第13話

するとタンは、再び王女を抱きしめた。


「婚姻なら、私としてください」


「な、なに言ってるの?あなたは従者なのよ?」


タンからは見えないが、王女は頬を赤く染めている。


「分かっています。でも、もう抑えられません」


「タン……本当は私もあなたが好きよ。でも、父上が許してくれるはずがないわ」


「はい。それは私も分かっております。なので、これまで堪えてきたのです」


体を離したと思うと、タンは王女の唇に自分のそれを触れ合わせる。


「タン……」


一度きりだった口づけは、どちらともなく深いものへと変わっていく。


初めのうちは躊躇いがちだった王女も、タンとの口づけに溺れていったのだった。


互いの想いを知った二人だったが、その想いが叶う日が来ないことは分かっていた。


だからこそ、王女もタンも想いを告げられずに今日まで来たのだ。


想いが通じたからといっても、添うことが許されない間柄なのだから。


だからこそ、二人とも余計に苦しむこととなる。


信英君はというと、義禁府(ウィグムブ:王命により大罪人の取り調べを行う官庁)に捕らえられたという。


朝廷内を揺るがすような大罪を画策していたのだから、当然のことだ。


捕らえられた信英君は、罪を正直に認めたという。


確かに世子に代わり王座に就こうとしていたのは事実だが、王女に憧れ婚姻をしたいと思っていた心は本物だったと告白したのだ。


信英君は、子供の頃に出会った王女に一目惚れをしており、これまでずっと婚姻したいと願ってきたのだった。


だが、その願いは潰える形となったのだ。

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