、港なども調べているが、今のところは収穫なしだ」
テオは首を横に振ってそう報告。
「今は沿岸警備隊などとも協力して、密入国にかかわっている船舶を見つけ出そうとしているが、相手はなかなか尻尾を掴ませない。さらに言えば密入国はパシフィックポイントで行われているものではない可能性もある」
「と言うと?」
「北のセトル王国や南の“連邦”を経由している可能性だ。そうなると捜査範囲は恐ろしく拡大し、我々がいくら捜査官を動員しても足りなくなる」
“国民連合”の北にはセトル王国という友好国があり、南には“連邦”が位置する。このふたつの国と“国民連合”の国境線は大陸を縦断する膨大なものであり、それらを全て監視するのは事実上不可能であった。
「参ったな。捜査はまた行き詰りつつある。次の手を打つための手掛かりがほしい」
「それについて提案がある」
「教えてくれ」
マティルダが言い、カーターが発言を促す。
「前にICEがインターネットで人身売買の取引をしていたのを見つけたように、臓器密売についてもインターネットで取引が行われていないかを確認しておくというのは? 相手が顧客を探すためにインターネットを使ったのはほぼ間違いないでしょうし」
「なるほど。確かに客がいなければ、臓器を取り出しても意味がないな」
そう、ハンニバルは顧客を探すためにインターネットのアングラに広告を出している。それを通じて臓器移植を求める客に臓器を売ったのだ。
「亡くなった患者のパソコンから、臓器密売を謳ったサイトがないか調べてみるべきね。それからそのサイトの運営者などを当たって、摘発する」
「オーケー。現状はそれしかない。早速調べよう」
マティルダの提案は通り、今度はインターネットから情報を漁ることに。
「マルティネス警部。タイラー警視がお見えなっています」
しかし、ここでカーターに来客を知らせる連絡が入った。
「ドワイトが? 分かった。すぐに行く」
カーターの上司であるドワイトが連邦捜査局のオフィスを訪れたというのに、カーターは彼に会いに向かった。
「ドワイト。どうしたんです?」
「あまりよくない知らせがある」
ドワイトは眉を歪めて小声でそう言う。
「捜査資料が窃盗された疑いがある。どの捜査資料かといえば、お前たちのハンニバルに関する資料だ。捜査の進捗状況や担当者であるお前たちの名前が漏れた可能性も……」
「クソ。内部犯の仕業ですか?」
「ああ。そうみている」
カーターが悪態をつくのにドワイトはそう返した。
「内部監査を実施すべきでしょう。汚職警官は残らず摘発すべきです」
「分かっているが、この状態で州警察が機能不全になれば、いよいよハンニバルに勝ち逃げされる。相手に気づかれぬように静かに、かつ迅速に行いたい」
「分かりました。あなたがそう考えるならば、そうしてください。お互いに最善を尽くせば文句なしですから」
「すまないな、カーター。お前がどれだけ汚職警官を嫌ってるかは知っている。必ず対処すると約束しよう」
「ええ」
ドワイトはこれだけが用事だったらしく、また州警察のオフィスに戻ろうとする。
けたたましい銃声が響いたのはそんなときだ。
「銃声……!?」
カーターが突然響いた銃声に戸惑いの声を上げ、他の捜査官たちはすぐさま腰のホルスターに手を伸ばした。
さらにここで電気が消え、辺りが暗くなる。
「何があったか確かめてくる」
「俺も同行する、マティルダ」
「ええ。お願い」
そして、カーターとマティルダは銃声の方向に向かう。
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