第14話

その後、タンは王女の前に姿を表さなくなった。


それは、お互いの気持ちを知った今、だからこそ一緒にはいられないということだろうか。


「ユ尚宮。タンはどうしたの?全然姿を見せないじゃない」


「そうですね……。コ武官は休みを取っているということですが……。詳しくは私にも分かりません」


「そう……」


王女はとても寂しくて堪らなかった。


例え添うことができなくても、傍にいたいのだ。


それからひと月ほど経った頃、タンが王女の元に戻ってきた。


居室に姿を現したタンを見て、王女は駆け寄り抱きつく。


「タン……私を放っておいてどこに行っていたの?」


「王女様、申し訳ありません。実は……」


タンは言いにくそうにする。


「私の家系に関わることで、留守をさせていただきました。事前の報告ができず、申し訳ございません」


「家系に関わることって何なの?」


「王女様も、前の領義政(ヨンウィジョン)が処刑をされたのをご存知ですよね?」


王女は表情を少し硬くして「もちろんよ」と答えた。


王女も忘れるはずがない。


領義政とは、朝廷の政において最も権力のある重臣である。


前領義政のコ・ミンジョンは、謀反を企てたとして捕らえられた。


無実を訴え続け調査が行われたが、結局はコ・ミンジョンは謀反の首謀者として処刑されたのである。


後になり、真犯人が発覚し捕らえられたのだ。

その人物とは、領義政の座を狙っていた重臣の一人だった。


国王は、コ・ミンジョンが真犯人ではなかったことを知り、酷く落胆した。


コ・ミンジョンは国王に良く尽くしていたし、国王も信頼していたのだ。


そんな者が謀反を起こしたと聞き処刑を命じたが、後の祭りだった。


自分の下した命を悔いていた国王は、今も心の中でコ・ミンジョンに詫びている。


そして国王は、コ・ミンジョンに息子がいることも知っていた。


そのため、その息子に対しても罪悪感を抱いてきたのだ。


周囲には気付かれないようにしているが、国王は苦しい胸中と共に生きていた。


タンの話しを聞き、王女は愕然とする。


「もしかして、その息子というのがあなたなの?」


「そうです。私は前領義政の息子、コ・タンです」


「全く気づかなかったわ……」


タンは、ひと月ほど家門の再興に向けて動いていたという。

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