第3話 応援してくれるか?

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:高校3年生

身長:176

髪型:黒のショート。


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:高校3年生

身長:157

髪型:黒のセミロング。


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:高校3年生

身長:148

髪型:黒のボブ。


中星なかぼし圭吾けいご

性別:男

年齢:高校3年生

身長:182

髪型:金のショート。






山西やまにし太希たいき。高校3年の秋。


七海ななみは路上でバケツを叩いていた。


その七海の音にたくさんの人が足を止め、人のを作っている。


七海の演奏が終わると人の輪は一斉に七海に拍手はくしゅを贈る。


そんな人の輪に七海が頭を下げると

人の輪はりに去って行く。


「相変わらず、人をきつける音を叩くなぁ。」


そう圭吾けいごが七海に声をかける。


「なんか用?」


そう七海が尋ねる。


「お前は受けなかったんだな。

音兎おとうさぎの年末ドラマーライブのオーディション。」


そう圭吾が聞くと七海の表情があからさまに不機嫌になる。


「当たり前でしょ?!

と一緒のステージに立てるわけないでしょ?!」


そう七海が荒々しく叫ぶ。


「その言い方。太希たいきが受かる前提ぜんていで話してないか?」


そう圭吾が言うと七海が“うっ”とした顔をする。


「凄いよなぁ。あいつ。

最初はオレ達の方が上手かったのに、今では1番上手いんだから。」


そう圭吾が言うと七海は鼻で笑う。


「あんたよりは…でしょ?」


🥁


ひかえ室で出番を待っている太希は緊張でソワソワしていた。


それもそのはず。オーディションを受けるなんて初めての事なのだから。


そんな太希のスマホにメッセージが届く。


「だ、誰だ?」


そう言いながら太希がスマホを確認すると水樹みずきから動画が送られてきていた。


イヤホンを付けてその動画を確認する。


《太希君なら、大丈夫。

だから頑張れ!!頑張れ!!》


その応援メッセージに太希は力を貰うと

小さく微笑む。


「次、28番の人お願いします。」


そうスタッフの人が控え室の扉を開けて呼ぶ。


「はい。」


そう答えると太希は立ち上がって控え室を出る。


🥁


夜の公園で太希は呼び出した水樹が来るのを待っていた。


そんな太希の前に息を荒くした水樹が現れる。


「オ、オーディション。

ど、どうだった?」


そう息を整えるよりも先に水樹は尋ねる。


「ジャーン。」


そう言って太希は年末チケットを水樹に見せる。


「・・・受かったの?」


そう水樹が目を大きくして聞く。


「あぁ、なんとかね。」


そう太希が照れ隠しの微笑みを見せながら答える。


「おめでとう!!本当におめでとう!!」


そう自分の事以上に喜んで水樹は太希の両手を強く握る。


「あ、ありがとう。これ、水樹の分のチケット。」


そう言って先ほど見せたチケットを水樹に渡す。


「ありがとう!!楽しみにしてるね。」


そういつもの優しい微笑みで水樹はお礼を言う。


そんな水樹の様子に少し恥ずかしくなった太希は目線をらす。


「そうだ。七海と中星なかぼし君にも教えないと。」


そう言うと水樹はスマホを取り出す。


「私が七海に教えるから、太希君は中星君にお願いね。」


そう言うと水樹は七海に電話をかける。


その横で太希もスマホを取り出すとチラッと水樹の方へ目線を向ける。


(・・・本当…嬉しそうな顔してくれるなぁ。)


そう嬉しそうに微笑んで太希は圭吾に電話をかける。


🥁


ー次の日ー


「はい。これ2人の分のチケットね。」


そう言って太希が圭吾と七海にチケットを渡す。


「こんなチケット、いらないわよ!!」


そう七海が怒鳴る。


「オレ以外にも沢山のドラマーが出るんだぞ?」


そう言う太希を強く睨むと七海はチケットを受け取らずに屋上から校舎こうしゃの中へと帰って行く。


「本当、嫌われてるなぁ。オレ。」


そう太希が屋上の扉を見つめながら言う。


「羨ましいんだよ。お前が。」


「はぁ?!あいつの方がまだまだ上手いだろ?」


そう太希が言葉を返す。


「だからこそだよ。」


その圭吾の言葉の意味が分からず太希は首を傾げる。


「それより、神川かみがわさんにはチケット渡したのか?」


そう圭吾が話を変える。


「…あぁ。昨日、合格の報告をした時にな。」


「何て言ってた?」


そう圭吾に聞かれて太希は目線を空へと向ける。


「・・・楽しみにしてるって。」


その太希の答えを聞いて圭吾は軽く微笑む。


「彼女の期待、裏切るなよ。」


そう言うと圭吾は扉の方へ歩き出す。


「なぁ圭吾!!」


そう呼び止められた圭吾は足を止めて振り返る。


「このライブを無事成功させたらさぁ…

オレ、水樹に告白するよ。

ずっと考えてたんだ。あの時から。

水樹がステージの上に立つオレの姿を見たいって言った…あの時から。

なぁ…ライバルだけど…応援してくれるか?」


そう太希が真っ直ぐ圭吾の目を見て聞く。


「なってねぇんだよ、最初から。

オレとお前じゃ…ライバルに。」


そう呟く圭吾の声は太希には聞こえなかった。


「待ってると思うぜ。神川さんも。

ずっと…前から。だからまぁ…。

頑張れよ。」


そう言い終えると圭吾は校舎の中へ入って行く。


1人残った太希は綺麗な青空を見上げるのであった。

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