第31話 それぞれの絆
……俺、ヤレンさんに雷豪剣渡してたんだっけ……
そういえば、と思い出した間抜けな俺。
あの後、ヤレンさんが雷豪剣を使って放った雷撃により、ほぼ全滅した武装集団。
片膝はついたものの、ヤレンさんがマジックリュックからMPポーションを出してクイッと飲み干して自ら回復させてたから、俺の心配は杞憂に終わったみたいだ。
それに、父さん達もその後すぐに合流したらしいし。
倒れた武装集団達が突然現れた大きな鉄檻に囲われた上に、ゼファさんも突然画面から消えたからな。
恐らくゼファさんは爺ちゃんが保護したんだろう。
それを見て映っていたヤレンさんの手の平が消えたから、自分の姿を消し忘れてたのをヤレンさん自身やっと気付いたみたいだ。
こちらはそこまで見てやっと「「「はぁ……」」」と三人共安堵の息を吐いたよ。
でも……ジャンさんもディグレンさんも、見てるだけでもどかしかったんだろうなぁ。
見ている時、二人共拳にかなり力が込もっていたし。……まあ、俺もだけどさ。
ともかく気持ちを切り替えて顔を上げると、スクリーン上では流れる景色が映し出されていたんだ。
ヤレンさんが移動しているんだろう。また街の外へと向かっている様子だったからな。
あ。そういえば……!ヤレンさんが乗ってた魔導キックボードってどうなったのか?って思うだろ?
そこは俺仕様さ!しっかり魔力登録していた人から離れると自動的にその人の元に戻るように自動帰還も付与してたからな!
だから、ちゃーんとあの後ヤレンさんの側に戻って来ていたんだぞ。
なんて脳内説明してたら目的地に到着したんだろう。スクリーン映像ではヤレンさんが魔導キックボードから降りているところだったんだ。
すると画面上に父さんの姿が映り、次いで爺ちゃんとゼファさん、そしてヤレンさんの手も映ったから、全員が透明化を解除したんだろう。
『ヤレン……?ヤレンか!?』
そうなってようやくヤレンさんを認識できたらしく、ヤレンさんに駆け寄って来たゼファさん。
『生きてたか……!やっぱり生きてたんだな……!!!』
『ゼファ、助けが遅れてすまん……!』
スクリーン画面では号泣しながらヤレンさんを抱きしめるゼファさんを、ヤレンさんもまた涙を流し抱きしめるという感動の再開場面が映し出されたんだ。
但し、音声のみ。だって、映像はゼファさんの服の色一色になったからなぁ……別の角度から見たかっただけにちょっと残念。
そう俺が思っていると、その事にヤレンさんが気付いたんだろう。
一旦ヤレンさんがゼファさんから離れて、ニューデジカメを父さんに渡したから、俺達でもヤレンさんとゼファさんの様子が見れる角度に映像が変わったんだ。
すると感動の場面は終わっていて、ゼファさんがヤレンさんの肩を掴んで頼み込んでいたんだよ。
『嵌められたんだ!チェルノ家に見つかった!俺は逃げ足が速いから囮になったが、まだアイツらが街で隠れてる!助けて貰っておいて言う事じゃないが、また俺を街に戻してくれ!』
『落ち着け、ゼファ。気持ちはわかった。助けには俺が行こう。場所を教えてくれ』
『頼む!頼む!早く、早く戻らないと!アイツらが!』
『ゼファ……』
落ち着くように言われてもまだ興奮状態だったゼファさん。助けに行くと言っているヤレンさんに本当に必死に頼み込んでいるんだぜ。
なんかさ……今までどれだけ必死に逃げて、生きていたかが俺でもわかったよ。
ふと気になって横を見ると、ジャンさんもディグレンさんも俺以上に悔しかったんだろうなぁ。
二人共表情が強張っていて、また拳に力が入っていたんだぜ。
そんな重い雰囲気が漂う中、画面上で動いたのはやっぱり爺ちゃん。
『なあ、ゼファさんとやら。腹は減ってないか?』
マジックリュックから出したんだろう。手には母さんが作ったスープが入った水筒を持っているんだ。
『大変な時程食わないで頑張るもんだ。どうだ?まずは飲んでから助けに行っても遅くはないだろう?』
穏やかな声でトポポポポと木のマグカップにスープを注ぐ爺ちゃんを、ゼファさんは改めて認識したんだろう。ヤレンさんと爺ちゃんを交互に見て動揺していたんだ。
ヤレンさんが『俺達の恩人だ』と説明した時に、やっと自分も助けられたのを思い出したのかガバッと頭を下げたゼファさん。
『済まない!まずはあんたに礼をすべきだったのに、礼もせずに取り乱してしまった……!』
『なぁに、構わんよ。むしろ礼を言うくらいなら、このスープを飲んでくれないか?大丈夫だ、ほれ。何も悪い物は入っていない』
ゼファさんが安心して飲めるように、自分で先に毒味をする爺ちゃんがニッと笑って『美味いぞ?』と差し出すと……ゼファさんも匂いに釣られたのか、頭を上げて爺ちゃんからスープ受け取っていた。
そして、ゆっくりと口に運んで一口飲むと、目を閉じてじっくりスープを味わうゼファさん。
『………美味い……!……あったかい、な……!』
また涙を流し鼻を啜りながら一口一口飲んで行く姿に、爺ちゃんは『まだたっぷりある』と笑顔で安心させていたんだ。
そんな感動の場面から一転して突然地面の映像が映ったと思ったら、撮影者の父さんがゴソゴソと何かをしている音が聞こえて来たんだよなぁ。
ちょ!父さん、今いい場面……!
そんなもどかしい思いで映像を見ていると……ようやく映像は地面から離れ、映し出されたのは転移フラフープ。どうやら父さんは今いる場所を魔力登録しているみたいだな。
そんで、父さんは俺達に依頼をして来たんだ。
『洸、凛を呼んで来てくれ。此処の場所をそっちの転移フラフープにリンクさせたら、ディグレンとジャンはゼファを迎えに来て欲しい』
父さんのその言葉に顔を見合わせる俺達。
「俺、凛を呼んで来る!」
「俺はその間に一応装備をしておく」
「俺は上から毛布を持ってこよう」
即座に凛を迎えに行くと動き出した俺に、ディグレンさんもジャンさんもそれぞれ出来る事をし始めたんだ。
それを聞いて頷いて走り出した俺は、一つ決意をする。
……絶対、拠点内の連絡ツールを作ってやる……!トランシーバーか?魔石通信か?お!……魔石通信行けるんじゃね?
なんて思いながらも全力でダッシュをし、世界樹から出て拠点に向かい、キッチンに飛び込んで行く俺。
「凛!頼む!世界樹に来てくれ!母さんとケイトさんはありったけの料理を持って世界樹に来てくれたら助かる!……あっちで父さん達が元村人を保護した!!!」
出来るだけ簡潔に状況を伝えつつ急いで凛の腕を取る俺に、キッチンで仕込みをしていた母さんと凛がすぐに状況を理解してくれた。
「お兄ちゃん、行こう!」と逆に凛に腕を引っ張られキッチンを出て行く俺達の後ろからは、「ケイトさん、お鍋ごと持っていきましょう」と言う母さんの声が聞こえたんだよ。
……家族ってやっぱりこう言う時って力強いよなぁ。
走りながらついニヤける俺の横で、「変なお兄ちゃん」と不思議そうに言う凛。うん、気にすんなって!
バタバタバタバタッと走って戻って来た俺達を、既に準備を整えて待っていたジャンさんとディグレンさん。
「お待たせ!早速、リンク、するね!」
息を切らせながらも即座に作業に移る凛の横で、スクリーンを見ながら息を整える俺。
あっちではゼファさんが『俺も連れて行ってくれ!』と父さん達に頼み込んでいる様子が映し出されていたんだ。
『ゼファ。お前の気持ちはわかるが、俺達で動いた方が速い。悪いが待っていてくれないか?』
『いやだ!俺は、もう仲間を置いて行くのは絶対にしたくない!』
どうやらスープを飲んで力と気力を取り戻したらしいゼファさん。ヤレンさんが説得しているけど、なかなか聞き入れてくれない様子。
こりゃ、こっちに連れて来るのも大変そうだな……
そう思った俺は、毛布に鎮静化と浄化も付与させようと思ったんだ。
「ジャンさん、ちょっと毛布貸して」
呼ばれたジャンさんも、俺が何かをしようとしていたのがわかったのかすぐに毛布を渡してくれたし。
毛布を受け取って付与をかけ終わると同時に、「お兄ちゃん良いよ!」と言う凛。オッシ!ナイスタイミングだ!
ジャンさんとディグレンさんに毛布の事を説明して渡すと、二人が順に転移フラフープの中に消えて行った。
『な!!!ディグレン!?それに……ジャン?ジャンなのか?!』
スクリーン上では突然現れた二人にゼファさんがやっぱり驚いていたけど、二人が無事に合流したなら説得は大丈夫だろうと予想した俺。
「お兄ちゃん、ベッドあと何個必要かなぁ?」
凛もそう思ったんだろうな。父さん達が必ず連れ帰って来る事を確信して俺に聞いてきたんだ。
「それは幾らあっても良いだろ。それに、しばらくは世界樹の五階を拠点にした方が来た人達が落ち着くんじゃね?」
まあ、勿論俺もそこは心配してないからな。来た人達を癒す方を優先する方が良いか。
なんて考えながら階段に向かうと、一階から母さんとケイトさんの呼び声が聞こえて来たんだ。
「洸〜!凛ちゃ〜ん!転移フラフープ持ってちょっとこっちに来て手伝って〜!」
「リンちゃん!コウ君!トーニャもゲンちゃんも起きたの!ちょっと来て貰っていい〜?」
どうやら母さんたちは一階で村人達を迎える事にしたらしい。まあ、一階の方がトイレも温泉もあるし……その方がいっか。
凛と顔を見合わせて「今行くー!」「はーい!」と返事をする俺達。
ゼファさん達絶対弱っているだろうし、出来るだけあったかく迎えてやりたいよな!
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次回更新は10/7予定でしたが、予定を見直しにより10/8に変更させて頂きます。現在変更がありすぎて申し訳ありません🙇🏻♂️
読んで下さってありがとうございます!
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