ラジカル・サークル
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──ラジカル・サークル
ルサルカが密入国させる人間には限りがあり、その限りがネットワークに流通するドラッグの限界になる。
残ったドラッグはパシフィックポイントで捌くことを既にマックスたちは決めていた。そのために彼らは必要なものがあった。パシフィックポイントでのドラッグ売買の小売りである。
「半分はルサルカに捌かせる。連中が売春ビジネスと並行してやる」
マックスはノートパソコンの表計算ソフトで密輸されるドラッグの量を管理していた。ゴールデンゲートを経て東部に渡るドラッグと西部のに残るドラッグから、ルサルカが捌く分を引く。
「残りは?」
「俺たちが直接捌く。保険のようなものだ。ルサルカがヘマした場合のな」
「当てはあるのか?」
「ないわけじゃない。というわけで、弁護士先生に会いに行こうぜ」
マックスはそう言ってレクシーとコリンの元に向かう。
「よう、弁護士先生。聞きたいことがあってきた」
「何でしょうか?」
「ラジカル・サークルの連中について教えてくれ」
「ラジカル・サークルですか?」
マックスが尋ねたのは地元のギャングであるラジカル・サークルについてだ。
「ボスの名前とどこにいけばそいつに会えるか。ビジネスで用がある」
「それでしたらパシフィックポイント・キャブの本社にいくといいですよ。そこでルーカス・キングという男性に言えば、ボスに取り次いでくれるます。私もそうやってボスに会いましたから」
「ボスはどんな男だ」
「それが……変声機を使っていたのとガラス越しでして……」
「えらく慎重なやつだな」
「そう思います。しかし、彼の立場を考えれば納得なのです」
コリンがそう説明を始めた。
「ラジカル・サークルはパシフィックポイントの売春ビジネスとドラッグ取引に小規模ながら手を出しています。それはいつルサルカやオブシディアンの怒りを買うのか分からない行為です」
「それは確かにな。下手に顔を出すのは得策じゃない」
「そのようなわけでラジカル・サークルのボスについては分かってることは少ないのです。私が答えるより、一度ルーカス・キングに会ってみたほうがよいかと」
「オーケー。そのタクシー会社の住所をくれ」
「はい」
コリンから住所を受け取ると、マックスとレクシーはスマートフォンのナビにそれを入力してコリンの事務所を出た。
「しかし、タクシー会社がカバーとは面白い連中だな」
「確かに。連中は情報も扱っているって言ってたよな?」
「ああ。それが何か関係あんのか?」
「いや。ただ、タクシーなら誰にも怪しまれずいろいろな場所に行けるなと、ちょっと思っただけさ」
レクシーが尋ねるのにマックスはそう言いSUVを走らせた。
問題のタクシー会社パシフィックポイント・キャブは小さな会社であった。少なくとも建物はそう大きくなく、タクシーは30台から40台ほどが止められる駐車場に4台ほどが待機していた。
「ちょっといいか」
マックスたちは勝手に社屋に入り込み、事務所の人間に声をかける。
「何でしょうか?」
「ルーカス・キングって男に会いたい。コリン・ロウの紹介だ」
「しばらくお待ちを」
事務所にいたオークの女性は内線電話を取ると何事かを言った。
暫くして事務所の奥にある個室から別のオークが出て来た。ラフな格好で陽気そうなオークの男性で、マックスたちを見るとにやりと笑って見せる。
「やあ。俺を雇う気になったのかい?」
「あ?」
「忘れた? あんたらをストリップバーまで送ったのに」
「……ああ。あのときのか」
男がそういうのにレクシーが頷いた
このオークは以前レクシーとマックスを深夜にストリップバーまで送り届けたタクシーの運転手だ。あの時にパシフィックポイントの案内をするから雇わないかということを言っていた。
「お前がルーカス・キングか?」
「イエス。そうだよ。それで?」
「ラジカル・サークルのボスに取り次いでくれ。コリン・ロウからお前がラジカル・サークルのボスの連絡係だと聞いている」
「ああ。ボスに用事かい? 何の用事か聞いても?」
「ビジネスの提案だよ」
ルーカスが尋ね、マックスがそう求める。
「オーケー、オーケー。じゃあ、ボスに連絡しておくよ。2日後にまた来てくれる?」
「おい。そんなに待てるか。すぐ会わせろ」
「落ち着けよ、兄弟。焦ってもしょうがない。ボスだって都合があるんだ。2日後だって早い方だぞ」
「クソ。分かった。2日後にここに来ればいいんだな?」
「ああ。頼むよ」
そして、マックスたちは2日後に再びタクシー会社を訪れることに。
「あたしが思うに、だ」
レクシーが帰りの車の中で告げる。
「ラジカル・サークルのボスの正体を暴けば、あたしたちは交渉を有利に進められると思わないか? 連中が必死になって隠しているものだ。価値はあるだろう」
「俺も同感だが、連中の機嫌を下手に損ねるとビジネスに差し障る」
「脅迫はなしと?」
「連中がこれ以上ふざけたこと言い出したら考えよう」
レクシーにマックスはそう言うと一度ホテルに戻った。
それから2日後、マックスたちは再びタクシー会社へ。
「やあ。ボスが待ってるよ。是非とも会いたいそうだ」
「そいつは何より。待たされただけはあるといいんだが」
ルーカスが笑顔で出迎え、マックスがそう言う。
「まずはタクシーに乗ってくれ。料金は取らないよ」
「いいだろう」
それからマックスたちはルーカスの運転するタクシーに乗り込んだ。マックスは助手席にレクシーはルーカスの後ろに座る。
「ボスは慎重な人なんだ。だから、少しよそよそしくても気を悪くしないでくれ」
「ビジネスの話がちゃんとできれば文句は言わない」
「それはよかった」
ルーカスはレクシーの言葉に満足げに頷くと、タクシーを走らせてパシフィックポイント市内を駆け抜け、ある場所に向かった。
「おい。この方向にあるのは大学だぞ」
「そ。そこが目的地だ」
「マジかよ」
マックスもレクシーもいろいろな場所で取引してきたが、大学は初めてだ。
「ここで待とう。ボスはすぐにくるよ」
ルーカスはそう言い、マックスたちはタクシー内で待つ。
「来た」
そこで1台のセダンが走ってきて、タクシーの隣に止まった。
スモークガラスで中は全く見えず、誰が乗ってきたのかも分からない。しかし、ルーカスは確かにラジカル・サークルのボスが来たと言った。
「ボスだよ。話があるなら降りて話してくれ」
「ああ。だまし討ちがあればレクシーがお前を殺すからな」
「怖い、怖い」
レクシーはルーカスの後ろでいつでも彼の頭を撃ち抜けるようにしていた。
「じゃあ、行ってくる」
マックスはそう言ってタクシーを出た。
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