第30話 再びロックシュリーの街へ

『親父、これって会話出来ないんだよな?』


『らしいぞ?洸が「しまった!」って言っておったわ。まあ、携帯があるから構わないと思うがな』


 現在、世界樹スクリーン画面に映っている爺ちゃん。ニューデジカメを持っているのは、カメラオタクの父さんなんだけどさ。


 案の定、次の日には出発となった父さん達。今は、森の中で休憩中。


『シゲル……そろそろ貸してくれないか?』


 ヤレンさんが呆れたように父さんを見ているけれど、それもそのはず。だって、俺ヤレンさんに持って貰うようにお願いしたんだけどなぁ……?


『いや、待て!これはまだ検証が必要な案件だ!しっかり元所有者の俺が確かめた上で、最大限有効な使い方を———ああっ!』


『……全く。このカメラ馬鹿に付き合っていたら日が暮れてしまうわ』


 画面がブレたって事は、どうやら爺ちゃんにカメラを取り上げられたであろう父さん。


 ……父さんよ、何やってんのさ……


 そんな呆れる俺が何処にいるのかというと、デジカメを通して父さん達の様子が見れる世界樹の四階のスクリーン部屋にいるぞ。


 隣には、ジャンさんとディグレンさんと凛、珍しくケイトさんと母さんもいるんだぜ。


 たださ……


「あら〜繁さんってば悪い癖出てるわぁ」


「まあ。やっぱり、男性って夢中になるとそうなるんですね」


「え?ケイトさん、ジャンさんもなの?」


「そうなのよ、リンちゃん。コウ君から貰った魔剣がよっぽど嬉しかったらしくてね。よく暇さえあれば手入れしているんだけど、手入れしている時は呼びかけても返事もしてくれないのよ?」


「凛ちゃん。いーい?男は見かけだけに囚われちゃ駄目なのよ?そうした姿を見せた後のフォローが大事なの」


「ジャンはその後、ちゃんと私との時間をとってくれるのよ?」


「繁さんも私と一緒にお茶をしてくれるわよ。凛ちゃんもそんな男性を見つけられたら良いわねぇ」


「うん!そうだね!」


 ……床に直接座る男性陣の後ろで、凛にテーブルと椅子を出して貰い、お茶会よろしくクッキーやジュースや紅茶で寛いでいる女性陣。


 しかもさぁ……母さんとケイトさんは毎日会って話しているのに、話すネタが尽きないって凄くね?


 でもって、俺らの後ろでペチャクチャ話しているもんだから、気になって仕方がないんだよなぁ……


 因みに、ジャンさんも聞いていたのか目線が天井に行ってるし、ディグレンさんは何か考える人の姿になっていたし……二人も気になっているみたいだけどさ。


 まあ、良いや。俺もジュースとクッキーもらってくるか。


『おお!上手くいきおったわ!』


 立ち上がって母さん達から貰ったクッキーを口に入れた時、画面から爺ちゃんの声が聞こえてきて振り返ってみると……


『ほほう……!ヤレンの[遠見]はこう見えるのか』


『これ更にズーム出来るんじゃないか?』


『ずーむ?とは?』


 お!やっぱりすげえ!


 感動する俺が見ているスクリーンに映し出されていたのは、なんと森の境目の景色。木々の隙間から見えるのは草原だ。


 でもって、父さんがヤレンさんにデジカメを持たせたまま画面を操作したんだろうな。


『おお、道が見えるな』


 覗き込めなかった爺ちゃんにもヤレンさんは見せているんだろう。スクリーン映像には街道らしき道が見えたんだ。


 『うん、こりゃ良いな。だとすると、高度を上げて街を上から撮影するだけで良さそうだな」


 父さんは、この先の行程を決めたらしい。街には入らずにヤレンさんの[遠見]とズームで記録を優先するみたいだな。


 それに……よし!ちゃんと忘れずにやってくれてる。


『親父、確か地面に置いて魔力を流すだけで場所を記憶するんだっけ?』


 ヤレンさんが[遠見]とズームを取り消し、今度は近くで地面に転移フラフープを置く父さんを撮影してくれてる。


『ああ、それか?洸が確かそう言ってたな。魔力を流すと、使用者だけに確認出来る画面が見えるって話だが?』


『おお!こりゃいい!登録出来たし、選択画面が出て来た!』


 画面に映し出される父さんの反応を見て、思わず腕組む俺。


 へっへっへ!俺だって考えていたんだぜ。


 また移動する手間を無くす為には、転移フラフープの改良が急務だってさ。そうすりゃ、時間短縮とついでに父さん達も日帰り出来るようになるからなぁ。


『ちょっと試してみるか!』


 なんて考えていたら父さんが遊び心を出したらしい。地面においた転移フラフープの中に入り、行き先を設定したんだろう。


「お!皆揃って見てくれてたのか?」


 するとすぐに後ろから父さんの声がしたんだ。母さん達の後ろにもう片方の転移フラフープを準備していたからな。


「あら、繁さん。お帰りなさい」


「お父さん、お帰り!」


 帰って来て早々に母さんと凛に迎えられて、デレデレの表情の父さん。その表情に一瞬引いたけどさ……俺も声をかけないとな。


「父さん、どう?まだ改良点はありそうか?」


「いや、充分過ぎるだろう。今はあっちにフラフープを残しているが、全員戻ってくる時はあっちのフラフープに触ったまま転移すればいいんだろ?」


「そ。で、転移フラフープは置いて魔力を流した土地を記憶するから……後は凛の力も借りて、こっちにある転移フラフープにも記憶をリンクさせればオッケー!そうすりゃ、どちらからでも記憶させた土地に瞬時に行けるってわけ」


「そうか!ありがとうなぁ、洸!」


「うわっ!髪がぐしゃぐしゃになるって!」


 俺は思いっきり頭を撫でられて、相変わらず激しい父さんの親子のスキンシップに抵抗する。


 ……まあ、褒められて嬉しくないか?って言われたら違うけどさ。まあ、俺の年って色々難しいんだよ。


 『繁よ、そろそろ戻って来い。出発するぞ?』


 父さんが抵抗する俺を構い倒そうとしていると……俺達の様子が見えていない筈なのに、タイミングよくスクリーンから爺ちゃんの声が聞こえて来たんだよ。


 爺ちゃん、ナイス!


 ようやく俺から離れ「仕方ない……」とまた転移フラフープに向かう父さんに、母さんと凛が励ましの声をかける。


 「今日は繁さんの好きなつくねと青椒肉絲を作ってますからね」


「お父さん、無茶はしないでね!」


 俺もまた手を振り、もう片方とリンクを終わらせた凛が「いいよ」という声で、転移フラフープの中にいた父さんがスッと消えた。


 で、スクリーン上にデレデレした父さんがまた映し出された訳だけど……締まらねえなあ、父さん。


『繁よ……ま〜た凛か洸にでも構っておったんだろうが、気を引き締めろよ?』


『わかってるって!』


『それじゃ、俺は先に魔導キックボードで先行しておこう』


 まだニヤついている父さんを爺ちゃんが注意していると、ヤレンさんが即座に動き出したんだ。


 おそらく首からニューデジカメを下げているんだろう。さっきより視点が下がった状態で景色が動き出した。


 そう。今回は爺ちゃんが改良型バイク、父さんとヤレンさんが魔導キックボードで移動しているんだ。


 因みに、魔導キックボードも改良しているぜ!


 遠征にも使えるように[魔素自動回復]付与つけたからな。起動と停止だけ魔力は使うけど、普通に運転していれば本人の負担はない筈!


 そう自負していたら、隣のジャンさんから声をかけられたんだ。


 「コウ、いつの間に魔導キックボードまで改良してたんだ?」


 「へっへっへ!昨日、ジャンさん達が父さんと爺ちゃん説得しに行ってる間だな。全て改良済みだから、ジャンさん達も自由に使って!」


「そうか。コウの支援は凄いな」


 ハンズアップする俺の肩をポンっとジャンさんに叩かれて、ちょっと自慢気な俺。


 同意の意味でだろうな。反対側の肩もポンとディグレンさんも叩いてくれたし。


 なんて俺がニヤつく顔を抑えていると、どうやらスクリーン上で動きがあったみたいだ。


『街に近づく前に、透明化を使った方がいいと思うが?』


 先行していたヤレンさんが止まり、後から追いついた父さんと爺ちゃんに提案をしている。


『ああ、それは良いな。洸の改良のおかげでペンダントをつけている者同士は見えるようになっているからな』


『触っている物や身につけている物まで消えて見えるらしいからなぁ……帰ったら洸を思いっきり撫でてやるか』


 父さんの言葉に俺は「げ」と声を出したけど、実は爺ちゃんが言い出したんだよなあ、アレ。お互いに見えるようにはできないかって。


 だから父さんが帰って来たら、スキンシップから全力で逃げよう……と決意したよ。


 って、アレ?後ろが静かだと思ったら、女性陣はどうやら移動したらしい。時間的に料理の仕込みに行ったんだろうなぁ。


 そう考えてしばらく黙って移動画面を見ていると、遠くにロックシュリーの街の城門が見えて来たんだ。


 お?そろそろ到着か?ってヤレンさん、急に上昇したぞ?


 スクリーン上の画面で周りの木々が段々と下に行くのを見て、[遠見]を使おうとしているんだろう、と解釈した俺。


 すると、俺達にも伝えようとしてくれたんだろう。スクリーン上の映像が急速に動き出して街の中の景色が見え始めたんだ。


 その内に画面の端で一人の人を集団が追いかけている様子が映り、ヤレンさんも気がついて焦点をそこに合わせたらしい。


 映像がズームアップされた突如———両脇のディグレンさんとジャンさんがバッと立ち上がったんだ!


「「『ゼファ!』」」


 同じく画面上で叫び声を上げたヤレンさん。すぐに魔導キックボードに思いっきり魔力を込めたんだろう。


 最速で動くヤレンさんによって、ズームアップ映像は一瞬だったけど……追いかけられていたのは一人の青年獣人。


 今はどこを飛んでいるか画面上確認出来ないけど、俺が思うにヤレンさん絶対姿消してないぞ!!!


 慌てて母さんから預かっていた携帯で爺ちゃんに連絡をつけると、あちら側も俺達に連絡しようとしていたらしく、すぐに応答してくれたんだ。


『洸!ヤレンはどうしたんだ?!透明化も使わずいきなり移動したが!』


「爺ちゃん!それが……!ヤレンさん[遠見]とズームアップ使って街の中を見てたんだけど、一人の獣人が集団に追われている姿が見えてからヤレンさんが動き出した!恐らく元村人を助けに向かったんだと思う!」


『そうか……!わかった、ヤレンの魔力は俺が追える!洸はそのまま携帯を繋げたまま状況を教えてくれ!』


「わかった!……って、ヤレンさん速え!城門を超えて街に入った!」


『わかった!繁!俺達はきっちり姿を消して行くぞ!』


『ああ!思いっきり魔力使って追いつくぞ!親父!』


「二人共気を付けろよ!」


 なんてやりとりしている間にも、魔導キックボードに乗ったヤレンさんがゼファと呼ばれた獣人さんに追いついたらしい。


 その獣人さんと集団との間に滑り込み魔導キックボードから飛び降りると、剣を抜いて武装していた集団達に切り掛かって行くヤレンさん。


 魔導キックボードはその反動で上空に上がって行ったけどさ。


 やっべぇ……!スクリーンから聞こえてくるヤレンさんの息が荒すぎる……!マジで魔力思いっきり込めちゃったんだな……!


 頼む!父さん、爺ちゃん!早く追いついてくれ!!!


   ————————————————


 次回更新10/3予定です。……おお!もう次は10月に入るんですねぇ。いつも読んで下さりありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る