第33話 まだ、やったことがない、全力の魔力を叩きつけてやる。チート能力を舐めんなよ!
日本東京から〈勇者マサムネ〉として異世界に派遣されてきた俺、
魔王城が行手に
その一方で、人間パーティーには、
今まで、森林を突破する過程で、彼ら、人間パーティーメンバーの能力を、俺はそれなりに把握していた。
攻撃力を持っているのは、白騎士一人と、もう二人だけ。
治癒能力を持つのは、聖女様お一人。
あとは魔法で障壁を築いて、魔物による物理的な攻撃を
でも、自分の身を守るだけなら、みな、それなりの力はある。
たぶん、そういう能力者を
絶望的な状況でありながらも、みな、正気は保っていた。
先程、〈勇者マサムネ〉たる俺様が、
「おまえらは防御だけしてろ」
と言ったおかげもあって、人々の口からは安堵の声すら漏れ聞こえていた。
「よくわからんがーー勇者様が気にするな、とおっしゃるんだ。
なんとかなるのだろう」
「そうだ。勇者様がなんとかしてくださる」
「勇者様はお強い。
今まで森の中で、何度も魔物をやっつけてくださった……」
だが、しばらくすると明るい声が、段々小さくなる。
心配事に気づいたらしい。
おずおずとした声で、いつも聖女様の背後に貼り付いているお付きの者が尋ねてきた。
「でも、魔法で
「そうなのか?」
俺は
やっぱりか。
森の中で魔物と対峙してるとき、なんでコイツらなにもしないんだろうって思ってた。
そうか。
防御障壁を展開してたから、打って出られなかったんだ……。
今まで引っかかっていた、現地人どもの戦闘時における疑問ーーそいつが解消して、少し気が晴れた。
人間パーティーの面々を前に、俺は手を腰に当て、胸を張った。
「わかった。なんでもいいから、あんたたちは一丸となって、自分たちの身を守る、大きな
攻撃なんか、しなくていい。
もとよりおまえらじゃあ、魔族に
俺様があんたらの防御エリアより前に出る。
攻撃するのは、俺様だけで十分だ」
俺はマントを
魔物の軍団を前に、単身で立ち向かう勇者ーー。
そんな自分の姿を思い描いて、俺は自分に酔い
(どうせピンチなら、やるだけやってみるさ。
宇宙レベルの俺様の力、見せてやる!
くうぅーー格好いいぜ、俺!)
そんな俺の内心には、まるで気づいていないのだろう。
背後では聖女リネットが両手を合わせ、俺を
「勇者様……非力な私たちを救けようとして、身を
俺は、ちょっと振り向く。
すると、白騎士レオンのヤツが、聖女様の
なんだか、一途に俺様の方を見つめているがーーおいおい、少し聖女様に近づき過ぎじゃないのか?
リア充を俺に見せつけるのも、たいがいにしろよ。
コホン、と俺は一つ咳払いし、後方の白騎士に命じた。
「聖女様を頼むぞ」
「はい」
勇者の声を受け、案の定、白騎士と聖女様は、互いに見つめ合っている。
それを周囲の野郎どもが、温かい眼差しで眺めていた。
正直、彼女いない歴=実年齢の俺様には、妬(や)けた。
(いわゆる、みなさまのお墨付き、公認の仲ーー。
これぞ、祝福される美男美女ってやつか。
ちッ、リア充してやがんな……)
周囲の仲間に見守られながら、白騎士と聖女様は、互いに無言で手を取り合う。
その
二人の
そして、一拍、間を置いてから、聖女たちは周囲を取り囲む仲間とともに、いっせいに俺に向かって、熱い視線を浴びせてきた。
彼らの熱い期待を全身に受け、俺の感情は最大限に
つい先程まで、彼らの男女仲を嫉妬していたが、コロリと忘れた。
(おおう、期待のオーラが熱いぜ。
しゃあねえな。
俺様は、異世界からやってきた勇者だからな。
ここは恰好つけてやるか!)
俺はマントを
敵の魔物軍団に向かって。
俺の背中を見つめつつ、人間パーティーは全員で魔法を発動し、
半球形の魔法障壁で、自分たちの身を守る格好だ。
人間パーティーが防御体制に入ったのを背中で感じつつ、俺様、勇者マサムネは、さらに歩を進める。
(さて、これで俺様は、気兼ねなく、全力が出せるってわけだ!)
首や腕をボキボキといわせて、身体をほぐす。
そして、眼前に展開する魔族軍団を睨みつけた。
(まだ、やったことがない、全力の魔力を叩きつけてやる。
チート能力を舐めんなよ!)
人間たちが防御体制に入ったのと同時に、魔族たちも動き出した。
さっそく、空と陸の二方面から、攻撃を仕掛けてきたのだ。
雲霞の如く迫ってくる、化け物の大群ーー。
ヤツらを前にして、俺も即座に行動を開始した。
なにをしたかって?
当然、空へと飛んだのさ。
付与された魔力で〈
背後で人間どもが、おおっ、と感嘆の声をあげているのが聞こえる。
俺は宙に浮きながら剣を抜いて、天空で振りかざした。
「どうだ! 俺様は恰好良いだろ。
これから魔物を
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