第2話 マリアには秘密にしましょう。


「取りあえず、鈴さま。お葬式をしなければなりません。」


「ああ、そうだわよね。でも、マリアにはなんて説明しましょう。」


「・・・秘密にしますか?」


「でも、そういうわけにもいかないでしょう。きっと、どこかで知ることになるわ。」


「なら、どうなされますか。」


「・・・私が話すわ。取りあえず、葬式の準備をお願い。」


「わかりました。・・・鈴さまも、無理をなさらないようにお願いします。この家は、もはやあなた以外に代わりはいないのですから。」


 もちろん、そんなこと分かっている。それでも、無理をしないわけにはいかないだろう。


「ありがとう。気をつけてね。」


「はい。では、失礼します。」


 こうして、私の領主生活は始まった。



╋╋╋╋╋



 なぜ、ここで当主代理に私が選ばれたのか。


 本来は近縁の貴族に譲る予定だったそう。私は、もしもの時のためだけだったようだ。


 それでも、私が選ばれた。


 これは、キャンドル家が私以外に譲る相手がいないほどに政治から孤立してしまっていることを指している。


 要は、全て嵌められていたということだ。


 「黙祷。」


 当主さま達に、黙祷が捧げられる。


 これからは、私がキャンドル家を続けていかなければならない。


 激動の一年が始まる。

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