科学捜査
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──科学捜査
リリーから取り出された腎臓は解剖されて、検査された。
リリーが起こした敗血症の原因は、まずこの腎臓で間違いない。腎臓からは不衛生な環境で繁殖する病原菌が見つかったのだ。
それからDNAが検査される。
そのDNA検査で分かったことが重要であった。
「腎臓の本来の持ち主はスノーエルフとドワーフの混血、と……」
「ええ。その通りです」
ハーヴィーからの報告を聞いたカーターの背中にぞっとする悪寒が走った。
ハンニバルはルサルカを経由し、ドワーフ・マフィアと手を結ぶことでスノーエルフとドワーフの混血を密入国させるようになっている。
そして、今回臓器密売の
さらにはルサルカのホテルが臓器密売に関与した可能があった。
嫌な点々が結ばれ、ひとつのおぞましいビジネスが姿を見せつつある。
「最悪の可能性が持ち上がってきた。ハーヴィー、ルサルカを乗っ取った連中は今はスノーエルフとドワーフの混血の密入国させているんだ。最悪なことにな」
「まさか。臓器目的で密入国をさせている、と」
「その可能性は否定できないだろう。クソ、ここ最近妙なことがなかったか、徹底的に調べよう。宇宙人の噂でもいい。宇宙人が臓器を抜いているって話の真相は、もしかしたら人間の仕業かもしれないからな」
「了解」
カーターはそう言い、マティルダたちが情報を調べる。
それからカーターたちはここ最近に発生した妙な事件がなかったかを調べた。不審な病死であったり、死体遺棄であったりを調べたのだ。
そこでまずカーターたちが掴んだのは、スノーエルフとドワーフの混血の死体が大量に見つかった事件である。
「この事件は未解決だ。ルサルカが方針を変えた時期にスノーエルフとドワーフの混血の死体が見つかったのは無関係だとは思えないだろう」
「場所もウェスタンガルフ州のピジョン郡。捜査資料は?」
「ある。ピジョン郡の保安官事務所にも」
「なら、これからかかるべきね」
不気味なほど漏れた事件と事件が繋がっていく。
カーターたちはピジョン郡の保安官事務所に連絡して捜査資料を送ってもらった。カーター、マティルダ、ハーヴィーの3名はそれを調べていく。
「見つかった遺体はほとんど火葬状態だったけれど、骨に手術の痕跡があったとなっている。けど、どこの誰が遺体を遺棄したかは分かっていない」
「なあ、連邦捜査局に国土安全保障省へのコネを持っている人間がいないか以前聞いたよな。あれはどうなったな?」
「ICEとはまだ交渉中だけど、それがどうしたの?」
「死体がどこから来たのか、はっきりさせるのさ」
そののちマティルダは連邦捜査局本局に電話し、そこで国土安全保障省にコネのある人間に繋いでもらった。
「はい、バーナード。あなた、確か国土安全保障省にコネがあったよね?」
その捜査官の名前はバーナード・スタージス。連邦捜査局の対テロ部門に配置されている人間のひとりであり、マティルダとは同僚だ。
『なんだ、マティルダ。国土安全保障省がどうかしたのか?』
「単刀直入に言うわ。衛星の画像がほしい。ウェスタンガルフ州の次の座標の画像」
『衛星? いったい何を調べているんだ?』
「お願い。後でいくらでも説明するから、画像が手に入か否かを教えて」
『そこまで言うなら手を尽くしてみるよ』
バーナードは国土安全保障省に連絡し、偵察衛星の写真が手に入る部署にマティルダが示した座標の画像があるかを尋ねる。画像は存在し、幾重もの保安手続きを経たのちにバーナードの下に渡った。
「偵察衛星の画像が来た」
マティルダが興奮した様子で告げる。
「これか。流石は国土安全保障省だな」
「この画像で死体を遺棄した車両を突き止めるのですね」
「そうだ。上手くいけばいいが……」
カーターたちはマティルダがパソコンを操作し、衛星画像を拡大縮小する中で、死体遺棄の現場となった場所に不審な車両が出入りしていないかをよく観察する。
「おっと。何かを乗せたトラックが来たぞ」
すると、そこに荷台に何か袋のようなものを乗せたトラックが。
そのトラックから作業服を着た人間が降りてきて、袋を山中の穴に放り投げていった。そして、そのままトラックに再び乗り込み、現場から走り去っていった。
「オーケー。映画じゃあ、ここから車のナンバープレートを拡大して、それを追いかけることになるんだが……」
「やってみる」
「頼む」
マティルダは画像をズームしながら鮮明なものにし、辛うじてナンバープレートのいくつかの数字とアルファベットが読み取れるようになった。
「オーケー。上出来だ。車種の情報と合わせて、車の所有者を特定しよう」
カーターはウェスタンガルフ州で登録されている、この“連合帝国”製の車両はナンバープレートの断片的情報から判断して1台に絞り込めると判明。
「登録者はエミル・ウォルバーグ。こいつの職業がなかなか笑える。なんと産業廃棄物処理業者だそうだ」
「人間の死体も産業廃棄物というわけ?」
「こいつにとってはそうなのかもな。住所はピジョン郡だ。早速だが、とっ捕まえよう。死体遺棄は立派な犯罪だ」
「オーケー。ハーヴィー、あなたはどうする?」
ここでマティルダがバーヴィーにそう話しかける。
「自分はあくまで市警なんで残りますよ。ただ伝えておくべきことがあります」
ハーヴィーはそう言ってカーターの方を見た。
「カーター。市警にはあなた方が追っているハンニバルとルサルカの犯罪に加担している人間がいるようです。気を付けてください」
「ああ。気を付けよう」
市警にはやはり汚職警官がいる。ハーヴィーはそれに気づいたから、市警を離れ、カーターたちに協力したということを忘れてはならない。
「さて、じゃあ俺たちはピジョン郡へ」
カーターとマティルダはSUVに乗り込み、連邦捜査局の捜査官たちとともにピジョン郡へ向かう。
ピジョン郡は内陸の砂漠地帯にあり、カーターたちを乗せたSUVは土煙を巻き上げて道路を走ってピジョン郡に入った。
それからすぐにカーターたちは保安官事務所へ。
「保安官のデイビスだ。で、連邦捜査局が来たって?」
「そ。この前の大量死体遺棄事件だが、進展があった。エミル・ウォルバーグって男は知っているか、保安官?」
「産業廃棄物の処理屋だろう。そいつが犯人なのか?」
「やつの名義で登録されていた車両が死体を遺棄している現場にあったのを衛星の画像で確認している」
「衛星? いったいあんたらは何を調べているんだ?」
「犯罪に決まってるだろ。とにかくエミルを押さえたい。協力してくれ」
「分かった。SWATは?」
「できれば呼んでくれ」
「オーケー」
カーターの求めに保安官はSWATを動員。
エミルの所有する産業廃棄物処理企業の社屋に向けてパトカーが駆ける。
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