第12話
信英君とは婚姻などするつもりはなかったとはいえ、王女の衝撃は大きい。
国王に呼ばれ便殿に行っていた王女だが、居室までの道中は無言だった。
居室に戻ると、ただしくしくと泣くばかり。
「どうしたのですか?王女様」
しゃがみ込んでタンが問うても、王女は泣き続ける。
「私に話しをお聞かせください。少しはお気持ちが楽になるかもしれません」
王女は少しづつ落ち着きを取り戻し、泣き止んだ。
「信英君様が、世子様の座を狙っていたの」
「え!?」
「自分が世子になり、いずれは王座に就くために私との婚姻話を信英君様側から持ちかけたらしいわ」
王女の話を聞いて、タンは怒りに打ち震えた。
世子を狙っているということは、謀反ではないか。
それは重罪に処されるべき大事件である。
もしこのまま王女が信英君と婚姻をしていたなら、王女の身にも危険が及んでいたかもしれない。
タンは王女を抱きしめた。
本来なら、従者が王女を抱きしめることなどあってはならないことだろう。
けれどタンは、そのようなことを考えていられなかった。
「タン……」
「今だけはお許しください。私が王女様をお慰めしたいのです」
王女がまた泣き始めたのが分かった。
そして、タンの背中に腕を回したのだ……。
「私は最初から信英君様と婚姻するつもりはなかったけど、世子様の座を狙っていたなんて……信じられないわ……」
王女は信英君に騙されたような気がして、相当な衝撃を受けたようだ。
「王女様に何もなく良かったです。私がいますので、ご安心ください」
そう言って、タンは王女の背中を擦る。
タンが王女に触れたのは、この時が初めてだった。
王女が落ち着いてきたため、タンは身を離す。
そして王女の顔を見つめた。
「王女様。私は長くあなたをお慕い申し上げて参りました。これからも、生涯にわたって王女様を身を賭してお守りいたします」
「タン……」
王女は、タンの言葉が信じられないといった表情だ。
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