第15話 探索に必要なもの

 「ちょ、ガラス作れる人、ウチに居たっけ?」


 凛と父さんの合作のピザ屋バイクが出来たのは、その日の夕方。で、初見の俺が見て言った言葉はコレ。


「あのなぁ……父さんの建築スキルだってチートなんだぞ?建築に必要な素材が作り出せるんだ」


「でも、このガラスに凛の出した樹脂入っているんだよー!」


 俺の言葉にがっくりとした父さんと、自慢気な凛は俺の知らない情報を教えてくれたんだけどさ。


 爺ちゃんは完成したピザ屋バイク(ん?コレもうバイクで良くね?)に跨り、マジックで「安全第一」と書いたヘルメットを被って「どうだ?」とか言ってる。


 うん、ツッコミどころ満載だわ。


「……見た目はそれらしく出来ていて凄えよ?ルーフ付きでちゃんとフロントガラスがあって、高さもあるし、二人乗り用の座席まであるし」


 あえてツッコミを入れずに、まず素人がここまで作った事を褒める俺。いや、だって木製のルーフバイクって普通に凄えよな?


「だけど、コレで完成じゃないだろ?」


 確認の為に口にした言葉に「「当然(だよ)!!」」と二人がツッコミを入れて来たけど……そんな俺に来い来いと手招きする父さん。その隣で、凛は木製のヘルメットを作って、『安全第一』とマジックで書き込んでいる。


 ……待て。その言葉を必ず入れなきゃいけないのか?


 ま、まぁ、謹慎が解けたみたいなので、何も言わずに庭に出て行く俺は、あるものを持って父さん達の側へ駆け寄る。


「コウも来たか」


「ジャンさんずっと見てたの?」


「見たことのないものだからな。出来て行く様が面白いぞ」


 大きな石に座りながら尻尾を振って本当に楽しそうにしているジャンさん。そんなジャンさんの足元には、これまた楽しそうな源。


 「ん?まだやるのか?」


 そう言いながら、ポーンとボールを遠くに投げるジャンさんと嬉しそうに「わんッ!」と吠えてボールを追う源。


 ……うん、あれはしばらく遊んで貰おう。


 なんせ、源の遊びは飽きるまでが長い。これはジャンさんに悪いが、とことん源を遊ばせてほしい。


 そう思って父さんと凛の側に行くと、サイドミラーを作って取り付けている最中だった。


 「へえ、凄えな。こうなるとまたバイクらしくなって来た」


 「でっしょー!後は、ライトもつけたいし、ワイパーだって取り付けたいんだけど……仕組みがわかんないの」


 俺の感想に嬉しそうに反応するも、現時点で仕組みに悩んで止まっている凛と唸っている父さん。


 「んなの、簡単じゃん。俺がガラスに耐久性と常時クリーンの魔法付与すりゃ良いんじゃね?」


 サラッと解決策を言ったら、父さんがガバっと顔をあげて俺の頭をワシワシ撫でて来た。


 「流石、洸!現役の世代だな!」


 …父さん、何の現役世代だよ?厨二病の話なら俺現役じゃなくても良いぞ?


 「っだー!父さん、髪ぐしゃぐしゃにすんな!っていうか、爺ちゃんは何やってんだ?って、それ……金じゃん!」


 「ん?何かに使えないかと思ってなぁ」


 「え?なんで?なんで、爺ちゃんが金の塊持ってんのさ?」


 「いや、俺も何か助けにならんかなぁ、と思って久しぶりに自分のスキルを見たらな?金(ゴールド)作成ってあって、やってみたんだ」


 「爺ちゃん、サラッとすごい事してる!」


 「お?親父、遂に金作れたんか?」


 え?父さんなんで平然としてんのさ?金だぜ、金!


 余りの事に口をパクパクさせている俺の様子を気にせず、父さんが爺ちゃんに確認している。


 「ん?洸は知らなかったのか?温泉の成分の中に金があるんだぞ?ほれ、最近だと東北の温泉で見つかったとか言ってただろ?」


 「知らねえって!海の成分に金が含まれているのは知ってっけどさ」


 「まあ同じ政府機関が見つけたそうだし、そんなもんだと思っておけ。しかし……金は錆びにくい金属だし、バイクの補強に良いな」

 

 父さんは良い素材をオモチャを見つけたかのようにニヤッとして、爺ちゃんに金の作成を出来るだけ頼んでいる。


 しかも、凛は凛で凄えものをまた作り出していたんだ。


「お兄ちゃん、見て!ゴムの木を生えさせたの!それでゴムの成分だけ取り出してみたんだ!バイクが着地する時のクッションにならないかなぁ?」


「でかした!流石、我が娘!色々使えるぞ!」


 話を聞いた父さんが、凛をガバっと後ろから抱きしめている。


 ……ウチの家族ハンパねえわ。


 負けてられねえって思った俺は俺で、持って来た物を皆んなに見せる。


「あのさ、俺もコレ作ったんだけど……」


「なんだ?俺の釣りの時のベストか?」


 爺ちゃんが1番に反応するのも当然だ。だって、コレ爺ちゃんの古着だもんな。爺ちゃん、多趣味だから物持ちなんだ。


「そ。防具代わりになる物って思ってさ。これノースリーブで首までファスナーあるし……バイク乗る時、胸部と背中を守るのに良いなって思って、刃物や打撃の攻撃無効付与つけたんだ。……爺ちゃん、勝手に持ちだしてごめん」


「いや、構わんよ。お前なりに考えてやってくれたんだろう?ありがとうな」


 ちょっとだけ黙って持ち出した事に気が引けて、下を向いていた俺の頭に、爺ちゃんはポンと優しく手を置いて慰めてくれた。


 ……やっぱ、爺ちゃんって懐広いよなぁ。


 「俺の釣り好きが役立って何よりだ」とかっかっかっと笑っている爺ちゃんのベストが、四着あったのには感謝だったよ。


 「洸のおかげでいいもんがまた作れたな。ついでに良いもん思い出したわ」


 父さんも俺の持って来たベストから案を得たのか、スキルでバイクに何かを足したと思ったら……バイクのタイヤの代わりに、ホバー船の下についているようなゴム素材の物を取り付けていたんだ。


 お、凄え!やっぱ、ここまで出来てきたら浮かせてみたくなるよな!


「父さん!溜め込んでた魔石も持って来たから、試しに浮遊付与つけさせてくれよ!」


「おお、頼むわ!」


 ノリ易い父さんに大きな魔石を渡してハンドルの真ん中につけて貰い、俺は付与魔法をかけて行く。


 魔石の補助はあるとしても、運転手の魔力で動くようにして……使用魔力は10分の1程度に抑えて……浮遊付与っと。


「父さん、俺で試していい?」


「ああ。残念だが、調節出来るのは洸だけだからなぁ」


 あ、凛も爺ちゃんも残念そうにしてる……ヤベ。本来なら制作者が乗りたいよなぁ。


 だが、しかし!俺しか出来ない事なんだ!と言い聞かせて、魔石に魔力を少しずつ流してみる。


 すると、ふわっと上に浮上がり……


「やったぁ!」「おおお!」「浮いたぞ!」「凄い……!」と皆から喜びの声が上がったけどさ。



 「……上に行くだけか?」


 「親父、言ってくれるな。浮いただけでも前進だ」


 「お兄ちゃん!降りてきてー!シートベルト付けてない!!」


 そう。俺は上昇するだけでも面白かったけど、それだけじゃ駄目なんだよ。って事で、今度は魔石に重力を付与して下降も出来るようにしてみたんだ。


 そして、なんとか無事着地してそれぞれが気付いた事。


 「推進力は風魔法か?」


 「お父さん!シートベルトと落下防止に両脇にドア必要だと思う」


 「後ろの座席でも操作出来るように分担出来ないか?」


 「あ、爺ちゃん。それいい!運転席で前後左右の操作をして、後部座席で上昇下降とか!」


 「待て、洸。そうすると乗っている間の魔力は二人から取るのか?」


 なんて、皆から意見が出る事出る事。


 思いつく限りの事を即座に試し、足りない事をやっては、まだ駄目だったと試行錯誤を繰り返して———


 完成したのは、なんとその日の夜10時過ぎ。

 

 「もうっ!皆、何回もご飯呼んだのよ!」


 母さんがボヤキながらも、しっかり夕食兼夜食を作ってくれてたおかげでガッツリ食べられた俺達。


 因みに、ジャンさんは源を遊ばせまくって先に自宅に帰っている。だから源も疲れたのか、拠点に帰ったら自分の寝床でぐっすり寝てたけどさ。


「いやぁ!こんなに熱中したのは久しぶりだ」


 ぷはあっと満足気にビールを飲んで気持ち良さそうな父さん。


「お父さん達本当に何も食べなかったもんね」


 どうやら凛は一人、きっちり食べに戻っていたようで、今はあったかい味噌汁だけ飲んでいる。


「だが、これで偵察が出来るな」


 爺ちゃんはつまみに好物の卵焼きを食べて、クイっと日本酒を飲んで上機嫌。


「偵察は父さんと爺ちゃんかぁ」


 流石に装備の準備不足で俺は行けないのが残念だけど、明日父さんと爺ちゃんが試運転を兼ねて早速行ってみるらしい。


 くっそう!良いなぁ。


 なんて思いながらまだまだ話し足りなくて、凛も含めて食べるのもそこそこに話し込んでいたらさ……


「とにかくしっかり食べて、今日は全員早く寝なさい!!」


 1番怒らせてはいけない母さんから雷が落ちたんだ。


 これには爺ちゃんも従わざるを得なくて、その日は解散して風呂に入って布団に入ったよ。


 明日は何を作ろうか?


 って思ってたらいつの間にか眠った俺。


 異世界では毎日が刺激があって、時間が過ぎるのが早いよなぁとつくづく思ったよ。

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