第37話 個性能力《ユニーク・スキル》、発動!
異世界からの勇者マサムネ(そのじつ派遣バイト)である
まるで敵の攻撃から、空に逃げたような格好になってしまったことを恥じていた。
とはいえ、自分だって、空中で一人で安穏としていたわけではない。
五十匹はいたであろう蝙蝠魔族軍と戦って、見事、撃退したのだ。
(そうだよ。言ってみれば、制空権を確保したんだ。
とすれば、勇者ならではの活躍をしたってわけだ。うん)
特に、付与された能力〈
蝙蝠男たちにとって、絶対の自信があったはずの超音波攻撃が効かなかったばかりか、跳ね返されたのだ。
いかな魔族の端くれとはいえ、知性のある
必殺の超音波攻撃が跳ね返されるのに怯えて距離を取るだけでなく、戦線離脱する者が相次いだ。
現に、何十人かは地面にまで墜落して死んでいた。
地面の方々に散らばった蝙蝠どもの
(ご愁傷様。ああ〜、気分爽快。達成感があるな!
俺様が、宇宙レベルで強い男で良かった)
俺様は、基本、立ち直りが早い性格をしている。
護衛対象である人間パーティーの苦境を余所(よそ)に、しばらく勝利感に浸ってから、ふと気付いた。
(む、考えてみれば、人型をした魔族と戦って勝利したの、初めてじゃないか?
その割に、これといった感慨が、湧き起こって来ないな……)
魔族を何十人殺したところで、魔物の獣を退治したときと同程度の感覚しかない。
これも異世界転送において、いろいろな耐性を付与されているからかもしない。
ーーそこまで思い至って、俺は宙に浮かんだまま、手でポンと打った。
(聖女さんたちが今現在、魔族に襲われていてもさして慌てないのは、耐性がついたせいだ。うん、そうに違いない。
どうやら俺様は勇者に相応しい鋼の精神を得たようだ……)
これから魔族軍団と戦おうっていう勇者をやっていくには好都合だ。
(よし。コウモリどもの攻撃がやんだ今こそ、俺様ならではの能力を試してみよう!)
空に浮かんだまま、眼前にステータス表を出す。
あらためて自分に付与された能力の項目を確認した。
名前:マサムネ 年齢:25 職業:勇者 レベル:20/20
体力:999/1000 魔力量:999/1000
攻撃力:999/1000 防御力:700/1000
治癒力:600/1000 俊敏性:700/1000
スキル:雷撃・火炎・索敵・加速・飛翔・反射・復元
ーーまあ、「体力:999/1000」ってのは、おそらく衝撃やら持続力とかの物理的な、肉体的な力のことなんだろう。
俺は顎に手を当てて思案する。
(それにしても、興味深いのはやはり……)
星野兄妹は二人して、どんな能力か不明だから使うな、とのお達しだった。
実際、今までの前任者の中には、ほんとうに
以来、個性能力を不使用のままで活動してきた人が、ほとんどだった、とのことだ。
だとしてもーーと、俺は思う。
(俺様は真の勇者だからな。
そのような
俺はワクワクしながら両手を広げ、心の中で声をあげた。
「
すると、眼前の中空に浮かぶステータス表の表示に変化が現れた。
(む。文字が赤く点滅しているスキル項目があるな……)
スキル:雷撃・火炎・索敵・加速・飛翔・反射・復元ーー。
星野兄妹によると、この
(ということは、とりあえず、今の俺様が使える能力の種類は、この七種類ってことか……)
この能力を発揮するための背景となる力が、
「魔力量:999/1000」
ってやつで、その発揮する種類に応じて排出量に限度があり、その幅を示すのがーー。
攻撃力:999/1000 防御力:700/1000
治癒力:600/1000 俊敏性:700/1000
ーーということか。
(うん。なんとなく自分のやれることが
攻撃力の数値はほぼカンストだし、治癒力が少ないのは不安だったけど、聖女様からポーションを
だから、今は考えなくて良いとみて……。
(やはり、注目すべきは
任意で、点滅する光が移動し、赤く光るスキル名が変わっていく。
意識を〈次へ〉と向けると、赤く表示される字が〈雷撃〉→〈火炎〉→〈索敵〉→〈加速〉→〈飛翔〉→〈反射〉と移り変わっていく。
(どれかに決めろってわけか。
……そうだ、コレなんか、どうだ?)
「雷撃!」
俺は〈雷撃〉を選んだ。
これは、最初の魔物退治において使用したから、効果も使い心地も知っている。
自分の
一つめの能力として〈雷撃〉を選択し終えると、次は青い光が点滅し始めた。
これも意識を向けると、〈火炎〉→〈索敵〉→〈加速〉→〈飛翔〉→〈反射〉と、青く光る字が移動していく。
(えーっと、じゃあ、次は〈火炎〉かな。
こいつも、よく使って知ってるし。
ーーよし選択が成った!)
そう思った途端、〈雷撃〉と〈火炎〉の表示文字が黄色く点滅し始める。見れば同じ色で、〈
そうか……。
わかったぞ。
俺は宙に浮かび上がったステータス表に指で触れた。
(そこで「
俺の特殊能力使用方法は、間違っていなかった。
赤字が点滅した〈雷撃〉、青字が点滅した〈火炎〉を選択し、〈
どうやら、新しい能力〈雷炎〉が誕生したらしい。
(なるほど、この一連の作業で、〈雷撃〉と〈火炎〉の能力が〈混合〉されたーーつまりは〈カクテル〉されたってわけだ……)
では、さっそく性能実験……といきますか!
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