第14話 安全に向かう為に。

「どうせならさ、ジュースに回復付与すると美味いんじゃね?」


「お兄ちゃん、凛の分はコーラが良い!」


「お?良いねぇ!1.5リットルもいっとく?」


 凛と相談しつつもポーションを作成中の俺。


 朝食の後、俺はリビングでせっせと水に付与魔法をかけて、来たる日に向けて準備していたんだけど……よくよく考えると、水じゃなくても良い事に気がついたんだよ。


 で、どうせなら遊んでみよう!って事でまずはコーラに付与してみたけどさ。


 ついでに、父さんのビールや爺ちゃんの日本酒にも回復付与かけてみたり、遊びすぎたんだよなぁ……


 「いってぇ!」


 「全く、ちょっと目を離したらこれか……!」


 父さん達が突然帰って来たから色々隠せなくて、父さんにバシっと後ろから叩かれた俺。


 「ああっ!洸!俺の秘蔵の日本酒まで……!」


 あ、爺ちゃんのだったんだ。なんかキッチン探してたら、奥から出て来たんだよなぁ。料理酒かなんかだと思ったんだって。


 「ん?でもかえって良いんじゃないのか?」


 うん。爺ちゃんはそういうと思った。そうなったらなったで良いんじゃないか?って言うのが爺ちゃんだ。


「親父……!いや、まあ……悪くはないけどな。一日の終わりに回復出来て美味しければ良いのか……?」


でもって、それは遺伝でもある。


「もう!なにをやっているのぉ?それに、こんなに作ってどうするの?」


こんな時は纏めるのが、やっぱり母さん。


「あら、全回復?洸、これ全部に全回復付与したの?」


あ、そっか。母さん食べ物に鑑定できるんだった。


「んー、特に気にしてなかったけどマズい?」


「あら、良いんじゃない?特にこれとこれはイザっていう時にいいかもね」


 「「あっ!」」


 母さんがヒョヒョイ持って行ったのは、父さんのビールと爺ちゃんの日本酒。「これは私が管理するわ」と言ってキッチンに戻って行った母さん。


 それを目で追っていた爺ちゃんと父さんの背中は、ちょっと哀愁が漂っていたな。うん、ごめん。


 「コウ?こんなに沢山どこに保管するんだ?」


 おっと、ジャンさんもいたんだね。ふっふっふ!それにはこれまた異世界の鉄板でしょ。


 「じゃ、じゃーん!マジックバック〜!勿論時間停止機能付き〜!」


 り、凛。その役はお兄ちゃんがやりたかったのに……!


 「凄いな、コウは……!だが、シゲルとチョウジュウロウはすでに持っているのか?」


「ああ、かなり前に作って貰ったからなぁ」


「軽いし、便利だ」


 驚くジャンさんに、父さんと爺ちゃんは肩に担いでいるバックを見せてちょっと自慢気だ。


 「そういえば父さん達どうしたの?」


 凛!ナイス!俺もそう思ってた。


 「いや、ジャンの身体慣らしに森に入るかと思ってな。そしたらジャンが剣が欲しいって言うから、俺がちょちょっと作ったわけよ」


 父さんが説明を始めたら、ゴトリとテーブルに剣を置くジャンさん。


「まあ、繁が作ったにしては及第点だが、いかんせん素人だ。重いし、切れ味が悪い」


「親父。作った本人目の前にして、正直に言い過ぎだろう?」


「正直は良い事だ」


 爺ちゃんが胸を張って言っているが、父さんがブチブチ言って拗ね出した。……父さん、マジで子供っぽくなってるぞ?


「いや。シゲルには悪いが、事実なんだ。そこで、コウがなんとか出来るかもしれない、と言われて戻って来たところなんだ」


 あ、ジャンさんの追撃が入った。そろそろ俺も父さん側につくか。


「そっか。でもさぁ、結構これ初めて作ったにしては凄くね?結構職人が作ったのとそんな変わらないかもよ?


「うん!父さん凄いね!凛、これは作れないよ」


「そ、そうか!うんうん、うちの子達は良い子だなぁ!」


 ご機嫌になって凛の頭と俺の頭を撫でる父さん。やめれ。髪がぐしゃぐしゃになるって。まあ、良いや。父さんは凛に任せて……


「ジャンさん、切れ味のアップと耐久性、重さの調節でいい?」


「洸。ジャンは炎属性だそうだ。魔法剣作れないか?お前が好きだったやつ」


「ん?爺ちゃん、それ面白そうじゃん!」


 爺ちゃんも俺が読んでたラノベ見てたからなぁ。おし!


「えーっと、切れ味は最高品質で、重量は所有者の適した重さ、耐久性もかなりあげて……最後に火属性付与かな。お、流石に消費MPが100いった」


 「あ、じゃあ。凛がその剣にあった鞘作ってあげる!お兄ちゃん、こっちにも耐久性付与してね!」


 凛が剣に触って植物魔法で枝を呼び出し、上手いこと剣の刃の部分を覆って行く。


 最後に俺が耐久値を最大に付与すると、あっという間に魔剣が出来る様子にジャンさんが唖然としている。


 「お、凛カッコ良い鞘じゃん」


 「へへっ、お兄ちゃんが好きなラノベの主人公の剣思い出したんだ」


 ……なんか、みんなに俺の趣味がバレているのは正直なんとも言えないけど、まぁこういう時は便利だよなぁ。


 あ、ジャンさんやっと再起動した。


 「私はこれに慣れないといけないのか……」


 頭を抱えるジャンさんはちょっと疲れた表情だ。うん、坂木家これからもこんな感じだから慣れて下さいよ。


 「とりあえず、ジャンさん使ってみて?」


 「悩むよりも行動だぞ、ジャン」


 そんな俺の考えを後押しする凛と爺ちゃん。「ジャンやって見せてくれ」なんて父さんもやっぱりファンタジー好きだよなぁ。


 で、俺は出れないから拠点の窓から見えるドーム内で、天井のない畑の一角で試して貰う事にしたんだ。


 まだまだヒョロっとしているジャンさんだけど、剣を構える姿はカッコ良い!


 そして、ヒュヒュヒュッと風を切るジャンさんの剣舞に、見学していた爺ちゃん凛から拍手喝采。父さん指笛って出来たんだな。


 俺も拍手をしてたけど、気になるもう一つの方を試して貰いたくてさ。


「ジャンさん、魔力を少し剣に注いで見て!」


「ああ」


 ゆっくり魔力を入れて行ってるんだろう。剣の鞘に近い根本から刃の部分が赤く光って行く。


 そして刃の先まで赤く光った時、「ジャン!」っと父さんが短い木の枝をジャンさんに投げたんだ。


 すぐさま反応したジャンさんは、ヒュンッと一振りで枝を一刀両断すると……シュボッ!と音を立てて灰に変わったんだよ!


 これには俺達も「「「「凄い!」」」」ってハモってしまった。だって、こんなん漫画やアニメの世界だと思ってたからなぁ。


 更に、ジャンさんの剣は魔力を強く剣に込めると、文字通り炎の剣になったんだ。こっちもかっけぇ!


 その後も一通り試して満足したジャンさんは「必ず支払いをする」と言っていたけどさ。


 これに関しては「良いよ、気にするな」なんて言葉は坂木家からは出ない。凛でさえ、きちんと対価を払う事は大切だと言っているし。

 

 うん、気長に待ってるよ。


 で、ジャンさんの演舞を見ながら、もう一つ思った事がある。


 「なあ、移動を手段をさあ……飛んで向かうって選択肢はどう?」


 そう、俺が思った事。魔剣が作れるなら、飛ぶ乗り物も作れるんじゃないか?っていう厨二病的なものだけどさ。


「お兄ちゃん空飛ぶ絨毯でも作るの?」


「んー、絨毯は却下。出来たらもっとデカいものかな?」


なんて言ったら父さんが食いついて来た。


「洸!よく言った!男なら空に憧れるよな!飛行船だよな!?」


「む、やばいぞ?洸、繁のスイッチを押しよったな……!」


 爺ちゃん、それもっと早く教えてくれ……!既に、父さんが窓から乗り出している俺の両肩に手を置いてガクガク揺らしてくるんだが?


「あわわわわわわ」と言葉にならない俺の向こうでは、凛が「気球?んー、空飛ぶ船?空飛ぶ電車?」とか言ってたけどさ。

 

 夢あるよなぁ、空飛ぶ乗り物!


「ね?お父さん、やっぱり凛達が作った車両使えないかな?あれにジェット部分つけたりしたら進まない?」


 凛が言い出した案に、父さんが考え出してパッと手を離してくれたけどさ。父さん曰く、やはりデカい乗り物は目立ち過ぎる、と言って落ち着きを取り戻したようだ。


 マジで助かったよ、凛。


 「じゃあさ、ピザ屋のバイクの宙に浮くバージョンは?あれ二人乗り用にして型だけ作るなら、父さんや凛が作れるんじゃね?」


 多分、俺が魔石動力にして浮遊の付与かけりゃ済む話でないか?


 なんて俺が口に出した先から、父さんと凛がこぞって作り始めたんだ。


「洸……ヤル気スイッチ押しおったな」


「んー、まあ良いんじゃね。あれば偵察でも役立つじゃん」


 なんて感じで制作に俺と爺ちゃんも加わって行くと……その様子に「探索は無しだな」と苦笑いするジャンさん。


 あーでもないこーでもない、とワイワイやっているとジャンさんがボソっと呟いた。


「コウ、家から出て良かったのか?」


 ……ジャンさん、そこは見逃してくれる場面だよ……!


 まあ、結局その後は爺ちゃんに押し戻されたけどさ。


 うおおおお!俺も混ぜてくれ———!!!

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