第5話
それからしばらく経ったある日、王女の部屋にユ尚宮が駆け込んできた。
「どうしたの?ユ尚宮。騒々しいわね」
「王女様!王様がおよびです。今すぐ王様の元へおいでください」
「王様が?一体何の用なのかしら」
国王から直々に王女を呼びつけるということは、さほど多いことではない。
従者であるタンは不在だったが、王女はユ尚宮を従えて国王の元に急いだ。
「おぉ、来たか。純輝よ」
「父上。何の御用でしょうか」
「うむ。今日はな、そなたの縁談について伝えるために呼んだのだ」
国王の言葉を聞いて、王女は焦りを見せた。
「そのお話なら、お断りしたはずです」
「まぁ、そう言うな。そなたにとっても悪くない話だと思うんだがな」
王女も、そんなのはそちらの言い分だろうと思わないでもない。
王女自身がどう思うかは、本人にしか分からないのだから。
「そんなのは、父上が思っているだけでは?」
普段の王女ならこんなことは言わないだろう。
国王は王女の発言に眉をしかめた。
「純輝。そんな物言いをするでない。相手くらい聞いたらどうだ?」
少し怒り気味の国王に、王女は従うしかなかった。
「はい、分かりました。父上」
「うむ。そなたの相手は、信英君(シンヨングン)だ」
「シン、ヨングン!?」
その名前を、王女はすぐに思い出せない。
『そんな人、いたかしら』と思ったくらいだ。
「そうだ。そなたより二つ年が上の、王族だ。最近はあまり会っていなかったか」
「はい。どんな方だったか思い出せません」
国王によると、信英君は王宮を離れて暮らしていたらしい。
王女とも小さい頃に会ったきりだったようだ。
その相手と、王女を婚姻させるという。
「まぁ、会えば打ち解けるだろう。明日、王宮にやってくるからな。この間で会うといい」
「ちょっと待ってください!どうしてそんな突然の話になるんですか?」
「お前もそろそろ結婚をしなければいけない年齢だ。お前の母は何歳で王妃になったと思う」
その話は母である王妃からも聞いていた。
「はい、16歳と聞き及んでおります」
「そうだ。そなたは身を固めねばならない時期に来ているのだぞ?」
「しかし、そんな良く知りもしない相手とは結婚できませぬ」
すると国王は、王女を「わがままを申すな」と叱る。
王女は、「これが王室に生まれた者の定めなのか」と泣きたい気持ちになった。
「とにかく、明日は信英君と会うからそのつもりでおれ」
国王はそう言い残してその場から立ち去った。
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