第11話

王女はこのことを国王から聞かされた。


信英君とは婚姻などするつもりはなかったとはいえ、王女の衝撃が大きい。


国王に呼ばれ便殿に行っていた王女だが、居室までの道中は無言だった。


居室に戻ると、ただしくしくと泣くばかり。


「どうしたのですか?王女様」


しゃがみ込んでタンが問うても、王女は泣き続ける。


「私に話しをお聞かせください。少しはお気持ちが楽になるかもしれません」


王女は少しづつ落ち着きを取り戻し、泣き止んだ。


「信英君様が、世子様の座を狙っていたの」


「え!?」


「自分が世子になり、いずれは王座に就くために私との婚姻話を信英君様側から持ちかけたらしいわ」


王女の話を聞いて、タンは怒りに打ち震えた。


世子を狙っているということは、謀反ではないか。


それは重罪に処されるべき大事件である。


もしこのまま王女が信英君と婚姻をしていたなら、王女の身にも危険が及んでいたかもしれない。


タンは王女を抱きしめた。


本来なら、従者が王女を抱きしめるなどあってはならないことだろう。


けれどタンは、そのようなことを考えていられなかった。


「タン……」


「今だけはお許しください。私が王女様をお慰めしたいのです」


王女がまた泣き始めたのが分かった。


そして、タンの背中に腕を回してきたのだ……。

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