蠢く白身
もう1つ、別の思い出を。
これはM君……ではなくM君のお父さんによって味わった気持ちの悪い出来事でして、まぁM君のお父さんというのが、また少し怖いというか不気味というか、そんな方でした。
顔を合わせてもほとんどリアクションが無いんです。
「こんにちは」と挨拶しても無言で頷くくらい。
さて、これはある夏の日、私がM君の家で遊んでいた時のお話です。
私とM君はM君の部屋でスーパーファミコンで遊んでいました。
ソフトはキャプテン翼のゲームで、サッカー小僧
のM君らしいなと思ったのをなんとなく覚えています。
といっても私はその頃はゲーム機を持っていなくてコントローラーも握ったことはありませんでしたから、M君の横でブラウン管のテレビ画面を眺めていただけですけどね。
部屋にはエアコンなんてものはなくて、扇風機が一台あるだけ。
窓を開けて扇風機を強で回していました。
今と違い最高気温は30度いくかいかないかで、熱中症なんて言葉もそこまで馴染みはありませんでしたが、それでも暑いものは暑く、私とM君は汗だくでゲームをしていました。
午後3時くらいだったでしょうか。
なんと家にいたM君のお父さんが珍しく部屋にやってきて一言「アイスでも食べるか」と言いに来たのです。
M君が「食べる!」ととびつき、私も続きます。
どうも、これから買いにいくようでそのまま、家の外に出てM君のお父さんの軽自動車に乗り込みました。
問題の現場はその軽自動車でした。
私とM君がいそいそと後部座席に乗り込み、すぐにM君のお父さんが運転席でエンジンを回します。
出発してすぐ、私は何気なく運転席と助手席の間の隙間から顔を覗かせました。
すると、助手席の足元のスペースに何かを見つけました。
それは卵のパックでした。
また卵かよ! と思ったあなた、はい、また卵なんです。
それは10個1パックの透明フィルムの卵パックでした。
問題は……中身がちゃんとあったことです。
真夏の車内に取り残された卵パックがどうなるかは想像に難くないことです。
車内もなんとなく硫黄のような匂いがしていました。
卵は5,6個入ったままで上部が少し割れておりクレーターのような、火山の火口のような感じでした。
そこからね、見えてしまったんです。
卵の白身が動いているのが。
うぞうぞ、もにょもにょと白身が形を変えているんです。
当たり前の話ですが、卵の白身は勝手には動きません。
じゃあそれが何だったかって言うと、当時の私は知るよしもないことでしたが……やはり、ウジ……だったんでしょうね。
「うわっ気持ち悪っ」と思った私はすぐに顔を引っ込めます。
M君はそんな私を不思議そうに見ていました。
車はすぐに近所のスーパーについて、ホームランバーを奢ってもらいました。
残念ながら当たりは私にもM君にも出ませんでした。
皆さんも……まぁ、無いとは思いますが真夏の車内に食べ物を……特に卵を放置しちゃ駄目ですからね。
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