第16話 勇者マサムネのステータス
俺、
(えっと……胸も足も大丈夫っと。
ーーでも、ほんと、こんなんで身長が三メートル近くもあるってのか?
信じられんな)
すると、脳内に、若い女性の声が響いてきた。
雇用主・妹の星野ひかりが、赤色の通信ボタンを押したらしい。
モニターに付属する赤いボタンを押せば、異世界に派遣した者と交信できると言っていた。(彼女には仕組みを説明できないようだが)
時空を異にする世界同士で、どうやって音声や映像を同期するのかサッパリわからん。
でも、まあ、通信一つもできないようでは不便この上ないから、たしかに理屈なんざどうでもいい。便利に交信できさえすれば、それで良いと思う。
「マサムネくん、聞こえる?
管理責任は私たちにあるから、コレから先、色々とアドバイスを送るわね。
あなたは〈異世界から召喚された伝説の勇者〉ってことになってるから」
「〈伝説の勇者〉ねえーーこの俺様が。
なんだか、実感ないな」
自慢じゃないが、俺様は〈世界を救う〉などといった、自分に無益な行為をする趣味はまったくない。
だが、仕事となると話が別だ。
少なくとも自分に利益となる報酬が得られるのだから。
「実感がなくても、心配ない。
ちゃんと、勇者様にみえてるわよ」
ひかりの声が、
ほう。さすがは俺様だ。
実感が持てないのに、すっかり〈勇者〉になってるってか。
「本当に? やっぱ宇宙レベルの俺様は、オーラが違うか」
〈勇者マサムネ〉として、俺は明るい声をあげた。
が、交信相手は、ハァと息を漏らす。
「バカね。あなたの服装のことよ」
「え! 服装?」
俺は
「ーーああ、そうだったな。
ついさっき確認したんだ。
なんなんだこの格好は。
コイツもナノマシンがいじったのか」
背中に
革製の鎧に、大振りの剣を
「そうね。もとの服装を原子分解してから再構成してるって話よ。
都合良く、
なんとも、都合が良いことで。
でもーー。
うん、こうした勇者コスプレも悪くない。
お仕着せの作業着で仕事をさせられるよりは、よほど気分が良い。
俺は軽口を叩いた。
「うんうん。結構イケてるかもな。
ってことで、ひかりちゃん。俺様に惚れるなよ」
俺の
「バカなこと言ってないで、まずは自分の能力を確認して」
了解、とばかりに、俺は内心で強く意識した。
「ステータス・オープン!」と。
すると、ステータス表が、目の前に現れた。
名前:マサムネ 年齢:25 職業:勇者 レベル:20/20
体力:999/1000 魔力量:999/1000
攻撃力:999/1000 防御力:700/1000
治癒力:600/1000
俊敏性:700/1000
スキル:鑑定・雷撃・火炎・索敵・加速・飛翔・反射・復元
「おおっ!?」
ステータス表を見るやいなや、俺は驚きの声をあげた。
なんと、魔力量、攻撃力ともに999《スリーナイン》。
ほとんどカンストだ。
派遣前に調整すれば、こうして極限近くにまで魔力を増大させることができるらしい。
こいつはナノマシンの性能のおかげではなく、転送する間に、意図的に起こした
そういえば、一度、細胞レベルまで分析・解体してから、異世界で再構成するって言ってたもんな。
その間に、魔力絡みの能力については、意図的に情報を放り込むと言っていた。
その成果ってやつだ。
雇い主の星野ひかりも明言する。
「そっちの世界での人間能力値は全ジャンル平均10以下だから、今のアナタはズバ抜けて強いはずよ」
「おおっ、つまり俺ってチートかよ!」
反射的に、歓声をあげた。
そりゃ、強いに越したことはないもんな。
怖い気もするが、まあ、チートな魔力持ちになるのなら大歓迎だ。
「さぁて、〈勇者マサムネ〉のデビュー戦だ。
気合い入れていくぞ!」
俺様はいたって上機嫌に、両腕をブンブン振り回した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます