第15話
タンの家は、コ・ミンジョンが処刑された後、家門が没落してしまっていた。
父親のコ・ミンジョンが犯人ではないことは証明された。
しかし、まだ家門は元に戻っていなかった。
「私は、父上と懇意にしていた家臣の方たちに、コ家の再興を相談しました」
コ・ミンジョンの息子が突然判明したことで、家臣らはとても驚いたという。
「そうだったのね……」
「はい。家臣の方が、上訴をしてくれるそうです」
「父上なら、聞き届けてくださるわ。コ・ミンジョン殿のことは悔いてらしたもの」
王女の言葉に、タンはコクリと頷く。
「そう言えば、タンは事件が起こる前から私の傍にいるわね」
「はい……どうしても、王女様にお仕えしたくて……父に頼んだのです。武官の試験を受けさせてくれと」
そういった事情を知らなかった王女は、とても驚いた。
「わ、私に仕えるためにわざわざ?」
「そうです。あなたのお傍にいる手段が、それしか思いつきませんでした」
しかしタンは、いつから王女に仕えたいと思っていたのだろうか。
王女が問うと、タンはこう答えた。
「それは、いずれ……」
「そ、そう。でも、あなたはコ・ミンジョン殿のことがあっても、ほとんど動じていなかったじゃない」
きっと、父親を死罪とした国王のことが憎かったのではないだろうか。
「父のことがあった後には、私や母も私の兄弟も奴婢(ぬひ)になるところでした」
しかしタンの一家は、ある重臣の計らいで行方知れずということにしてもらったのだという。
家族たちは、ひっそりと田舎の村で暮らせているらしい。
「王様のことは、あの当時は確かにお恨みいたしました。けれど、それ以上に王女様のお傍にいたいという気持ちの方が優ったのです」
だから、余計な感情を排除して王女に仕えてきたのだ。
年月も経ち、タンとしても国王への気持ちは収まっていた。
王女を支えることだけが、タンの原動力なのだ。
タンの言葉に、王女は顔を赤くする。
「タ、タン?」
「王女様、口づけをしてもよろしいですか?」
「え、え!?」
王女は座った体勢で後退(あとずさ)る。
そしてタンも、じりじりと間合いを詰めてきた。
「嫌ではないということですか?もう、逃がしませんよ」
タンの顔が近づき、二人の唇が重なる。
王女が逃げないことに勇気を得たタンは、より口付けを深くしていく。
二人は、相手との許されない行為に没頭していくのだった。
ひとしきり口づけを続けた後、不意にタンが身を離す。
「タ、タン?どうしたの?」
「申し訳ございません。王女様にこんな……」
タンは、我に返ったようだ。
「本当ね。王女にこんなことをするなんて、厳罰に処してもらわなきゃ」
「お、王女様……」
「バカね。そんなわけないでしょ?あなただから、許したのよ」
そうこうしているうちに、ユ尚宮が用事を足して戻ってきた。
「お二人とも、どうしたのですか?なにか変ですよ?」
ユ尚宮は、二人の変化に気づいたのだろうか。
いや、気づかれるわけにはいかない。
王女とタンは、笑ってその場を誤魔化したのだった。
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