まるで聖域でも求めるように、すいせいは自分の部屋の中にはいった。そこで丸い鏡を見て、自分の顔を映してみる。

 ……たいしてかわいくもない。いつものようにそう思う。

 自分はたいしてかわいくないのだと思った。いろんな映像や動画で見る人たちは美しい、あるいはかっこいい人たちばかりだった。(もちろん、そうじゃない人もいるけど、ほとんどはそうだった)そんな映像や動画を見て、すいせいは自分がたいしてかわいくないのだとわかった。(残念だけど、まあしょうがないと思った)もしかしたらこれからすごくかわいくなるかもしれないし、胸とかお尻とかももっと大きくなるかもしれないと言い訳をしてみたけど、むなしいだけだった。(本気でなるとも思ってないし)なんだか人生は残酷だと思った。すいせいは十四歳にして、自分がかわいくない女の子であることを知ってしまったのだった。

 すいせいは鏡を見るのをやめると、それから中学校の制服から着替えもせずに、(ばたんと倒れ込んで)ベットの上で横になった。

「私は毎日、毎日、なにをしているのだろう?」とそんな独り言を言った。

 すいせいは目をつぶった。とりあえず眠ろうと思ったのだ。でも、眠れなかった。だから眠ることをあきらめると、すいせいは真っ暗闇の中で、先生のことを考えた。

 先生はよく、「未来には無限の可能性があります。道は、あるいは可能性はたくさん分岐していて、どんな選択肢でも選ぶことができます。行き止まりはありません。なんどでも、やり直すことができます」と言っていた。

 すいせいは先生の言葉をきいて、それはきれいごとの嘘だと思った。(先生の言葉としては正しいのかもしれないけど……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る