第29話 世界樹秘密基地完成!
「なあ、凛……あれは良いのか?」
「ん?お父さん楽しそうだよ?」
俺と凛の視線の先には、嬉しそうに写真を飾って行く父さんの姿。しかもまだそれだけあったんだ……?と疑問が湧くほどの写真の量。
「父さん……スーツケースに入れて持って来たけど、母さん曰くあれで多分半分もいってないんだってよ……」
「凄いねぇ。いっぱい撮ってくれてたんだね!」
凛よ……!その綺麗な心のままでいてくれ。
妹の純粋さに感動した俺の目の前では、鼻歌歌いながら写真を飾っていく父さんの姿がある。
でもって、父さんの首にはあれだけ異世界に持ち込む事を苦悩していた愛用の一眼レフカメラがぶら下がっているんだぜ。
そう。結局父さん、一眼レフカメラこっちに持ち込んでいるんだよ。
「洸にイジられなければ、どちらでも使えるんだ!」って俺に向かって嬉しそうに宣言してさ。
……俺が悪戯しているかのような表現は引っかかるけど、まあその通りなんだよなぁ。
という事で、俺の手には父さんが余り使わなくなった初代のデジカメがあるんだ。
悔しいからこれを高性能にして、父さんに見せつけてやる予定なんだけどさ。
「凛。そういえば、母さんの部屋はないのか?」
母さん好きの凛にしては珍しいな、と思って聞いてみたら……
「村の人達が来ても良いように……凛ちゃん、ちょっと頑張ってくれる?」
そう凛に言って、自分の部屋の代わりに世界樹の近くに家を立てる事をお願いしていた母さん。流石だよなぁ。
勿論、これには父さんも関わっているぞ?今は父さんの趣味の時間なだけであって、その後手伝う予定なんだとさ。
一階に居る爺ちゃんも本当は趣味の時間のようなものだったけど……
「洸よ。この温泉に付与をかけてくれんか?」
ヒョコっと顔を出して俺を呼んだかと思えば、どうやら爺ちゃんもこの温泉を連れて来た村人に開放する予定らしい。
という事で俺も協力して、汚れを落とす浄化の湯、傷を癒す治癒の湯、心のケアをする癒しの湯を作ったんだぜ。
しっかり男女別に、仕切り壁を凛にお願いしていた爺ちゃんも流石だぜ。
そんな二人の行動を見て思うけどさ。『助ける事』ってただ状況から救い出すだけじゃないんだよなぁ。
その人達を支え続ける力がなくちゃ、助けられた人達も恐らく困る事になるって爺ちゃん言ってた。
ついでに、その人達自身で歩んでいける力を奪ってもいけないんだってさ。要するに、やり過ぎる事はお互いの為にならないらしいぞ?
だから、凛も父さんも作るのは村の集会場所だけにするんだって。俺からすると、もっとやっても良いと思うんだけどさ。
……そんなもんなんだろうなぁ。
そんな事を思いながら、俺と凛は世界樹の四階にいるジャンさん達の所へ向かって階段を上っている。
「ジャンさん、ディグレンさん、ヤレンさん!差し入れ持って来たぞー!」
「なんと!カツサンドと厚切りベーコンサンドとポテサラサンドだよ!」
階段を登り切り、中に居る三人に声をかける俺と凛。
「ああ。二人共ありがとう」
……ってアレ?ジャンさんは振り向いてくれたけど、残りの二人が食いついて来ないぞ?
「あ!もう画面を四分割にする方法見つけたんだね!」
その理由を凛が先に気付いたらしく、俺もスクリーンを見たらさ……
「ん?これってロックシュリーの街じゃね?」
映し出されていたのは、この間行ったばかりの街の様子。そういえば、街の中にも結構木があったもんな。
未だ振り返らないディグレンさん達の後ろから覗き込んでみたら、二人は右下の画面をジッと見ていたんだよ。
「お兄ちゃん、ここってお兄ちゃん達が商売したところ?」
「いや……ちょっと違うような……?」
二人が見ている画面は確かに市場らしいんだけど、この間と違って、何か雑然としていたんだよなぁ。
……もしかして、スラムに近い市場なのか?と思ってみていたら、何かが画面の中で動いた時に二人が同時に声を上げたんだ。
「やはり……!」
「ゼファか!」
一瞬の事だったのに、何が起こったのかがわかったみたいだ。獣人の動体視力は凄え……!
「え?二人共今のわかったの?」
ヒョコっと凛も覗き込んで二人に聞くと、ようやく俺と凛が来た事がわかったみたいだな。
「!!……ああ、リンとコウか」
「済まない……集中しすぎていた」
振り返って凛の頭にポンと手を乗せるディグレンさんと、俺に苦笑しながら謝るヤレンさん。
「スラム街の近くの市場を見れるようになったんだが、丁度身なりの良い男が歩いていたのを見つけてな。もしかして……と思って集中していた」
ディグレンさんがヒョイっと凛を膝に乗せてから、俺の方を向いて説明してくれたけどさ。
……凛さんや。自分の状況をわかっているかい?「えへへ」と笑っている場合じゃないぞ?お兄ちゃん、まだ許しませんよ!
「……凛。マジックリュックからサンドイッチ出してくれるか?」
「はーい!」
凛にリュックを差し出すと、素直な凛はすぐに立ち上がって取りに来てくれる。
はいそこ。残念そうにしていても、俺は知りませんよ。
ディグレンさんの表情に気付いてくれるなよ?と凛に思いの中で念を押し、俺は父さんから渡されたデジカメを持ってスクリーンに近づいて行く。
前回のあの出来事から……ディグレンさんの凛に対する態度が変わった事をヤレンさんにも聞いたんだけどさ。
「銀狼種は、自分の相手だと直感した相手を囲い込む」
苦笑しながら教えてくれた言葉は、流石に俺も聞き流せなかったからなぁ。
一応、改めて凛の年齢を言ったけど、どうやらこちらの世界ではそんなに珍しくないらしいんだ。
だもんだから、父さんに相談して二人で頭を抱えちまったよ……まあ、結局は凛本人の気持ちを尊重するのは変わらないけど、兄の立場からは言わせて貰えば面白くないわけ。
少なくとも凛がディグレンさんを好きになるまでは、とことん邪魔をする次第であります!
つか、俺誰に向かって宣言してんだか……
改めて妹離れ出来ていない自分にため息を吐きつつ、スクリーンの前まで来てドカっと胡座をかいて座る俺。
さあて……!初代デジカメちゃんは、異世界産デジカメに生まれ変わって貰いますか!
因みに、父さんからはちゃんと許可もらっている事は言っておこう。愛用の一眼レフには絶対触らせてくれなかったけどさ。
「……[世界樹同調]、[魔素充填]、[衝撃耐性]、[水中耐性]、[高画質ズーム機能]、[手ブレ自動修正機能]、[ライブ機能]、[音声集音]付与っと……」
思いつく限りの付与を試してみると全部で300くらい魔力持ってかれたけど、デジカメが淡い青の光を放ったから成功したみたいだ。
「お兄ちゃん。今度は何を作ったの?」
三人にサンドイッチと飲み物を給仕している凛が丁度よく聞いて来てくれたから、ここは体験者になってもらおうではないか!
「凛。これを持って世界樹の外に行って見てくれないか?使い方は、スマホと同じタッチパネル式だから分かる筈だぞ?」
そう説明しながら凛に俺特製のニューデジカメを渡すと、すぐに慣れてライブ映像にして俺を映す凛。
「あ!お兄ちゃんが写ってる!」
今まで映し出されていた四分割の画面が切り替わり、俺のドアップが映し出されたスクリーン。
「いやいやいや……俺のドアップって誰得だよ。あ、スクリーンの方にも付与しないといけなかったな」
声が聞こえて来ないのに気がついて、スクリーンにも[デジカメ同調]/[音声出力]/[遠隔]付与をつけたんだよ。
勿論、付与が成功したスクリーンからは、「「どうだ?」」という俺の肉声とスクリーンからの音声が聞こえて来たさ。
ふふふふふ……流石、俺。
それを聞いた凛は「実況しながらみんなの様子を映してくるね!」と部屋から楽しそうに出て行ったんだ。
「また伝説級の魔導具作って……」
「面白そうだな」
残された部屋の中では、簡単に魔導具を作り出す俺にヤレンさんは呆れていたし、坂木家の力に慣れて来たのか笑っていたジャンさんの姿があったけどさ。
ん?ディグレンさんは?ってか?
あの人は当然というか……早速スクリーンから聞こえて来た凛の声と凛が映す映像を見てたよ。まあ、それくらいなら俺だって何も言わないからな。
しかし……凛の奴、遊んでいるなぁ。
『突撃リポーターの坂木凛です!只今、世界樹二階の坂木繁フォトギャラリーに来ています!見て下さい、この写真の数々!坂木家の歴史が分かるように展示されています!
あ!作業中の坂木繁さんを発見!ご本人に登場して貰いましょう!』
なんて言いながら、父さんにデジカメを向ける凛。
父さんも父さんで、初めは不思議がっていたけど……凛が俺仕様のデジカメである事を説明すると、「ああ」と声を出して理解した様子。
ゴホンッとわざとらしい咳をして、今している作業を説明し始めた父さん。
『えー……ここ[SHIGELフォトギャラリー]では俺と遥との出会いと結婚、洸の誕生、親父の初孫記録、凛の誕生、仲良し兄妹と年毎の家族記念写真を展示しています。……言っておくが、ディグレン。お前は入室禁止』
見事な娘主義を態度に表す父さんに、やっぱりそうくるか……と納得の俺。その隣では、ディグレンさんが思いっきり不満気な表情をしていたけどさ。
凛は『仲間外れはだめでしょ!』と叱っているけどウダウダ言い出したら止まらない父さん。
そんな父さんの様子に、凛も仕方ないと思ったんだろうなぁ。『凛、どこにも行かないよ?』と優しい声をかける我が妹。
その様子に、妹よ……出来たらそのままでいてくれと願わずにいられない俺。
敢えて隣のディグレンさんの様子はスルーさせて貰ったけどさ。
ヤレンさんやジャンさんが「「ブフッ」」と声を出して笑った事から、ディグレンさんの表情を察してくれ。
その後突撃リポーターの凛は、『突撃取材!世界樹に温泉施設が登場!』とか、『突撃!アイドル訪問』とか言って爺ちゃんやお世話をしていたケイトさんにカメラを向けてたよ。
因みに、アイドルであるトーニャと源はしっかり眠っているところを映し出されていたなぁ。その仲良し映像には、ほっこりしたぜ。
で、最後に料理の仕込み中の母さんに『突撃!我が家の晩ごはん!』とか言って取材してた凛。
おお!やった!今日は角煮だぜ!
角煮は凛も好物だからなぁ。『お母さんの手伝いするのでリポート終了します!』と言ってライブ映像は急遽終了したけどさ。
ま、まあ……とりあえず成功だな!
うんうんと頷く俺が、ニューデジカメの用途について三人に説明したら……「シゲルとチョウジュウロウに出発の催促をして来る!」と走りだしたヤレンさん。
ジャンさんとディグレンさんも結果をすぐにでも知りたかったのか、ヤレンさんの後を追って行ったんだよ。
その様子に、こりゃ明日には街に再び出発だな……と確信した俺。
そんじゃ、夕食まではまだまだ時間があるし。俺も自分の部屋に行ってサポート魔導具作って来るかな。
————————————
次回更新は9/29予定です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます