第8話

王女は信英君には興味がないので、自分から話すことはない。


ただひたすらに前を向き、歩いていく。


「王女様。私に何かお聞きになりたいことはございませんか?」


「え?あ、あぁ。いえ、特には……」


王女は内心、『そんなことを聞かれても困る』と思う。


興味関心がないのに、一体何を聞けば良いのだ。


しかも先ほどから、後ろからの視線が痛い。


後ろをついてくるタンが、王女と信英君の様子を睨むようにして見ているから。


そして王女の隣を歩く信英君は、残念そうな顔をしている。


「そうですか……私はあなたに聞きたいことが山ほどあるのですが……」


信英君は立ち止まり、王女に手を伸ばし触れようとした。


ほぼ初対面に近いのに、女人(にょにん)に触れようとするなど、無礼ではないか。


しかも王女相手に許されないだろう。


すると、王女が自身で信英君の手を払った。


このとき、タンは目を光らせて腰の剣の柄に手をかけていた。


「無礼ですよ、信英君殿」


「申し訳ございません。つい、王女様と早くお近づきになりたいもので」


「そんなことは必要ありませんよ。今日はお断りするつもりですので」


王女が憮然とした表情で言う。

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