とても醜いもの
雨世界
1 すごく安心できる場所。
とても醜いもの
すごく安心できる場所。
なんだか、変な形をしていること。それは普通のことなのだ。みんな型から生まれてくるわけではないのだから。ぶかっこうなことが普通のことなのだ。
中学二年生の十四歳の女の子、守屋すいせいは今日、はじめて蜘蛛が蝶を捕食する瞬間を見た。知識としては、もちろん、そういうことは知っていた。(生態系というやつだ)でも、実際に見るのは初めてだった。観測していたとか、興味があったというわけじゃない。『たまたま見たのだ』。家の玄関のわきにある木のところに蜘蛛は巣を張っていたらしい。どこかから美しい蝶が飛んできて、その蝶はふわふわと空の中を自由に飛びながら、ふとまるで運命に導かれるようにして、蜘蛛の巣にあっけなく引っかかった。(びっくりした)そのあとで、すぐにどこかに隠れていたのか、蜘蛛は急いでやってきて、その蝶を補足してばたばたとあがいている蝶に抱き着くと、すぐに蝶はぴたりと動くことをやめてしまった。
そのあとで、蜘蛛と蝶がどうなったのかは、すいせいにはわからなかった。もう続きが見たくなくなったので、すぐに家の中に入ってしまったからだ。
最初は本当にこんなことがあるんだ。と思った。でも、なんだかだんだんとそわそわとしてきた。どきどきして、なんだかずっと落ち着かなかった。
こういうことが『自然と毎日、地球のいたるところでおこなわれていることは知識としては知っている』。でも、はじめてみた。はじめてみて、すごくびっくりしたのだ。
自然の中には人間の世界にある法による規制などはない。映像だって、音声だって、未成年が見るには不適切だっていって、途中で途切れたり、(あるいは最初から見られなかったり)しなかった。映像をほかの映像にかえることもできないので、すいせいは逃げることしかできなかった。現実の光景から。それは自然界の中では、とても普通の行為であるというのに。
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