蛇の脱け殻

また別のM君との思い出を。


これは小学2年生の夏頃の話。

その頃、クラスではある1つの噂……というか迷信が流行っていました。


それは蛇の脱け殻を財布に入れておくと金運が上がるというものでした。

たしか、誰かが実際に蛇の脱け殻を学校に持って来たのが発端だったと記憶しています。


そんなものを見せられた小学生は「うわぁー! 欲しいー!」か「うわぁー! 気持ち悪い!」のどちらかの反応を示すかと思いますが、私は当然「欲しいー!」派でした。


しかも、誰かが件の迷信の話をするものですから、欲しい派のクラスメイトの蛇の脱け殻熱は最高潮に。

登下校中に草むらを掻き分けては、蛇の脱け殻を探していました。


ですが、そんなに簡単に見つからないからこその運気向上効果なわけで、なかなか蛇の脱け殻が見つかることはありませんでした。


そんな脱け殻熱もやや下火になりかけた頃。

あの男がやってくれました。

勿論、M君です。


なんと蛇の脱け殻……ではなく、朝方通学路で蛇を見つけたと言うのです。

私の小学校は通学は集団通学で下校は各個だったので通学の時は見つけたけど6年生に邪魔されて……まぁ蛇がいれば当然なのですが、朝は良く見れなかったそうです。


これは行くしかないと、放課後、蛇の脱け殻欲しい派のクラスメイト幾人かで目撃現場に行くことになりました。

メンバーはM君、T君、私、Sちゃん、Yちゃんの5名です。


果たして、目撃現場には蛇がいました。

いたんです。

朝見かけた蛇が放課後になってもまだ。


蛇の脱け殻って、カサカサで薄っぺらいのですが、脱け殻と違ってそこにはちゃんと太い蛇がいたんです。


もうお気付きの方はいるでしょう。

朝から動かない蛇がどうなっているか。


しかし、小学生ではそんなことはわからないことですから「まだいたよ!」とおっかなビックリ遠巻きにしていました。


ここでもやはりM君でした。

それなりに太く長い木の枝を拾ってくるとおもむろに蛇をつついたのです。


しかし、蛇は動きません。

そこでようやく「あれ? 死んでる?」と皆が気づきました。

気を大きくしたM君は、蛇の胴体に枝を引っ掛けて持ち上げようとしました。

大方「蛇だぞー!」とこちらに持ってこようとしたのでしょう。


しかし、さすがのM君クオリティとでもいいますか。


……何というか、蛇に近づいた時からなんとなく生臭い感じはあったんです。

周囲にはハエが飛んでいましたし。


M君が持ち上げた、中身を喰われた“蛇の脱け殻”は自重を支えきれず、半ばでぶちっとちぎれて、そこからボトボトゾロゾロと白いウジが沸いて出ました。


またウジかよ! と思った方、すいません。

でもこれがM君なのです。


そこからは皆、「ギャーー!」っと悲鳴を上げ一目散に逃げ出しました。

生理的にあれは本当に気持ち悪いものでしたから仕方ないでしょう。


皆さんも、蛇を見つけても近寄ったり、ましてや木でつついたりしてはいけませんよ。

生きていても死んでいてもろくなことになりませんから、ね。










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