OGA

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 ──OGA



「OGAですって。まさか戦略諜報省?」


 戦略諜報省は“国民連合”の情報機関で、世界でも有数の規模の情報機関である。その作戦は多岐にわたっているが、基本的にそれは国外で行われるもので、“国民連合”国内での作戦が許可されることはない。


 その戦略諜報省が大部隊を率いてミハイル邸にいる。


「国内はあんたらの縄張りシマじゃないはずだが?」


「危機においては使えるものは使うべきだと思わないか。そうすれば“本土攻撃”だって防げたかも知れない」


「ふん。それならどこでミハイル・シドロフの情報を掴んだ?」


「そいつは機密事項だ。悪いな」


 カーターが訝し気にハイエルフを見て言い、ハイエルフはにやりと笑う。


「ミハイル・シドロフに聞きたいことはもう聞いた。後はあんたらに譲るさ。頑張ってハンニバルとルサルカを潰してくれよ」


 ハイエルフはそう言って無線に合図するとミハイル邸から同じように武装した男女が出てきてSUVに乗り込み、そして走り去った。


「クソ。どういうことだ?」


 カーターは走り去る車列を見て唸る。


「今はミハイルの拘束を。戦略諜報省については後で考えよう」


「そうだな。踏み込むぞ」


 ふたりはそう言い、カーターたちはSWATを先頭にミハイル邸に踏み込んだ。


「ミハイル・シドロフを発見!」


「クソ。生きてるのか?」


 ミハイルは椅子に結束バンドで拘束され、気を失っていた。周囲には血だまりができており、ミハイルの鼻からは鼻血が今も滴っている。


「尋問された痕跡がある。戦略諜報省がやったのか?」


「だろうな。とりあえず病院に運ぼう」


 ミハイルはそれから連邦捜査局の手によって病院に運ばれ、まずは意識が回復するのを待つことになった。


「ミハイルは無事に拘束できたが……」


「戦略諜報省がなぜか介入してきている」


 カーターが唸るのにマティルダがそう言った。


「他の連中にもこのことは知らせて、相談しておかないとな」


「ええ。まずはオフィスに戻りましょう。ナイトクラブを捜索したチームの話も聞いておきたいから」


「そうしよう」


 そう言ってカーターたちはパシフィックポイントオフィスへと戻った。


 ミハイル邸捜索チームとナイトクラブ捜索チームがオフィスで合流。


「まずミハイルは病院で治療を受けている。今も意識不明だ」


「意識不明? 何があったんだ?」


 カーターの報告に捜査官たちがざわめく。


「現場に戦略諜報省が先回りしていた。連中がやった可能性はある。ミハイルには尋問されたらしき痕跡もあったからな」


「戦略諜報省だと」


 戦略諜報省の名が出るのに会議室がざわめく。


「国土安全保障省の方から戦略諜報省が動くとの連絡は?」


 ここでカーターが国土安全保障省はICEのテオ・ガーランド特別捜査官に尋ねる。


「いいや。そのような通達はなかった。しかし、戦略諜報省は独自の対テロ作戦を行っているとの話は何度か聞いたことがある」


「独自の対テロ作戦、か」


「ああ。国土安全保障省と連邦捜査局は国内を管轄するが、テロリストは国外からもやってくる。そして、海外といえば戦略諜報省の支配する場所だ」


「そういうことを考えて情報共有が行われるようになったんじゃないのか?」


「まだまだだ。やはり完全な垣根を超えた情報共有というのは難しい。だから、国外のテロリストに精通している戦略諜報省は自分たちの手で国内における作戦も実行従っているというわけだよ」


 テオはそう会議室の面々に説明した。


「しかし、これは犯罪捜査だ。対テロ作戦なんかじゃない」


「いいえ。ハンニバルは国内テロ組織とみられている組織であり、国外で活動している連中でもある。だから、国内テロ担当の私がここにいる」


 州警察の捜査官のひとりが言うのに、マティルダが首を横に振ってそう言った。


「戦略諜報省がミハイルに何の用事があったかは、ミハイルが意識を取り戻してからいくらでも聞こう。今は俺たちの仕事を行う。ナイトクラブでの捜査結果は?」


 カーターがそう話を進める。


「ナイトクラブの方ではICEが不法移民2名を拘束。さらにホワイトフレークを始めとするドラッグの所持で6名のスノーエルフを拘束している。ルサルカ上層部に揺さぶりをかけるには少し足りないかもしれないな」


 ナイトクラブでの逮捕者は8名。


「密入国者を取り調べて、ルサルカが密入国にかかわったという証言を得よう。それができたら次だ。今はひたすらルサルカを攻撃し続ける。そうすればハンニバルにも打撃が響いてくるはずだ」


「了解」


 今はルサルカの密入国斡旋ネットワークを潰さなければならない。そのためにはルサルカの摘発可能な幹部を片っ端から拘束するのだ。


「マティルダ。ミハイルが意識を取り戻したと連絡があった。どうする?」


 カーターたちが次の目標の摘発に向けて準備を進める中、病院からカーターにミハイルが意識を取り戻し、簡単な取り調べなら可能だと連絡が来た。


「取り調べなら参加する。今から?」


「今からだ」


 そして、カーターとマティルダは病院に向かった


 連邦捜査局の捜査官に護衛され、ミハイルは病院の個室に入院していた。


「ミハイル・シドロフ。州警察のカーター・マルティネスだ」


「連邦捜査局のマティルダ・イーストレイク特別捜査官」


 カーターとマティルダが頭や腕などに包帯を巻き、点滴を受けているミハイルにそう挨拶した。


「クソ。今日は厄日か。訳の分からない連中にボコボコにされたと思ったら、次は警察だって? 勘弁してくれよ」


「ふざけたことを抜かすなよ、ミハイル。お前はどのみち逮捕されていたんだ。臭い飯を食う前に美味い病院食が食えてよかったな」


 ミハイルはため息交じりにそう愚痴り、カーターはそう威圧する。


「ミハイル。あなたは尋問を受けたと私たちは見ている。何を聞かれたの?」


 早速マティルダが尋問を開始する。


「それに答えたら司法取引してくれるか?」


「情報が有益なら考えてもいい」


「約束してくれ。じゃなきゃ俺は話さない」


 ここでミハイルが司法取引を要求。


「分かった。約束してやる」


「オーケー。助かる」


 カーターが渋々そう言い、ミハイルが安堵の息を吐いた。


「まず言っておくが、俺にも連中が何ものだったかなんてことは分からないぜ。連中は名乗りもしなかったしな。ふん!」


 最初は苛立たし気に語るミハイル。


「連中が俺から何を聞き出そうとしていたかだが、連中はハンニバルという組織に心当たりがないか、執拗に聞いていた」


「ハンニバルについて、か。お前はそれに何と答えた?」


「知らないと。実際知らないしな。ハンニバルってどこのどいつなんだ?」


「ふむ」


 どうやらミハイルはハンニバルに繋がっていないらしい。ハンニバルの存在はルサルカの誰もが把握しているものではなく、限られた人間だけが把握しているのだろう。


「オーケー。ここはついでだ。お前が把握している人身売買についても白状しておけ」


 カーターはそう意地悪く笑った。


……………………

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