第7話 頑張れ

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:22

身長:176

髪型:黒のショート。


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:22

身長:148

髪型:黒のボブ。


中星なかぼし圭吾けいご

性別:男

年齢:22

身長:182

髪型:金のショート。






夏の暑い太陽が消え、綺麗な月が夜道を照らすなか、七海ななみは1人で帰っていた。


重い足を動かす七海の頭には先ほどの苦しそうな太希たいきの姿とその太希が最後に言った“ごめんな”の1言がぐるぐると回っていた。


そんな七海の目に子供の頃、よく水樹みずきと2人で遊んだ公園が映る。


その公園の前で七海は足を止める。


{凄い。上手じょうず!!

七海ちゃんは大人になったら、プロのドラマーになれるよ!!絶対!!}


この公園で嬉しそうに言ってくれた水樹の言葉を七海は思い出す。


ゆっくりと公園に入ると

七海はリュックの中からバケツとドラムスティックを取り出す。


そしてバケツを叩き始める。

その七海の目にはおさえきれないほどの涙がポロポロと流れた。


🥁


ー次の日ー


太希の家のチャイムが鳴る。


「太希~。出て~。」


そう母親に言われて太希は玄関の扉を開ける。


そこに居たのは圭吾けいごだった。


「よっ。」


そう圭吾は軽い口調で太希に声をかける。


そんな圭吾を部屋にあげると太希は適当にお茶を出す。


「っんで?今日はなんの用だ?

バイトは休みじゃないぞ?」


そう太希が尋ねる。


「知ってるよ。昨日、四条しじょうから聞いたぞ。お前、ドラム叩けないんだってな。」


そう圭吾がお茶を飲みながら言うと太希は少し返す言葉に迷う。


「・・・関係ねぇよ。

どっちにしろ、叩いてなかったと思うし。もう…聞かせたいがいないからな。」


そう太希は圭吾から目線をらして答える。


少しの間、2人に沈黙が流れる。


その後、圭吾が小さな声で、でも力強くこう言った。


「まだ届けられてないだろ?

あの日の音も…お前の想いも…。

神川かみがわさんに。」


また2人の間に沈黙が流れる。


🥁


その日のバイト中、太希はずっと考えていた。これから自分がどうすべきなのか。


だが、その答えは結局出なかった。


バイトが終わり、太希がスタッフルームに入ると今来たばかりであろう七海が自分のロッカーからエプロンを取り出していた。


そんな七海と目が合うが2人は挨拶をかわさない。


太希は自分のロッカーを開けながら何と無しに七海に話しかける。


「今日、圭吾かうちに来たよ。

昨日の事、圭吾に話したんだな。」


「悪かった?」


そう素っ気ない声で七海は聞く。


「っんやぁ。別に。」


そう太希が答えると七海は何も言わずにスタッフルームを出ようとする。


そんな七海に太希は声をかける。


「なぁ、四条。」


名前を呼ばれた七海は立ち止まると太希の方へ振り返る。


「もし…水樹が幽霊としてオレの前に現れたら…なんて言うかな?」


その太希の問いに七海は冷たく「知らないわよ。」と答えるとスタッフルームを出る。


「だよな。」


そう太希は寂しそうに小さく呟く。


「頑張れ。」


その言葉に太希が「え?」と言いながら顔を上げるとそこにはスタッフルームの扉から顔だけを出している七海の姿があった。


「よくあんたに無責任に言ってたでしょ?頑張れって。」


そう言い終えると七海は顔を引っ込める。


1人になったスタッフルームの天井を見上げながら太希は「・・・正解な気がするよ。」と小さく呟く。

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