それはすいせいの実体験にもとづいた思いだった。すいせいの道は行き止まりになっていた。先などどこにもなかった。だから行き止まりの道の上でずっと立ち尽くしているすいせいは先生の言葉を聞いて、それは嘘なのだとすぐに理解することができた。(先生はとてもいい先生だけど)

 勉強をしようと思っても、三十分ももたなかった。すぐに飽きてしまった。こんなことをしていったいなんの役に立つのだろうと思った。(実際にはとても役に立つのだろうけど、どうしてもやるきがおきなかった)だって私の道はもう行き止まりなのに。勉強しても意味がないだろうと思った。部活動にもはいっていないし、(やりたい部活動はなにもなかった)創作活動のようなこともしていない。趣味もない。すいせいにはなんにもなかった。自分が社会のお荷物であることはずいぶんと前にわかっていた。体が弾けるような経験も、なにもかもを捨てられるような恋も、したことがなかった。心がどきどきするような作品にであったこともなかった。そんなものに出会ってみたいとおもった。(そうやって、やりたいことを見つける主人公たちを漫画とかアニメでよくみていたから)

 心がどきどきする、というところで、すいせいはさっき見たばかりの蜘蛛が蝶を捕食する瞬間を思い出した。

 びくっとしたすいせいは、目をぱっとあけた。するとそこには自分の部屋のみなれた(くたびれた色をしている)天井があった。

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