時代遅れよさようなら・水のララバイ~

釣ール

それはほんとうに欲しいものか?

 多様性たようせい、言語化、誰もが主人公、といったそばから能力主義のうりょくしゅぎ……。



 そこらじゅうに転がる綺麗事きれいごとにはいる金。



 共産きょうさん社会しゃかいもだめだったから資本主義しほんしゅぎに今日も文句を言いながらしかたなく暮らす。



 罪葦環でぃあぐらなおきはプールにうつせで目をつむり考える。



 考えても結局生きている以上は人間関係はさけられないし労働も消えてなくならない。



 固定概念こていがいねんの幸せから逃げなければつまらない愛やくだらない未来しか待っていない。



 二十二歳にまで成長したはいいものの、罪葦環でぃあぐらなおき水中使すいちゅうつかいとしての生き方はこのディストピアじゃ日陰ひかげになってしまう。



 能力主義も消えてなくなってほしいのに強者きょうしゃばかりの世界観では退屈たいくつでしかない。



 やっと屋内プールのある賃貸ちんたいを見つけて暮らすことができるのはいいものの、水をあやつって格闘術を使う自分にとって発散はっさんする方法が泳ぐだけではものたりなさすぎた。



 インターネットだけでは見つからなかったからあちこちを探し続けた。

 AI技術はともかくVR技術もふんだんに使われたバーチャル空間の存在を。




 この世には物理法則ぶつりほうそくがあるから不自由だ。




 そして自分自身の能力も隠した状態で遊ぶことが出来る。

 もちろんバーチャルだから大した効力こうりょく期待きたいできないが。



 目的地に到達して操作をバイトのにいちゃんからある程度聞き、料金を払って『バトルプラン』

 をフリックし普段隠している水能力をなぞるようにバーチャル空間でのみ水を使う。



 たくさんの人間でも動物や植物でもない生き物を使える立ち技と水との連携で倒し続ける。



 バイトのにいちゃんから筋がいいねとアナウンスされたが知るものか。



 俺はストレス発散がしたい!


 ただそれだけなのだから。



 血も何も出ない空間で本来の水ではないとはいえ実戦に近い体験が出来るとは思っていなかった。



 その時のなおきは鬼を退治する桃太郎のように残酷だったと思う。



 ふだん使えない水を仮にでも使って何体もの生き物を快楽かいらくのために始末しまつする。



 それは現実ではきっとほめられた人生ではないのかもしれない。



 いいさ。

 言いたいやつには言わせておけば。

 なおきは時代遅れの連中と心の中で馬鹿にしながら人混みにまぎれていきる生活のためにストレス発散をしているのだから。



 とどめは水流弾すいりゅうだん

 二十二歳といってもストレス発散の時はおさなくもなるさ。



 そうして派手はでにぷっぱなしたあとはバーチャル空間とは思えない疲れがおしよせ、急いで片付けて帰る。



 自宅にもどり、またプールへ身体をひたす。



 もうこないのだろうか。

 自分が本当に水を使っていきてもいい生活が。



 今日も楽しく生きづらい。

 それが現実か。



 理解と納得のバランスは葛藤かっとうとなって明日も苦しむだろう。

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