第7話
翌日になり、王女は国王の言いつけの通りに信英君に会いに便殿を訪れた。
王女に仕えているユ尚宮やタンは、部屋の外で控えることになる。
緊張しながら便殿に入ると、既に広間の中央に誰かが床に座っていた。
玉座には、父親である国王が座している。
「お待たせいたしました、王様……」
王女が挨拶をすると、国王は「来たか」と頷いた。
中央に座っている人物の近くまで王女が行くと、国王は「この者が信英君だ」と紹介する。
王女自身も「そうだろう」とは思っていたが、「はい。純輝にございます」と名乗った。
すると信英君と紹介された男が、王女の方を向く。
そして、礼を尽くして挨拶をしてきた。
「信英君にございます。お目にかかれて光栄です」
信英君の言葉に、王女は愛想笑いを返す。
何と言って良いか分からなかったからだ。
さらに信英君は、国王に対してこんなことまで言ってきた。
「王様、王女様と二人のみで話をさせていただいても構いませんでしょうか……」
突然の申し出に国王も目を見開いたが、コクリと頷く。
「うむ。構わん」
王女の胸中は『何でそんなことを言い出すの?』という思いが渦巻いていた。
「王女様、よろしいですか?」
信英君の問いに、王女は仕方なく首肯する。
信英君の見た目は良いが、いまいち信用して良いのか分からない。
王女は、後ろにユ尚宮らを後ろに伴わせて、信英君と共に便殿を出た。
「お久しぶりですね、王女様。私のことは、覚えていていただけているでしょうか」
「申し訳ないですが、記憶にないですね」
「そうでしたか。それは仕方ないですよね。会ったのは、随分昔のことですから」
そう言って、信英君は柔らかく笑う。
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